あらすじ
一九七二年九月、戦後三〇年近く対立していた中国と国交が結ばれた。この国交正常化交渉は、その後も続く歴史認識、戦争賠償、台湾問題、尖閣諸島など日中関係の論点が凝縮されていた。また冷戦下、アメリカとの関係維持に腐心しながら試みられたものだった。本書は、外交記録、インタビューなどからこの過程を掘り起こし、政治のリーダーシップに着目し、政治家、官僚たちの動きを精緻に追う。現代史を探る意欲作。
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Posted by ブクログ
日中の国交正常化について田中角栄首相、大平正芳外相(いずれも当時)ら政治家と官僚のドキュメンタリー。
国交回復の前提と台湾との断交、国内の反対、そして1978年の日中共同声明にいたるまでの過程を資料と当事者(主に官僚)のインタビューから再現している。途中問題が起こり、日中、日華が一触即発になっても田中と大平は官僚をうまく使いこなし、官僚も実務と工作に明け暮れたことが肉声でよくわかった。一方で中国側の声も書かれているので、日中双方の認識がわかる。
他の方のレビューの通り、日中の国交回復に反対した台湾を除き、アメリカやソ連など近隣諸国の見解を知りたかった。現在も日中の問題は山積しているが、真の「政治主導」とはこういうことかと感じた。
Posted by ブクログ
【54冊目】前々からちゃんと知りたいと思っていた日中国交正常化。その過程を追った本。歴史の今日的な意味・教訓を得ることに主眼を置いた構成となっており、かなり勉強になる。中国に関するニュースの見方が変わった。
メモ:日中米における台湾問題の重要性//ご迷惑スピーチ//自民党内の親中派と親台派の対立。何かを成そうとするとき、敵は外にだけいるわけではない。//田中首相と大平外相の役割分担。特に、田中の大平への任せっぷり。//日米関係を主軸とする日本外交←アメリカの影
本当に勉強になる良書!新書だから、「深く知りたい」「もっと知りたい」という欲求には応えられないという短所はあるけれど。
だけど、大体の正常化の過程はつかめると思う。正常化の今日的な意義を読者に提示しようとする筆者の一貫した視点は、本書の読みやすさにかなり貢献しているように思う。