あらすじ
ヴェトナム戦争直前のサイゴンで水死体となって発見された一人のアメリカ人青年の死の真相を、友人の英国人記者ファウラーは静かに回想していく――若いアメリカと老獪な欧州の報われない邂逅を描き著者の転換点となった記念碑的名作
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Posted by ブクログ
ベトナム戦争直前、アメリカの介入が目に見え始めたサイゴンを舞台に、「アジアを救う」という理想に燃える純情なアメリカ青年と引退間際のイギリス人記者がベトナム人女性を争う話。
それぞれの登場人物が国を体現しているような構成になっていて、アメリカ人が単純な机上の空論で正義を押し付け、他国を引っ掻き回すことへの不快感が作品全体を覆っています。
イラク戦争でも状況は変わっていません。何しろ大統領が「悪の枢軸」という、あなたテレビゲームやりすぎじゃないですか的表現で他国を指弾し、戦争を始めてしまうのですから。
無邪気な人は残酷だから苦手。
Posted by ブクログ
「無邪気」は、たいていは肯定的に受け取られることが多いと思う。天真爛漫で裏表がない感じ。でも、誰か周りの「無邪気」に、ある種の傲慢さや脳天気さ、無神経さを感じたことのある人は、決して「無邪気」を好意的には受け取らないだろう。
この小説に出てくるアメリカ人のパイルは、無邪気で正義感と理想に燃えている善良なアメリカ人青年。なんだか読んでると、ブッシュを連想してしまうのは偏見かしら。小説の舞台がインドシナ戦争だから、よけいにイラク戦争下のブッシュを連想してしまう。パイルが良かれと思ってやっていることは、じつはちっとも事態を好転させはしない。でもパイルはそこに気づかない。
この小説は、2つの場面がすごくリアル。ひとつは、淡々と描写される戦争の様子。もうひとつは、小説の語り手で老年にさしかかったシニカルなイギリス人、ファウラーの嫉妬。ファウラーの愛人である若いベトナム人女性フォンは、パイルにとられてしまうのだが……「が」がポイント。
淡々とした語り口だから、かえって胸に迫るといえるかも。でもひとつ文句をつけるなら、フォンがまったく受動的で人形みたいなところ。これって、ヨーロッパ男の、アジア女への幻想なのか。それとも、人種や文化的背景は関係なく、単に男の幻想なのか。ちょっと都合がよすぎて、できすぎの感じがするのだった。
Posted by ブクログ
タイトル買い。アメリカ人がおとなしいとは?アジアのベトナムにおけるフランス人とアメリカ人。ヨーロッパの男ととアメリカの男がアジアの女を取り合う話。作者は真剣だろうが、少し馬鹿げた話。良し悪しの分別は別にして、アジアを下に見てしまう無意識の根源をみせられる。