あらすじ
命をやりとりする刀に魅せられた光三郎。駆け引きたっぷりの裏世界、町人たちの人情、心意気を直木賞作家が描く。幼いころから、刀がもつ摩訶不思議な美しさに憑かれてきた光三郎。将軍家の刀管理を司る御腰物奉行の長男に生まれながら、名刀・正宗を巡って父・勝義と大喧嘩をし、刀剣商に婿入りする。ある日、絶縁したはずの父が弱り果てて訪ねてくるが……。親子、夫婦、師弟の人情をじっくり描く時代小説。(講談社文庫)
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Posted by ブクログ
剣でも銃でも武器っちゅうのは人殺しの道具であるにも関わらず、温厚な人間であっても何かしら気にかかるもんなのである。それを持ちたいか、使いたいかというのはまた別の話。
さてこの小説、時は黒船来航の幕末当初、所は花のお江戸、訳あって武士の父親から破門され刀剣屋に婿養子に入った日本刀フェチが主人公。話は全て刀に関わるちょっぴりダークな雰囲気をもった短編集である。
主人公含め出てくる人物それぞれにクセがあって、単純な人情市井時代小説になってないところが良い。そういうのは宇江佐真理なり、花魁を取り戻そうとする女料理人なりに任せておけばよいのだ。
村正が妖刀と呼ばれる所以の分かる「心中むらくも村正」
国広ヲタと虎鉄ヲタが騒動を繰り広げる「うわき国広」
悪徳剣相占い師にぎゃふんと言わせる「だいきち虎鉄」
このあたりがオモロかったが、それ以外の作品も上手い。
刀の小説らしくスパッと断ち切ったような話の終わらせ方も、余韻が独特で良い。このシリーズ気に入った、追いかけてみようと思う。と思ったら山本さんお亡くなりで、あと1冊だけなんやねぇ。実に惜しい