あらすじ
莫大な外貨準備高を元手に、中国が国家ファンド(CIC)を立ち上げた! 若き買収王・賀一華(ホーイーファ)は日本最大の自動車メーカー・アカマ自動車を標的にする。さらに鷲津政彦を誘い出す。「一緒に日本を買い叩きませんか」。日本に絶望した男はどう動くのか。産業界の中枢に狙いをつけた史上最大の買収劇が始まった。 (講談社文庫)
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Posted by ブクログ
感想
アカマはマツダがモデルかと思っていたが、トヨタのようでもある。日本のリーディングカンパニーのトヨタを海外からの買収で守らない国は何してるんだという感じ。
これまでの作品はある程度事実を基に作られていたと思うが、トヨタ買収騒動なんてあったかな?今作からオリジナルになったのか?いずれにしても上巻はこれから起こる嵐への仕込み的な感じ。鷲津のスーパービッグディールがこれから始まると思うと楽しみ。
あらすじ
中国が日本のアカマ自動車をターゲットにした買収を行おうとしていた。鷲津は、中国国家安全部の王より中国の外貨準備金を使って立ち上げたファンドCICでアカマ自動車を買収しようと誘いを受ける。
CICは、サブプライムローンで資金難にあえぐアメリカのゴールドバーク・コールズに資金出資を行い、一気にアカマ自動車の買収を行う姿勢を見せる。
一方、曙電機の再生に目処をつけた芝野は、CROを辞し、昔、銀行時代にお世話になった恩人が残した東大阪の町工場マジテックの経営に乗り出すことにする。
中国のホリエモン賀がアカマの株を買いあつめており、TOBをすると宣言していたがその後の動きがなかった。一方、鷲津はリンの進めでニューヨークに行き、GCの買収を検討するが、トップと会って中止する。その後、上海に行き、賀と会い、彼の手引きでアランの婚約者だったという美麗に会うが、彼女は精神的ショックで声を失っていた。
アカマ自動車は、社長がTOBに備えて、軍事産業部門を立ち上げ、国から守ってもらおうとするが、社内での抵抗が強い。赤間一族の副社長を担ぐ一派があり、最高顧問の赤間周平に収めてもらおうと考えていたが、周平はレースの事故で亡くなる。周平が亡くなったタイミングで賀はTOBを仕掛ける。
Posted by ブクログ
3.5
前作から半年後2007夏から始まる。日本最大の自動車メーカー(トヨタ?)アカマ自動車を巡り、米中を巻き込んだ大型ディール。国産自動車産業を作りたい中国の思惑、日本を代表する企業のM&Aと抗戦。鷲津の活躍と厳しさ、日本や企業に対する想いも光る。アカマ自動車のプライドや車に対する熱さ、コンプライアンス問題、芝野が世話になった中小メーカーマジテックの再生の話などが入り乱れなかなか面白い。
2007年当時の中国通は中国を知りたければマカオに行けと言っていた。膨張中国そのもの。
ホライズンキャピタルの歴史。プライベートエクイティと呼ばれる再生ファンドとしてビジネスを開始し、不良債権をバルクセールで一括で買いその中から黄金を見出し財産を築く。その後は経営難に陥った企業を買収し3-5年かけて再生させて利益を生むビジネス。
バブル崩壊後の失われた10年で何を学んだか。より上手な責任転嫁の方法か、外国から金だけむしり取って、今まで通り自国のルールだけで経済を回そうというご都合主義か。日本人の多くが誤解しているのは、この国は自力で復活したと思っていること。血のにじむようなグローバルスタンダードを受け入れ、国際経済社会の一員になり、それによって外国から金が流れ込んだに過ぎない。なのに、経済がちょっと回復したら鎖国しようなんて甘すぎる。
中国社会の常識は、強者が弱者を抑え込むために法律がある。そのため、人民は社会で起きる不条理には目をつぶり、コネと金と知恵を絞って渦中の人にならないように努力するのが処世術。後継者のいない日本の中小企業を買い取る中国人が増えている。
世の中で一番大事なのは諦めないこと。どんなに金に困っても仕事がなくても諦めたら負け。仕事がないなら創ればいい。
ニーチェの名言。言葉発せられた途端に嘘が始まる。
アカマの教え。決断に悩むときは3日悩むといい。最初の一日は自分の考えを肯定して悩み、2日目は徹底的に否定してみる。最後の日は、その二つをぶつける。そこまで悩んだ決断には結果が自ずとついてくる。風通しの良い会社とは、部下が面と向かって上司の悪口を言える会社だ。
買収を防ぐ方法は。ポイズンピルなどもよいが、時価総額を上げる努力を怠らないこと、アカマファンをたくさんつくること。株主や従業員、取引先、消費者に至るまで、誰からもアカマはいいよねと言ってもらえる努力。M&Aの勝敗は、時に世論が決める場合がある。