【感想・ネタバレ】2円で刑務所、5億で執行猶予のレビュー

あらすじ

「問題は少年非行ではなく高齢者犯罪」「死刑に犯罪抑止効果はなく、かえって暴力を促進する」など、さまざまな“犯罪神話”を解体し、科学的な犯罪対策・刑事政策を提案する。

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Posted by ブクログ

『罪を犯した人を排除しないイタリアの挑戦』を読み、
浜井先生の研究分野にとても興味を持った一人です。

上記の本でも触れられている日本の問題点について、
さらに詳しくたくさんのデータを元にまとめられている。
犯罪理論も明瞭に説明されていて非常に分かりやすい。

また、法律家自体の人材についても言及しており、
法科大学院での教育内容に警鐘を鳴らしているのが
とても興味深かった(自分も当事者だったので)。

2016.11.9

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2016年11月09日

Posted by ブクログ

ネタバレ

本書の指摘で興味深く思ったのは、厳罰主義の加速をはじめとする「ポピュリズム刑事政策」の浸透と二大政党制が密接に関わっている、ということ。
英米系の対立型民主主義では野党がマスメディアと共謀して体感治安の悪化を煽り、厳罰主義を掲げて政権復帰を狙う、という構図が成立しやすいという論旨に説得力を感じる。
またそれらの国々が90年代以降新自由主義的政策を採用したことで、圧倒的な格差に晒された人々が、「犯罪者」を社会の底辺に位置づける対象として「発見」した、という指摘も、何か自分たちとは異なる生物であるかのように報じる昨今の犯罪報道を見るにつけ、深く頷かされる。
本文中、著者が太字で強調しているのは、タイトルのように5億で執行猶予の判決に必ずしも批判的ではない、ということ。
編集者がつけた「売らんかな」のタイトルなのかもしれないが、その甲斐あって大いに売れることを祈ります。

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2014年01月13日

Posted by ブクログ

[ 内容 ]
おかしいぞ日本の司法と犯罪対策。
さまざまな“犯罪神話”を解体し、事実に即した犯罪対策・刑事政策を提案する。

[ 目次 ]
第1編 犯罪と犯罪予防(減る少年犯罪、増える高齢者の犯罪 間違いだらけの犯罪対策 エビデンスに基づいた犯罪対策-キャンベル共同計画)
第2編 刑事政策(刑罰)(すべては検察官のさじ加減ひとつ 人はなぜ犯罪を犯すのか-犯罪理論について 法律と科学 ポピュリズムと厳罰化 貧困と犯罪 「刑務所太郎」はなぜ生まれるのか?)

[ POP ]


[ おすすめ度 ]

☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

[ 関連図書 ]


[ 参考となる書評 ]

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2011年04月09日

Posted by ブクログ

自分のイメージと随分、差がある事に驚いた。それだけでも価値のある本でした。
刑務所が最後のセーフティーネットの役割
ホームレスは自己責任と思う人の割合の高さ(2010年現在もそうなのかな?)
孤独と貧困が犯罪の温床(犯罪に限らず自殺、うつ病もでは?)
社会保障の手厚い国ほど寛容な人の割合が高い(これを維持するには国の経済成長が前提では?)
スケアード・ストレイト(反面教師)は再犯を促進する。不安を喚起するだけで解決方法をしめさないため、逆に悪い見本を他に良い対象がない為に模倣してしまった可能性が考えられる。

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2010年07月11日

Posted by ブクログ

タイトルに1本釣りされて(この文章を書くのは何回目だろうか・・・・・・)読んでみた1冊。

てっきりタイトル通り、2円で刑務所にいれられてしまって5億で執行猶予っていう他人の不幸話だと勘違いしていた。だが実際は犯罪学をテーマにしたお堅い本であった。目次を見て、読むのをやめようとすら思ったくらいだ。
だが、1つのテーマを読み進めていくうちに本書に対するイメージがすっかり変わった。著者の主張を伝えるために統計や引用がうまく使われているし、話のつかみにしているネタも万人の興味を引くものがチョイスされている。これはレポート作成にも活用できるではなかろうか。

食わず嫌いはよくないね、と改めて感じたのであった。

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2010年01月31日

Posted by ブクログ

今問題なのは少年非行ではなく高齢者犯罪。
「昔はよかった」は大ウソ。
街灯を明るくすると犯罪が減る。
徴兵制や新兵訓練は非行を抑止しない。
犯罪の認知件数と刑務所人口には因果関係がない。
刑務所に入るかどうかは犯罪の重大性と関係ない。
裁判で真実は明らかにならない。
人が更生するために必要なものは?

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2009年11月17日

Posted by ブクログ

内容は著者のこれまでの著書のエッセンスを凝縮したものなので、それらをすでに読んでる人には既知の情報や内容である。
それでも、犯罪に関する間違った常識や神話を批判していく地道な作業は必要だし、それを続ける著者に感心します。

犯罪に関する情報をニュースなどの限られた情報源からしか得ていない人には是非読んでほしい本です。

個人的には「法律と科学」(p148〜p168)で述べられている法律家の論理的思考だけではなく、そこに確率的思考で事件を科学的に分析する必要があるという指摘は、(言われてみれば当然なのだが)参考になった。

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2018年11月24日

Posted by ブクログ

ネタバレ

犯罪についての情報というのは、ほとんどの人は「ニュース」に頼っているのが現状。しかし、ニュースでは、一つの事件は伝えるが、定量的なデータを定期的に伝えることは少ない。少年事件が報じられれば、犯罪の低年齢化を心配し、虐待が報じられれば幼児虐待の増加を懸念します。
 が、果たして、実際に日本全体としては、どうなのか?
それに回答してくれるのがこの本です。
 犯罪者の性別、年齢、犯罪者と被害者の関係、それらの統計を解説しています。
 
 加えて、全ての犯罪が裁判になるわけではなく、それどころか、かなりの割合の犯罪は、和解や示談、身元引受人などの条件で裁判には持ち込まれません。持ち込まれたとしても、執行猶予になるものも多く、この結果実際に刑務所に入所する人は、「お金」と「人脈」がない人となります。
 このように、凶悪重大犯罪者が多いイメージのある刑務所が、実は知的障害や日本語が話せない外国人、身寄りの無い高齢者などの社会的弱者の最終的な受け皿になっていることなど、この本を読むまではわかりませんでした。
 すごーーく面白い!という本ではありませんが、報道だけではわからない日本での犯罪の傾向を知るには非常に良い本です。願わくば、報道も時には、この本のような「俯瞰的」「定量的」な視点で行って欲しいと感じます。

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2016年02月19日

Posted by ブクログ

先輩に勧められて。

犯罪を取り巻く色々について、やさしく真実が書かれています。
犯罪について考える上で、知っておいたほうが良いことがたくさん。

刑事裁判や刑務所について、知ったような気分でいますが、考えてみれば実際に見たことはないんですよね。
(大学時代の宿題で、裁判見にいけってのはあったけど、ものの5分で終わるような裁判だった。)
私たちのイメージは、マスコミによって作られたものだということを自覚しなければなりません。

そして、裁判でどのような人が実刑判決をうけるのか。
やっぱり人間は感情の生き物だから、表現力の高い人は実刑判決が下りにくい。まぁそうだよなぁ。
(ネタバレ)ちゃんとした身元引き受け人がいて、裁判がうまければ、5億でも執行猶予に。逆に、身元引き受け人がいなくて、話すのもうまくなれば、2円でも実刑判決が下る。

そういった現実について、あまり知る機会がないので、とても勉強になりました。

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2012年09月25日

Posted by ブクログ

「ある刑罰が残虐であるかどうかの判断は国民感情によって定まる問題である」

そして国民感情は、マスコミによる影響を強く受けている。

治安はほんとうに悪化しているのか、
少年犯罪はほんとうに増加しているのか、
その再犯防止策は功を奏しているのか、
などなど、テレビを見ていて不安に思うことに対して、データをもとにわかりやすく示されています。

なぜマスコミがそのように報道するのかにも言及されています。

さらに、法律家の役割についても自分の中の誤解に気付かされました。

犯罪について、犯罪者について、再犯について、法廷で扱われることについて、興味のある方におすすめです。

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2012年08月21日

Posted by ブクログ

 タイトルが俗っぽいけど,内容はしっかりしてた。ポピュリズムに翻弄される刑事政策を憂慮する犯罪学者の著者。特に刑の執行段階に視点を置き,社会がどう犯罪に対応すべきか探る。
「ポピュリズムの基本的手法は、わかりやすさと情緒の味付け」(p.12)と著者は言う。確かに。マスコミのアジェンダセッティング力は大きい。そしてなるたけ叩かれないようにとの行政の事なかれ主義が火に油を注ぐ。
 本書は,各章冒頭に常識的で分かりやすい「犯罪神話」を政治家の仮想演説として示し,本文でそれについて犯罪学の見地から論駁する形式。以前読んだ『陰謀論はどこまで真実か』も似たような形式だったな。陰謀論を提示し,それを論駁するというやつ。
「最近凶悪犯罪が増えている」というのはメディアに触れることで作られた印象だったりして,実際にはそんなことはない。もちろん,犯罪統計には暗数というのがあって,人々の犯罪に対する許容度や価値観,警察の取り組みによってその割合が変化する。
 つまり犯罪被害に遭っても,世間体等を気にして届けなければ,警察の統計には表れず,その比率も様々な要因で変化する。しかし,これを無作為抽出による犯罪被害調査で補うこともでき,それによって犯罪被害についてかなり正確な推定を行なうことができるらしい。
 心の問題や,「昔は良かった」的説明は,わかりやすくて説得力があるのだが,統計的な分析によると,実はここ50年ほど一貫して最も人を殺している世代は団塊の世代とその少し上という結果が出ているそうだ。最近の若者を最も憂いている世代が最たる加害者という皮肉。
 小中学生による殺人などが起こると,それが一般的傾向を示す事例かどうかなど一切検討抜きで,ネット社会の闇,モラルの低下とか叫ばれるが,これは悪ポピュリズム。エビデンスに基づいた犯罪対策が,副作用を減らし効果を上げるのに不可欠。
「神話」に反して,裁判で真実は明らかにならない。例えば,部活動中に熱中症で中学生が死亡し,顧問が訴えられた事例。体育教師だったというような事情も災いし,有罪判決が下る。この裁判で明らかになったのは,顧問に業務上過失致死の責任を負わすことが可能という「理窟」だけだ。
 本書タイトルの意味は,実刑になるか否かは被害の大小以外の事情が決める,ということ。財力,人脈(身元引受人),知的能力(内省力・表現力)に優れる者は勝ち組で,被害弁済と謝罪をすることで,執行猶予の付いた判決を得られる。起訴前段階でも保釈が受けられる。
 反対に財力も人脈も知的能力ももたない「弱者」は,保釈も執行猶予も受けられず,塀の中で長い期間を過ごすことになる。道徳教育でモラル強化などの前に,こういった受刑者たちの現実に目を向けて,考えるべきことがあるだろうと著者は言う。キーワードは社会での居場所。
 刑務所に収容されている人の多くは,「弱者」であるが,その中でもまるで志願してるかのように何度も収監される受刑者がいる。彼らは「刑務所太郎」と呼ばれる,刑務所の外に居場所がない人々である。彼らの多くは,刑務所の中では大変に優等生。
 受刑者の中で,刑務所運営に携わる「経理夫」がいる。経理要員は受刑者中のエリートで,職員から名前で呼ばれ,報奨金も高く,待遇も良い。刑務所から必要とされる仕事にやりがいを見出す。退所したあとは社会に溶け込めないから,また刑務所に舞い戻ってくる。刑務所が居場所になっちゃう。
 刑務所の中には凶悪犯を多数収容するところもあるが,平均的な受刑者というのはこういった弱者なんだろう。そういう現実はなかなか見えなくて,何となくのイメージが社会の中に普及している。こういう状況ではなかなか物事が変わらないのかも。
 日本では死刑制度がかなり支持されているが,犯罪学としては,死刑の犯罪抑止力はほとんど認められていない。刑罰の抑止力を信じる刑罰信仰は,長い歴史で受け継がれてきたもので,30年程度と歴史の浅い多変量解析等の統計手法ぐらいでは,なかなか揺るがない。
 ポピュリズム刑事政策とは,秩序を求める市民グループ,犯罪被害者の権利を追求する活動家やメディアが社会の代弁者となって政策に影響を与え,司法官僚や研究者の意見が尊重されなくなる現象。これをどうやって変えていくのか,やはり知ることから始まるんだろう。

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2011年12月07日

Posted by ブクログ

司法制度の問題点、人々の心理と統計との乖離、司法の現場が分かりやすくまとめられてた。

犯罪率の低下と高齢化、認知件数とマスコミの報道による認知度の高さの関係も分かりやすかった。
なにより、随所に引用される統計データが重みをましてた。

特にポピュリズムについてのくだりは面白かった。
皆が理解しやすい形にすることが悪ではなくて、それに必要な情報や教育が追いついてない現状が悪い、っていうのは膝を打つものがあった。

司法制度が抱える問題点を理解する上での入門書としていいんじゃなかろうか。

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2011年03月22日

Posted by ブクログ

読みやすく、問題点も分かりやすい。どうしてもこういう本はタイトルが先走ってしまうが、中身は良い本だと思う。「古き良き時代」なんて言ってるやつたくさんいるよなぁと思った。

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2010年04月19日

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