あらすじ
イギリスの歴史的な名宰相ウィンストン・チャーチルは終生、日本に対して好意と深い理解を示していた。幼少のころ愛する母から伝えられた美しい日本の印象が、忘れがたい記憶として残っていたからである。箱根、東京、日光、京都を旅したチャーチルの母は、明治期の日本に何を見たのか? 戦中、戦後のチャーチルが、荒廃した日本に何を望んだのか? 歴史的名宰相の目に映った日本の隆盛と衰退、そして再生とは……。名宰相と母の物語を、未邦訳資料を踏まえながら、元外交官が見事に描ききる。――1894年チャーチルの母は世界一周旅行の途上、日本にひと月あまり滞在した。彼女が残した詳細な旅行記に描かれていたのは、大方の日本人が忘れてしまった古きよき日本の姿であった。
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イギリス人ってアメリカ人徹底的に馬鹿にしててアメリカ人でもないのに不快になった。
関榮次
(せき えいじ、1929年[1]7月[2] - 2020年7月21日[要出典])は、日本の外交官、ノンフィクション作家。沖縄県北大東島出身。沖縄県[1]北大東島生まれ。旧制松山高等学校を経て、1953年に東京大学法学部卒業[1]、外務省入省[1]。1954年オハイオ州アンティオーク大学留学、1955年在米国日本大使館外交官補[3] 。帰国後は、経済局、通商産業省出向、経済協力局を経て、インドネシア、連合王国(イギリス)、タイ、ユーゴスラビア、ブラジルに在勤[2] 。本省では、国際連合局経済課長、法務省入国管理局総務課長、国際連合局担当審議官などを歴任[2]。1981年‐1983年駐ザンビア大使[2]、駐連合王国特命全権公使、海外経済協力基金理事、1989年‐1992年駐ハンガリー大使を歴任した[1]。1992年退職[1]。トーメン顧問などを経て、ノンフィクション作家に転身する[1]。
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第二次世界大戦へアメリカを引き込むために日本が参戦することに暗躍したやら、参戦が決まって喜んだと言われたチャーチルへの印象が変った。
日本が戦争に関わる事を回避しようと努力したり、戦後、悪化した日英関係を改善しようと奔走したりと、終始日本の味方であろうとした事がわかる。
吉田茂・重光葵・チャーチルなどなど、終始戦争に反対した人物が居ながらなぜ戦争に向かっていったのか・・・
Posted by ブクログ
日本人にとっての英国チャーチルの評価は大きく2つに割れるだろう。多くの人の印象は太平洋戦争でルーズベルト率いるアメリカを第二次世界大戦に巻き込むために暗躍し、結果的に対日戦線に引き入れた張本人として認識されているのでは無いだろうか。だから意地悪そうに笑みを浮かべる狡猾な老人という印象が大きい様に感じる。一方でチャーチルの母方は日本を旅行で訪れ日本の素晴らしさを書籍に残す程の親日家としても知られており、幼い頃に母親からその素晴らしさを耳にしていたチャーチルの親日家としての側面もある事はそれほど知られてはいない。当時はもちろん船の旅になるから、資産家のもとに生まれ首相候補にもなりうる様な大政治家と結婚して、相応の資金もある人物であったから、世界一周旅行のほんの一国として立ち寄っただけと言う見方もある。要するに金持ちから見た日本の貧しくも清らかな農村民に日常接し得ない様な「清貧さ」を感じただけに過ぎないのかもしれない。
本書はチャーチルの人間性に多大なる影響を及ぼした母と、政治家の父の物語から始まる。母親は考え方も生き方も極めて優れた方であり、政治家の夫を生活から社交の場においても支えてきた大人物として描かれている。そんな母親の影響を十分に受けて育ったチャーチル少年が軍隊試験に一度は失敗しながらも、めげる事なく努力した結果、後日評価される事になる戦略眼や政治の感覚を身につけていったものと思われ、それを陰で支えてきた母親の存在を忘れてはならない。
父親も若かりし頃は将来を有望される政治家であったようだが、次第に首相への道から外れ、最後は半ばおかしな人物になってしまった様である。そのような家庭に育ち、第一次世界大戦の頃には大臣も務め上げ、知られているように第二次大戦時には首相にまで上り詰めている。日本での評価は概ね日本がハルノートを叩きつけられ、ABCD包囲網(Bは勿論BRITISH)で八方塞がりに陥り、真珠湾へ突入していく頃のものである。タバコを燻らせルーズベルトと悪巧みをしているといった印象で語られている。
本書ではそうしたチャーチルの育ち方や考え方、そして戦後も日本の国際復帰に尽力する姿など、チャーチルのイメージを覆す内容となっており非常に興味深い。人は善悪二元性だけでは語り尽くせず、対日で言うなら「好き」「嫌い」だけで白黒はっきりしようとさせる方が間違えている事に気づく。日本の悪い部分は賛同せず怒りを覚えたり、良い面に関しては賛同して救おうとする。100%どちらかなんて無い事は、日常の私たちの生活の中でも普通の事だ。政治家特に頂点にいれば尚更の事、個人の感情だけではどうにもならない事情もある。国を動かすためには時に鬼のような顔持ちで非常な態度を示さなければ国民に訴えられないだろうし、個人の好意を表立って示せないのは当然の事である。
本書はそうした真のチャーチルを描こうとしており、仮にそれが事実とは異なったとしても、人間の政治家の苦悩の側面を感じ取ることのできる一冊である。
Posted by ブクログ
チャーチルは第二次世界戦後、日本に対して密かな温情を持っていたというのは母の影響が色濃く出ていた。 あれほど、ドイツに対しては憎しみとあきらめることの無い勝利を描き、その裏では日本に対しての思い入れがあった。
Posted by ブクログ
チャーチルの、日本に対する優しい、熱い思いが伝わってきた。
前半は、チャーチルのご両親について。特に母上がいかに素晴らしく魅力的な人物であったかということ。母上が日本を訪れたことがあり、日本をとても気に入って、チャーチルによくその話をしていたという。箱根の富士屋ホテルなど、現存する地名もちらほら出てくる。
後半は、そのバックグラウンドを踏まえたうえで、チャーチルの政治的な活躍ぶり、人柄などが書いてある。特に、皇太子が英国に訪問したときの、チャーチルのスピーチは素晴らしい。