あらすじ
男爵家の一人娘に生まれ何不自由なく育ったジャンヌ。彼女にとって、人生は夢が次々と実現していくものであるはずだった。しかし、現実はジャンヌを翻弄し続ける。乳母妹だった女中のロザリが妊娠し、その相手が自分の夫であることを知った時、彼女は過酷な現実を生き始めた――。感情移入を抑えて、現実を美化せずにありのままを描く自然主義文学の真髄ともいえる傑作。
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Posted by ブクログ
未来への希望と共に修道院を出るも次々に打ち砕かれる希望
登場人物みんな不倫してる
「人生ってのは、みんなが思うほど良いものでも、悪いものでもない」
Posted by ブクログ
それ以下でも、それ以上でもない。人生のありのままを描いている。
突き放されたり、ひょんなことに救われたりそんなことばかりだ。
夫に浮気されること、可愛がってくれる両親に愛されること、宗教にすがったり諦めたりすること、息子に捨てられること、ロザリが恩を返し助けてくれること。
夢もなく恐れもなく( nec spe nec metu )がある。期待を予見するでもなく、なにかに怯えるでもなく、ただただ日々を生きる。ロザリが最後に残した言葉の延長線に、こんな考えを持てるのではないかと感じた。
それにしても女性の心の機微を描くのが上手い。初夜の夜など、恐怖と苦しさとわずかな期待と、どの女性もひそかに抱えている思いが詰まっているのではないだろうか。そんなふつふつと心で煮え切らなかった部分を物語で言語化してくれてなんだかすっきりしたような気持ちになった。
恋愛の話。恋はどうわきあがり、恋にどう失望し、結婚にどう折り合いをつけて行くか。
家族の話。親、配偶者、子供、ペット。
お金の話。日々をどう生きるか、お金をどうやりくりするか。資産をどうするか。
社会階層の話。身分の違い。男爵、公爵、使用人、農民、聖職者。
景色。家の家具や、匂い。庭の並木道。海があったり、岩があったり、森があったり。日常に囲まれた景色ってこうだよなあと引っ越しのシーンで共感した。雨が降ったり、波が荒れたりして、都会に住む私は自然と共にある景色とか生活って素敵だなあって感じた。(と同時にそんなに綺麗じゃなかったり大変な季節もあるのだろうけど)
あと人生でたくさん旅行したいなと思った
Posted by ブクログ
夢あふれる貴族の少女ジャンヌ。幸せな結婚に恵まれて順風満帆に進んでいくかと思われた人生航路だが……。
世間知らずで受け身な女性主人公に、あまりにも男運がないとこうなる、というようなペシミズムあふれる一作。下世話な展開が興味を引くのと、ノルマンディーという舞台のゆえなのか風景描写が魅力的で、非常に読み応えがある。吝嗇すぎる夫と借金を重ねる放蕩息子の対比、夫にも息子にも恵まれたロザリとジャンヌの対比が、人生の真実の一端を見せてくれたと思う。
自らの不幸を宿命や運命のせいにし、生きる意欲を失うジャンヌを、ロザリが叱りつけるシーンが印象深い。年をとってもあまりに世間知らずなジャンヌに読者としては幻滅してしまうが、金の無心ばかりする息子を溺愛する姿は悲しくて責められない。夢破れて失望のままに生きる彼女の最後のよすがなのだ。いっぽうで夢を見ることさえない身分であったがゆえに、夢破れることもないロザリの堅実さ。女の一生とは、と考えさせられる。そして、最後の一文が深く胸にしみた。
Posted by ブクログ
まさに激動の女の一生の物語。ジュリアンのくずっぷりにややイライラしながらも次はどうなることかとページを繰る手が止まらなかった!
そうしたハラハラドキドキの波瀾万丈な人生に寄り添うレプープルの風景を甘美な情景にも寂寥とした情景にも描いているのが巧みだと思った。ジャンヌの心情の変化を暗示しているのはもちろんのこと、波乱に満ちた一人の女の人生とそこに変わらずあり続ける自然を対比しているのかしら。
それから、この作品の面白いところは19世紀の貴族の女性を主人公にしながらも、現代にも十分つながる物語であること。結婚後ふとした時に感じる夫との価値観の相違には「わかるわかる」と、まるで女友達と話す時のようにジャンヌに同調したくなったし(決して夫はあんなクズじゃないけど)、子どもを拠り所にするあまり過保護になる様子は今でいう「毒親」そのもの。橋田壽賀子が描くドラマにありそうだと思った(笑)
職業柄なのかつい物語に因果を求めて読んでしまう癖があるようで、ジャンヌの運命の残酷さの要因を清廉潔白さに求めたり、最後の結末に「なんとか報われたね」と思ったりした。だからこそ、ロザリの「人生は良いものでも悪いものでもないですね」という最後の言葉にはハッとさせられた。
Posted by ブクログ
久々に良い本読んだ…ありがとう…ありがとう… 対極のロザリとジャンヌ…ふたりともなんの判断も選択もないまま生きて来たけど偶然に2人とも変わっていく…
ジャンヌが受身すぎるって酷評されてたけどでもちゃんと生きてないかな、って思った。ジャンヌしっかり自分の人生生きてるだろ…?って思いながら読んでた。つらいことがあってもそれでも。あとがきに私が言いたかったことが上手く書いてあったから引用すると、「そんなに簡単に自分の力でものごとを選択したりできないものじゃないか」っていうこと
まぁ受け身と感じられなかった私にもちょっと問題あるのではとは思う。確かに夫がクズすぎるけれども、キリスト教社会でそう簡単に離婚できないんだよねとも考えちゃうんだな。まぁしかしジャンヌは外部に自分の幸せ求めてはいけなかった。
なにぶん表現がうまいのがジャンヌが結婚する前後の心情だろうなぁ、ここから先何もないってところ。少女時代夢を見ていたものがこうも易々と手に入れられてしまって、その先が見えなかったって話はたぶん一歩間違えれば身近にもあり得る話だから
Posted by ブクログ
開高健「任意の一点」という小説や三原順「ロングアゴー」を思い出した。
叔母のリゾンが物語を通じて何度も現れる。ジャンヌは、最初は「かわいそうなリゾンおばさん」と見下していたのに、一緒に息子ポールに奉仕するのようになり、最後にはなぜ自分は愛されないのかとリゾンのように堕ちていくのが面白かった。
同時に、常にリゾンの影がちらつくことで「ジャンヌは自分を不幸だと思っているが、リゾンより不幸ということはないでしょう」と読者に思い出させようとしているのかと思った。それはロザリがジャンヌを農民よりマシという趣旨のことを言って叱咤するのと同じ効果があるのかもしれない。
ジャンヌも男爵もロザリも善良ではあるけれど、善良であるからといって幸福になれるとは限らない。
トルビアック神父のように、神を信奉したからといって幸福になれるわけでもない。
信じていた母も不倫をしていた、という展開はとてもよかった。
Posted by ブクログ
修道院寄宿学校を出たばかりの少女がすぐに恋に落ち結婚するお話。浮気をする(当時の19世紀フランスでは当然)旦那が死んでも幸せにはなれず、子供のみが生きがいとなる。甘やかして育てた子は最後まで自分の元には残らず絶望した日々を一度は追い出された女中ロザリが手助けしながら歳をとっていく。
19世紀フランスでの中層階級以上における浮気は当たり前であるという背景を念頭におくと読みやすいかもしれない。
Posted by ブクログ
さいしょはとても希望に溢れている人生が、不幸なことが重なり人を変えてしまう物語。
それでも生きているだけジャンヌはえらいと思うし、よくがんばったと思う。旦那と息子に恵まれなかったが、最後にはすこし希望がうまれてよかった、、
どうかジャンヌが些細な幸せを感じていられますように。
Posted by ブクログ
積ん読になってて、映画化されたので、読もうと思った。
どちらかというと★2つ寄り。
女の一生じゃない。原題とは異なる。
寄宿学校を出てから、40代半ばまでのジャンヌの話。
結婚とは何なのか。
出会ってすぐに恋に落ち、瞬く間に結婚。
何の知識もなく、初夜で失望。
夫の不倫。
この夫は酷いな。最後はざまあって思ったけど。
あの転がるところの描写は凄惨さが伝わる。一番印象に残った。
子供への甘やかし。過干渉。親を利用する大人の出来上がり。
子育ての失敗が跳ね返ってくる。
不幸なジャンヌ。
夫については同情したけど、子供についてはそりゃあ仕方ないなと思えた。明らかに甘やかしだもの。
生きがいが何もなくて一人ぼっち。
思考が停止、鬱みたいになってるんだろう。
ロザリの言う通り、食べ物もあって息子は生きてるし、何を言ってるんだって思ったな。
自分が一番不幸と思っている。狭い中でしか生きてないから。
最後もどうなんだろう。
そこに落ち着くのか。
依存的な傾向がなくならない限りこの後も不幸だろうなぁ。
最後は強く生きていく方向になるのかと期待してどんどん読んでたのに、ガッカリした。