あらすじ
温泉もない、名所があるわけでもない、嫁のきてもない。観光客の途絶えた過疎の町、駒木野。青年クラブのメンバーたちは町を再生することで、自らの生き方にも活路を見出そうとするが。地方の現実に直面する人々の愚かしくも愛しい奮闘を描いた胸に迫る長篇。「日本の四次元地帯」として駒木野は再生するのか? (講談社文庫)
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ロズウェルその後を知りませんか
連載時にはまってしまい翌月号が待ち遠しかった。もうあの頃とずいぶん日本はかわったような気分で読んだ。しかし地方は都会のように巨大な建築物ができることもない。ただ廃村寸前の村という存在そのものがもうアキラレてしまったような気がするし、・・・と一軒家というようなフレーズが日常会話にでるくらいだから、田舎の村や集落の価値がもう失くなってしまったのかなとテレビを見ながら思う。UFOやアルミ箔の宇宙人を仕掛けた主人公グループのひとりが午前4時に目覚めて帳場のパソコンでメールを読むと、批判や中傷のメッセージに混じって著名人から応援のメールがあったりという場面は、地方にいてちょっと目立った活動をした経験のある者なら、そうそう似たようなことがあったな…と妙にリアルな心理描写に作者の気持が写されているのではと思ってしまった。作品では、カルトや宗教、そしてアイドルの存在などのことなども取り上げられるがこれも今また話題になっていることで、ああこれから先どうなるんだろうかと読者を啓発するところを含んでいるのも篠田節子の小説らしい。
Posted by ブクログ
や~っぱおもしろいなぁ~。
登場人物の面々が、(ほとんどがおっさんか老人たちかばかりなのですが)それぞれ持ち味を存分に発揮してくれてます。こんな小説好きなんだよなぁ~。
普段小説の読み返しなんかめったにしない自分が、忘れた頃合を見計らってまた何度でも再読したくなってしまうほどです。
そしてまたこの、読後感が何とも言えず良い。人生、勝負を仕掛けるのに遅すぎるなんて事はないもんだ!て事を、読み返す度に改めて認識させてくれます。すごく勇気になる。
そしてそしてこんなメッセージも・・・
“未来も金もプライドも何もない。失う物がないんだから、何でもできるんだ。やってみようよ。”
とにかく。自分の人生これでいいのか?なんて、漠然とした気持ちを抱えたまま毎日を過ごしてる人にはぜひ一読して頂きたい!とてもコミカルに話が進むので、文庫本の厚みにビビる必要はなし!
おすすめです!
【DATA】
温泉無し、歴史無し、観光スポット無し、都会からは交通の利便性も無し。無いものだらけの山あいの町、駒木野。地元青年団の面々は、かつての観光産業の賑わいを少しでも取り戻そうと七転八倒の毎日を送っていた。そんな中、駒木野の名前はひょんな事から“四次元地帯”としてオカルト方面に火が着き始め・・・。
過疎化の問題も深刻な、この日本のど田舎町。UFO墜落の地として世界に名を馳せたロズウェルに続く事は、果たしてできるのか!?
Posted by ブクログ
「勝ち組負け組みという言葉があるが、あの町では出て行った者が勝ち組なのだ」 寂れていく一方の町、駒木野。その町を再生しようと、青年クラブのメンバーが奮闘する。あがく彼らを通して、地方の現実を見せ付けられ、胸を痛めて読み続けた。彼らは、そして駒木野はどうなるのか?四次元観光で村おこし!?常識と非常識の間で揺れ動く青年クラブの面々。その中で、いっぷう変わった鏑木という都会から流れてきた青年が、なんだか頼もしくみえてくるのが面白い。
これはもちろん小説だが、実際に日本で産業や観光がない地方が生き残っていくためには、結局原発や産業廃棄物を受け入れるしかないのだろう。そういう現実があることを、思い出させられ心が重くなった。