あらすじ
代り映えのない日々。変わらない食生活。そんな中、思いついた創作怪談話を書き上げ、SNSにアップする。30代も後半になり、新しい趣味といえるようなものを見つけた鬱野だが、日常に変化は訪れるのか…。
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Posted by ブクログ
「悪評も逆に肯定的なデータも探せば好きなだけ見つけられるし生成することすら可能だ。現実は変えられないが不安も安心も選ぶことはできる。自分が世界をどう見たいのか問われているのはそこだけだ」
上記は作中の「自販機のミルクセーキを飲んだ後の感想」である
二時間映画を観た感想ではない
読書量の多い人間は人生の解像度が上がりそうだが、直接的に生活の、特に経済的な意味での豊かさには繋がりづらい
怠惰に接続された利便寄りの食の消費行動は、それが1人でされる前提も含むが鬱の隣にあって実際に関連していると思う
ここまでは単純に今までの鬱ごはんで感じられるものだったが、怪談篇と最終話と作者後書きで完全に到達してしまった
一巻からずっとネットを見ながら食事していた鬱野がネット投稿の創作怪談で自己肯定に向かう、とは言え自身を主人公としたフィクションに「あり得たかもしれない自分」との対面を余儀なくされる地獄。そんな中配達の仕事で嫌なことが重なり自問する。そして漫画家の自分と相対して自己肯定に帰る
自分と重ねて読み続けていたが特に嫌なことが重なり自問する描写は刺さった
自分は結婚式の帰りの人たちをみると最も孤独感を感じる。その人たちが鬱野の横を帰りながら「コンビニのおにぎりでも」と話していくのもすごい。鬱野にとっての日常であり同時に選ばされたものでもある利便寄りの食事をキラキラした彼らが選んでいく。自問の形もネット質問の形を借りたSOSでとてもわかる。自分も同じくらいの年齢で「あり得る未来」の妄想より「あり得た過去」の妄想しかしなくなった。そんな落ちきった鬱野を選んで肯定に向かわせる話の流れに救いを感じた。ネット投稿の読み切り漫画のようだが、作者後書きを読めばこの話に至るまで怪談篇も編まれたことがわかり脱帽。
どうもありがとう