あらすじ
世界最初の全身麻酔による乳癌手術に成功し、漢方から蘭医学への過渡期に新時代を開いた紀州の外科医華岡青洲。その不朽の業績の陰には、麻酔剤「通仙散」を完成させるために進んで自らを人体実験に捧げた妻と母とがあった――美談の裏にくりひろげられる、青洲の愛を争う二人の女の激越な葛藤を、封建社会における「家」と女とのつながりの中で浮彫りにした女流文学賞受賞の力作。
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Posted by ブクログ
有吉佐和子の名著にとうとう突入!いや、どれも名著なんだけども。
これまで読んできたのは、青い壺と紀ノ川。特に順番を考えて読んでるわけではなく、本屋で見つけたものから読んでる気がする。
で、そういえばこの有名な「華岡青洲の妻」もあるやん!ということで、見かけて即買いしたのだった。そういえば前読んだ2冊は創作だったけど、これは華岡青洲をモデルにした伝記みたいなもので、ちょっと違うか。
華岡青洲は自分でもさすがに知っている。麻酔をなんやかんやした人!
でもその妻を主人公にしたということと、物語の上手さからいわゆる伝記感は全くなく、これまでの小説と同様一気に読めてしまった。
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主人公っぽい加恵が、将来的に華岡青洲になるのであろう、華岡家の嫡男に嫁ぐ微笑ましいエピソードから始まる。
姑になる於継ももう一人の主人公っぽいのだが、これが完璧超人。美人で頭も良く、医者の嫁としてすべてを計画し、家のために殉ずる。
そのために、身分としてはかなり上となる、武家の娘、加恵を息子の嫁としてもらいに来るというのがプロローグ。
加恵は於継にべた惚れで、その人に認められたという思いで、ぶっちゃけ息子なんか知らないまま嫁入りする。
まさに昔だなぁと思う、一度も会ったことのない人に嫁入りして、しかも旦那は留学中で三年も帰ってこない…
ただまあ、ここまで読むと普通に微笑ましいだけなのだが、この本の帯には「医療小説×嫁姑バトル」とデカデカと記してある。
嫁姑バトル…?読み進めるのが怖い。いつ於継が豹変するんだ。豹変というか、多分スタンスは一貫してるんだろうけども…
と思ったら、旦那の雲平帰宅と同時に一気に起きた。
三年待ちわびた嫁と旦那の初邂逅はなんとなにも起きず、家族の誰も嫁を息子に紹介しない。息子もただ学業の報告をするだけ。なんだこれは。これまでは散々加恵を褒めてきた於継が突然の沈黙。
そこからはしっかりと嫁姑バトルが始まる。
でも、窓のさんをスーッとやってほこりが残っていてよみたいなのではなく、お互い無言にバトル。
加恵もこれまでなんで於継を慕っていたのだろうかとか言い始める。
於継の思惑はなんなんだ?
それにしても相変わらずものすごく読みやすい。なぜ読みやすいのかはよく分からないが、すごい勢いで読めてしまう。嫁姑バトルだけではなく、ちゃんと医療小説としても面白いからだろうな。
しかし、後半になっても、どうも加恵の姑嫌いが妄想にしか思えない。
というのも、於継の内心が全く描かれないから。なんかミステリー小説読んでるような心持ちにもなってくる。
青洲は最初の頃からずっと麻酔薬の研究を続けており、猫や犬を使って実験しまくり。華岡家の周りにはふらふらした動物がたくさんいるという状況が10年ほど続く… でも名医だから問題ない!
青洲の妹が乳癌で亡くなったが、てっきりここで研究中の麻酔薬を使うのかと思ったらそうではなかった。まだ研究が十分ではなく、人体には使えないのと、かなり末期だったからの模様。
そして時は進み、麻酔薬を使った猫が後遺症が軽く、宙返りができるようになったのを、きっかけに、嫁姑がそれぞれ自分の体を使って人体実験をしろ、とバトルを始める。でも、麻酔薬を使ったら死ぬからそれならこっちのほうが死に甲斐があるみたいなことをお互い言い始め、「全然信用しとらんやないかい!」と切れる青洲。それはそう。
未だ男子を産めない加恵への嫌味は確かに感じるが、そこまでの悪意にはやはり感じられない。
そしてほんとに麻酔薬を使って眠っている母の内股をつねって麻酔が効いてるか確認する青洲の姿を見て、「嫁以外の内股に手を!」とショックを受ける加恵。気にし過ぎだろう。医者だぞ?嫁入り直後とかならともかく、もう長い間医者の嫁として過ごしてきて今更… 逆に怖い。
それにしても於継の気持ちが描かれないからよくわからんなぁとずっと思ってたら、於継の次にとうとう加恵が重い麻酔を使ったあとに、とうとう気持ちを吐露する。確かに何故か憎んでたわ。加恵の考えは全然間違ってなかった。しかしなんでだ?
しかも加恵と似たように、青洲が気付け薬を口移しで飲ませるのを見てショックを受ける於継。なんなんだ君たちは。
結局、加恵は副作用で盲目になってしまうが、強い薬に耐えたということで於継に勝った感を出し、数年後にようやく男子も産み、於継は亡くなり、バトルは終わる。
ただ、唯一このバトルに気づいていた小姑の小陸がまた癌になり、でも治せないので弱っていくが、病床で加恵に気づいていたことをガンガン伝える。姑をもう憎んでいないという加恵の余裕は、勝ったと思ってるからだと。うーん、誰も気づいていないと思いきや、しっかり見られていた。
そして結局家族には麻酔手術をできなかったものの、患者のガンを麻酔で取ることに成功し、青洲の望みはとうとう果たされる。熱い。
ただ、結局わざわざ望んで嫁として迎えた加恵を、於継はなぜそこまで憎んでいたのか、それが分からなかった。途中で気が変わったという感じでもなかったし。望んで嫁に迎えたのはあくまでも息子のためであって、嫁については正直どうでも良かったってことか…?うーん、何がしたかったんや。
女性、特に嫁姑問題を体験した人が読んだら分かるのかもしれない。
Posted by ブクログ
世界最初の全身麻酔による外科手術を成功させた華岡青洲。
その成功の陰には進んで人体実験に身を捧げた母と妻の姿がありました。
加恵は憧れの於継に息子の嫁にと望まれたことが嬉しくもあり誇らしかったのです。嫁と姑は本当の母娘のように仲良くやっていました。それが一変したのは京都へ遊学していた雲平(青洲)が帰ってきてから。加恵は於継の言動に含みを感じるようになり、華岡家での疎外感を味わうようになったのです。
これといって激しい二人の対立があるのではなく、雲平を巡る物静かな戦いが繰り広げられました。
青洲が麻酔について研究し実験していると知った於継は自分を実験に使ってくれと言い出します。いやいやお母さんではなく私を、と言う加恵。大事な嫁にそんなことはさせられないと言う於継。結局青洲は二人に頼むのですが、実験に使った薬の強さは違うものでした。
嫁、姑の女のたたかい
病になった義理の妹小陸 なんという怖ろしい間柄だろうと思っていた。
「そう思うてなさるのは、嫂さんが勝ったからやわ」
男というのはすごい。母と嫂さんとのことを気づかないわけはないのに知らないふりして薬を飲ませた。私は病気で死ぬけれど嫁にも姑にもならなくてすんで幸せだった。
母と妻の争いを見ていた青洲は何を思っていたのか。この時代だから男と女の違い、ましてや嫁の立場の弱さはあったと思います。嫁にいかず病気でこの世を去った青洲の妹達が幸せだとは私には思えませんでした。医者の家華岡家への貢献度は自分の身を実験に差し出した嫁の加恵、姑の於継に敵わないかもしれませんが、小陸たち青洲の妹達も一丸となってささえたから、手術の成功があったのだと思います。
Posted by ブクログ
人間の本質に、殊におなごの本質に触れるような気がするのよし。永遠のライバル嫁姑。
美談として流布しているのであろう華岡青洲の母と妻は、もしかしたらこういう内情であったのではないか、華岡青洲自身は、科学者ではなくて医学者だけども、わりとマッドサイエンティストという歴史小説。良いとか悪いとか論じるのはナンセンスだと思う。そう言う下地に成り立っているのが今の現実でございましょ?遡って糾弾するなら今の快適、適切は捨てなきゃね。
私は、スルッと「そうかもな」と思えた。
語尾が「〜のよし」「〜いただかして」なんて穏やかで牧歌的な印象なのだけど内容はドロドロの愛憎。綺麗事で人生乗り切れないし、学べることもないのよし。
有吉佐和子さんの鋭い考察にやっぱり感服する。今月の100分de名著は図らずも有吉佐和子さんの特集らしいですね。
琴線に触れる描写が、昭和中期の作品には多い傾向にあるので、その年代を今後も攻めていきます。
Posted by ブクログ
「夫の母親は、妻には敵であった」。
敬愛していた於継(おつぎ)に請われて華岡家に嫁いだ加恵(かえ)。実の親子のように仲良く暮らしていた日々は、3年間の京都遊学を終えた夫 雲平(うんぺい)--後の青洲--の帰郷によって突如終焉する。表面的には普段どおりでも、何事においても嫁を蔑ろにするようになった於継を加恵は憎悪し始め、対抗する……。
自分こそが“家”(=当主)に最も頼みとされる女でありたいという、嫁と姑の静かで激しい争い。雲平が麻酔薬を開発すれば、その実験台として2人して名乗り出、張り合う。母/妻の鑑として周囲には美談めいて伝わるが、その内実はエゴイスティックで醜い。
結果的に加恵のほうが実験により貢献するが失明する。「お母はんに勝った」と得意気な加恵に、病に倒れた義妹 小陸(こりく)は2人の間柄は見ていて恐ろしかった、女二人で争わずに済むから自分は嫁に行かなくて幸福だったと告げる。慌てて於継を褒めちぎって取り繕う加恵に小陸はさらに言う、「そう思うてなさるのは、嫂さんが勝ったからやわ」と。
家制度の呪縛され、翻弄される女性の悲しさ。当主となる男児を産んだと自分する姑 於継と、血縁という壁に阻まれる嫁 加恵。妻や母になっても味わう女性の苦難を、当の息子で夫の雲平は鈍感なのか黙認しているのか何の反応も示さず、研究者や医者としての欲望を優先する。舞台設定は江戸時代だが、女性が透明化され、女性同士の争いですら男性に利用される理不尽さは現代にも通ずるものがある。嫁姑間の凄まじい葛藤を浮き彫りにする作者の腕に感嘆するばかり。映画版(増村保造、1967)ではこれほど伝わらなかった。
本書に関して強いて欠点を挙げるとすれば、註解が多すぎること。年少の読者を想定しているのか、昭和62(1987)年5月の改版からの構成なのか分からぬが、あまりに頻出で読み進めるのに難があった。
Posted by ブクログ
20年ぶりに読む。
嫁姑の心理描写が見事に尽きる。
以前は於継が怖い存在としか思えなかったが
息子をもつ今となってはもはやどちらの気持ちも手に取るようにわかる。
あるときまでは優しくいられる、しかしきっかけが訪れると
闘いが始まる、静かな、そして当事者にしか見えない炎。
姑は早く死ねたらいいと思う。
長患いを嫁にみてもらうとなるともうその先は本当に地獄だ。
青洲の偉大な働きがかすむほどの物語であった。
Posted by ブクログ
完全に忘れてしまう前に感想を…。
バッチバチの嫁姑バトルって感じではないのに、ドロドロしてる感じがすごいです。帯に「嫁姑バトル」みたいなことが書かれてて面白そうだったから買いましたが、それだけではなく、壮大な女二人の人生の物語。
加恵さんは、さすが武家の娘というべきでしょうか。
私なら途中で絶対「やっだー、私と同じもの飲んだと思ってたんですか?おかさんの麻酔には危ないもの入ってないのし!ご老体には無理よし!(方言はてきとー)」とか煽っちゃうかなー?笑
加恵さんを応援してしまうのは、やはり自分も嫁の立場だからでしょうか…笑
前、和歌山に旅行したときに道の駅に寄ったら、そこが華岡青洲の記念館みたいな場所で(しかも無料)それが結構面白かったんのし。
元々華岡青洲は好きだったけど、この小説で華岡愛が増したので今度はもっとじっくり見てみたいなーと思います。
Posted by ブクログ
100分で名著で知って買い、ようやっと読めた。
請われて嫁いだのに、環境変化にも馴染もうと努力し、憧れの人と家族になれた喜びからの突き放し。夫にとって母よりも特別な存在になれることが自分の存在価値になっていったことが、皮肉にも麻酔薬の完成には必然だったのかも。
夫はどちら贔屓でもなく、母、嫁にそれなりの対応だったのに、女たちが勝手にというのがなんとも。
小姑がもっと間に立ってくれればまた変わっふたかもしれないのに。小姑も姑ほどではないが、侵入者に対する意地悪な気持ちがあったのでしょう。
むかーし、子供向け漫画で読んだ華岡青洲夫妻の話からは想像できなかったお話しでした。