あらすじ
敗北が決定的となったフィリッピン戦線で結核に冒され、わずか数本の芋を渡されて本隊を追放された田村一等兵。野火の燃えひろがる原野を彷徨う田村は、極度の飢えに襲われ、自分の血を吸った蛭まで食べたあげく、友軍の屍体に目を向ける……。平凡な一人の中年男の異常な戦争体験をもとにして、彼がなぜ人肉嗜食に踏み切れなかったかをたどる戦争文学の代表的名作である。
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Posted by ブクログ
エンタメ作品では決してないが、かなり読み込む深さはあり文学として完成されてる。
作中、食人という行為に関わる人物は4人出てくるが、この四者比較で描写の読解が深まる。全員が生きていくための食人を否定しきれておらず、また全員が「俺は一線を超えていない」と思っていることがポイント。
意思決定はしていない・手は汚していない・食べてはいないというそれぞれ異なる一線を守ることで自分を免罪しようとしている。純粋に一線を守り切った人間はゼロという構造がこの小説の面白さ。
もう一点、別の角度から。不正の三角形(動機・機会・正当化)を逆に回す構造を戦争が持ち得ていることに対しては気づきがあった。
通常の不正のトライアングルは、個人が動機・機会・正当化を自ら組み立てて一線を越えるプロセスを説明し、そうならないように組織は手を打とうねということを研修とかで習う。しかし戦争下では、管理の消滅により機会は無制限化し、飢餓という動機は選択の余地なく外部から強制され、極限状態では仕方がないと言う正当化の動きも働く。
したがってどんな異常な行動でも起こり得る。この小説内では先述した通り、正当化している範囲が人によって違うことで噛み合わない会話や諍いが起こる姿が描かれる。
さすが往年の名作だという内容だった!
Posted by ブクログ
『野 火』
はじめまして( ͡ ͜ ͡ ) 大岡昇平さん♪
【月一文豪生活】8月は…
「火垂るの墓」 「悪女について」を読みました♪
それと もう1冊 この 「野火」
今は9月 なのに……どうしても この作品を
読んでレビューをあげるまでは 先に進めない
気がしていて……( ・᷄ ᴗ・᷅ )ゝ
この作品は 時間がかかった〜(・ω・)
読んで 頭で理解して 情景を頭に描いて……って
すごく ヘビーな作業 でした。
読書をしていて未熟だなぁ…と感じることは
行間を読めていないなぁ…ということです
(他にもありすぎるくらい ありますが…♪)
文章を読んでるだけじゃダメだなぁ…って
考えながら丁寧に読んだのですが…
まったく ダメ( ・᷄ ᴗ・᷅ )ゝ
最初は読めない語句なんか調べまくって読んでたんだけど…語句を頭の中でシュミレーションできるまで読んでいると疲れちゃって……
ふふふ(*´艸`)
大雑把だけど ニュアンスで
捉えることにしました。
この作品は…
主人公・田村一等兵は結核に冒され、本隊を追放されてしまう。野火の燃えひろがる原野を彷徨う田村。極度の飢えに襲われながらも懸命に生き続ける……
と、いう感じで話はすすみます。
この作品を読んでいると惹かれる文章があります…
この表現好きだなぁ…ってね( ͡ ͜ ͡ )
どんなふうに好き? と言われても上手く説明はできないんですけど…ふふふ(*´艸`)
例えば…
・もし私が新しい問題に魅せられたにすぎず、もし私が孤独を楽しみ、苦悩と忍耐を愛しているにすぎないとすれば、この迷いのために、死を早めるのは馬鹿げている。
・人間はどんな異常の状況でも、受け容れることが出来るものである。この際彼とその状況の間には、一種のよそよそしさが挿まって、情念が無益にかきたてられるのを防ぐ。
・自分のせずにいられぬことをするのを、恥じないことにしている。何か私以外の力に動かされるのだから、止むを得ないのである。
ほんの一部
「ん?」って なるんだけど…
何度も繰り返し読んでいると
わかった気分になってくるから( ㆆ ㆆ)و✧
不思議でしょう?
わかった気分になってるだけかもしれない。
この作品を簡単に理解することなんて
できないであろう…と 思う。
簡単に理解したなんて おこがましくって
言えないけど 田村一等兵の気持ちはわかる
気がする( ㆆ ㆆ)و✧
また、読んでみよう って思います
姐さん♥
この本 薄いのに
なかなか ずっしりとした本でした
また、挑戦させて下さい。
Posted by ブクログ
とてつもなく読後感が重いです。
前半はなかなか読み進められませんでした。
しかし、「飢者と狂者」から一気に引き込まれ、怒涛の勢いで読破。
「帰りたい。帰らしてくれ」
「俺が死んだら、ここを食べてもいいよ」
臨終間際の言葉が私にも深く突き刺さりました。
主人公の、右手を抑える左手も。
想像することしかできませんが、極限状態になった人間はこうなのかと、重く感じられました。
南方に出征して飢餓のため帰らぬ人となった私の祖父を思いながら、読み進めました。
Posted by ブクログ
短めの小説だが内容には重量感があり戦争について考え直すきっかけになった。冒頭の「私の生命の維持が、私の属し、そのため私が生命を提供している国家から保障される限度は、この六本の芋に尽きていた。」という部分から戦争は他国からの加害だけでなく自国からの加害があったのではないかという視点を持つようになった。戦争文学ということもあり読んでワクワクするような作品ではないが自分自身のためになる作品だと感じた。またこの作品からはキリスト教的宗教観を節々に感じた。主人公が、死んだのちに自分を食べても良いと言った老人をキリストの変身かもしれないと考える場面はキリスト教におけるパンとワインの話を連想した。
Posted by ブクログ
極限状態で人を殺すことと、人肉を食べること。この両者を隔てるものは何か、どれくらい隔たりがあるのか?という問いには答えが無いように思った。
主人公は何もかもが偶然の連続に過ぎないという冷徹な目を持ちながら、食人という一点ではその冷徹さがぐるりと覆ってしまう極端さを見せる。まるで正常と狂気を反復横跳びしているように。
食糧も物資も乏しいフィリピン戦線において、主人公は偶然の連続でたまたま人を殺して食べずに済んだが、偶然が連続するならばそこには神の意思があるのでは?と思うのは、この極限状態ではそうなるのではないか?むしろそうなる方が正常な心の動きだと感じる。
偶然の連続=野火の連続した目視によって主人公に刷りまこれただろう"戦争"のイメージ。『野火』の二文字を見ると私の脳裏にも本書の情景が蘇る。秀逸な題名だと思う。