【感想・ネタバレ】同時代ゲームのレビュー

あらすじ

海に向って追放された武士の集団が、川を遡って、四国の山奥に《村=国=家=小宇宙》を創建し、長い〈自由時代〉のあと、大日本帝国と全面戦争に突入した!? 壊す人、アポ爺、ペリ爺、オシコメ、シリメ、「木から降りん人」等々、奇体な人物を操り出しながら、父=神主の息子〈僕〉が双生児の妹に向けて語る、一族の神話と歴史。得意な作家的想像力が構築した、現代文学の収穫1000枚。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

これを生の日本語で読めることはとてつもない贅沢だ。「押し込め」→「お醜女」と解読して行く言葉の閃きのセンスなんかは必ずしも日本語にのみに適用される訳ではないけれど、大江健三郎の言葉の選択を直に見ることが出来る愉悦。よく言われる冒頭の読みにくさにもそれこそアハハと大笑いさせられた。彼の言葉の逸脱ぶりはいつも心地いい。テングの陰間と呼ばれるに至る事件の間での「小宇宙」を見る神秘的体験に、大江健三郎の学部時代から『個人的体験』あたりのサルトルしばりな実存主義からの飛躍が始まる。後の作品の為にも必読な「聖書」。

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2013年04月06日

Posted by ブクログ

ネタバレ

物語として内容を読み取ろうとすると、難解で冗長とも感じられるこの作品、最後まで読んでみると、その文脈を楽しんでいけばいいのだなと気づきます。
その世界観は、のちの宮崎駿や村上春樹にも影響を与えたのではというところがあります。

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2012年07月06日

Posted by ブクログ

ネタバレ

妹への手紙という形で語られる、四国の山奥にある故郷の村の歴史と伝承、兄弟の逸話。序盤は、現在の生活と村の神話・歴史がリンクするかたちで語られるので頭のなかで整理する必要があるが、次第に神話と歴史にフォーカスされていく。

面白いが、クセのある文章ですこし読みづらい。


以下、村の神話と歴史における主な出来事、および語り手の家族について

・藩を追放された武士集団が「壊す人」を主導として川をさかのぼり、行き詰まりの大岩塊を爆破して、森に囲まれた盆地に隠れ住む。(そのときに流れ出した大洪水によって追跡隊は押し流される) のちに「吾和地(あわじ)」と呼ばれるようになる。

・村の開拓がひと段落したところで、地響きのような音が響き渡り、その影響の強弱によって住む場所の入れ替えが行われる。

・「壊す人」が死んだ直後にふたたび大怪音が鳴り響き「住みかえ」が行われるさなか、「壊す人」の妻であるオシコメが十七、八の青年団を指導して、創建者の老人たちを一掃する「復古運動」を進める。(明らかに文化大革命の江青と紅衛兵がモデル)

・村の独立性を保とうと、藩権力と一揆集団の仲裁をしたり、天皇家との接近を模索した亀井銘助(メイスケサン)と、大正時代の大逆事件の際、天皇に抗議文を送った原重治(牛鬼)。

・大日本帝国に組み込まれることへの対抗として、ふたりの人間をひとつの戸籍に登録するカラクリを思いつく。それを解消しようと村にやってきた大日本帝国軍との五十日にわたる戦争。

・長兄(露一)は徴兵中、精神に異常をきたし精神病院に二十五年間収容される。解放されたあと、天皇に村の独立を要求するために皇居に向かう。次兄(露二郎)は女形として生計を立てている。

・野球一筋の末弟(露留、ツユトメサン)は、マネージャーと一緒にアメリカやハワイに渡り、メジャーリーグ球団や日本の野球チームに売り込みにいく。

・「壊す人」の巫女として育てられた双子の妹(露巳)は、銀座でキャバレーを開いていた時代にアメリカ大統領候補と知り合い、彼の大統領就任後に会見し、村の独立を援助するように要請する。その際に検査を受け癌を宣告され、帰国後に船から身を投げ死んだと伝えられていた。しかし、妹の生存と、キノコのようになっていた「壊す人」を見つけ、いまでは犬ほどの大きさにまで回復していることが手紙で伝えられる。

・語り手である「僕(露己)」は、幼少時代より神主である父に村の神話と歴史を口承によりたたき込まれる。それに興味を持った東京出身の双子の天文学者(アポ爺、ペリ爺)とも親しくするが、父と国民学校校長との諍いが原因になり双子の学者は村を追放されてしまう。そのことを思い悩んだあげく、「僕」は素っ裸になって森をさまよい歩き、村で起こった過去・現在・未来の出来事を垣間見るのだった。

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2023年02月27日

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