【感想・ネタバレ】蜘蛛の糸・杜子春・トロッコ 他十七篇のレビュー

あらすじ

芥川が小説、随筆、童話、戯曲と、その才気にまかせて様々のジャンルで試みた作品の中から、広い意味で「子どもむき」と考えられる作品を選び収めた。この作品群から、機智や逆説や諷刺、そしてまた、そうした理智の鎧で固められた奥にひそんでいる作者の、少年のような純潔で素直な魂を感じとることができる。 (解説 中村真一郎)

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Posted by ブクログ

ネタバレ

『父』

『酒虫』

『西郷隆盛』

『首が落ちた話』

『蜘蛛の糸』

『犬と笛』

『妖婆』

『魔術』

『老いたるスサノオ』

『杜子春』

『アグニの神』

『トロッコ』

『仙人』

『三つの宝』

『雛』

『猿蟹合戦』

『白』

『桃太郎』

『女仙』

『孔雀』

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2012年06月07日

Posted by ブクログ

ネタバレ

表紙の紹介では、広い意味で「子供向け」とあったが、ブラックユーモアや、人生の汚さを扱ったものもあり、どうだろうと思った。

父は、思春期の友達の前で、そうとは知らない友達が、自分を見送りに来た父親をからかうのに同調する青年と、からかわれているのが青年の父であることを知っている私の話。
気持ちはわかるが、気分は良くない。

酒虫は深い。体内に寄生する虫のせいで酒に酔えないと、坊主に言われ、取り除いてもらう。すると、酒を飲めなくなり、健康も害していく。これに3つの解釈を唱える。1には、幸運であった酒虫が、悪僧によって除かれしまった。2は、元々酒虫とは関係なく、健康が害された。3が深い。酒を飲めない時点で、元の人間とは人が変わってしまった。

西郷隆盛は、電車で乗り合わせた男性に、西郷隆盛が実は亡くなっておらず、今電車に乗り合わせているとだまされる笑い話。

首が落ちた話は、志那が舞台で、そこでなら何でも起こる的な、今の日本人の中国に対するイメージとそう変わらない話。ちなみに、芥川は中国には行ったことがある。

犬と猫は、アラビアンナイトにありそうな話。木こりが、笛の腕前のおかげで神から道具を授けられ、とらわれの姫を救う。それが、だまされて手柄を横取りされてしまうが、姫の機転により、本物のヒーローである証拠が授けられており、めでたしめでたし。

妖婆とアグニの神は酷似。さらわれて、降神の依り子?みたいなのにされる女性を救い出す話。とんちを使って、依り子の女性自体に、神が怒っていて、女性を逃がすようにという策を授けるが、実際には依り子の意識は儀式の途中で失われる。ところが、実際に降りた神がその通り、罰を与えてくれる。

魔術と杜子春は、舞台がインドと中国と違うが、類似。魔術、仙人の力で、お金を手に入れても身につかず、むなしいという様なことを悟らされる話。

老いたる素戔嗚尊もまた、深い。
自分自身は、若い頃は破天荒で、天界を追われてしまったが、年取り子供を持つ身となっては、娘が恋をして、大人になるのを邪魔してしまう。
そして、娘が去ると同時に、娘のことを祝福し、若いということはそういうものだといった悟りのような笑みを浮かべる話。
でも、娘の相手の名前がひどい。醜男でしこお...

トロッコは、子供特有の恐怖を、巧みに描いている。
工事現場のトロッコに魅せられた少年が、トロッコを押し、乗せてもらえるのをいいことに、どこまでも作業員について行くと、てっきり連れて帰ってもらえるものと思っていたのに、家から大分離れた場所で、そろそろ帰れと言われる。かなり遠い道のりを、日も暮れ、行きとは同じ道なのに違う様に見える道を、泣きながら必死で帰っていく話。分かるなぁ。
芥川さんが自殺しように、大人になると、漠然とした将来への不安を感じる。でも、子供の頃も、違う種類の不安がある。私の場合は、立体迷路が苦手だった。本当に出れなかったらどうしようと。そんな気持ちを描いている。

仙人は、舞台が大阪。
仙人になりたいという少年を、医者のけちな奥さんが、10年無給で働いて修行しなさいという。10年後に仙人の修行をと要求する少年に、奥さんがまたも無茶なことをいうと、なんと少年は仙人になっており、それをこなして、去って行く変な話。

3つの宝は、盗賊にだまされて、偽の三種の神器を買った王子様。それをもって、本物の神器を持つなぜか黒人の王様から姫を救いに行く。王子様は、王様との問答で、なぜか理屈で王様を降参させてしまう。王様は真実の愛とは何かを、偽の神器しか持たない王子を庇う姫様の愛を前に悟り、いい人になるというハッピーエンド。

雛は、悲しい話。没落してきたお家が、大切にしてきた娘のひな人形を売り払う。それを最後に見たい娘を家族のやりとりの、ただただ切ない話。

猿蟹合戦は、好みではない。勝った蟹が、その後、法律の力で死刑になってしまうという後味の悪さしか残らない話。

白は、仲間の犬を見殺しにした途端、真っ黒になってしまい、飼われていた家から放浪する白。
自分の体の黒いのを見るたびに、自分の卑怯なことを思い英雄犬になる。そして、ピンチを迎えた時、神様に償いをしたし、家に帰りたいと願う。目が覚めたら、白は白で、元のお家に帰ってきていた!

桃太郎は、私たちが知る桃太郎と全く逆。悪者の桃太郎が、平和二生きる鬼をやっつけて、宝を奪う話。これも後味が悪い。
ただ、本来は鬼は楽しく踊り暮らしていて、さらわれた女性の証言だけで、鬼が悪いと信じてしまったのではないかと書いてあるのは面白い。
でも、子供向けではないような(笑)

女仙は、親にとっては、いくつになっても子供は子供ということか?
老人の木こりを、うら若い女性が叱っているので、みかねて訪ねると、まさかの女性が3000歳を超えていて、きこりのおじいさんが子供だと告げるという。

孔雀は、オオカミ少年みたいな話。孔雀のまねをするカラスにうんざりした他の鳥たちが、本物の孔雀を見たときに、また偽物だと思い殺してしまう。それで、本物の孔雀が来たら大切にするのにと、会話を繰り広げる、後味の悪い1ページの話。

芥川龍之介は、私の好きな太宰治が憧れてやまない人だ。でも、私はトロッコの不安に通じるとこなどに、太宰治が惹かれたのかと感じないでもないけれど、太宰治の方が、おとぎ話を試みるにしても、どこか救われる優しい要素が残されていると思った。

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2023年06月03日

Posted by ブクログ

ネタバレ

「蜘蛛の糸」極楽の蓮池がこんなに美しい描写だったのか。 「魔術」悲しげな魔術師。「杜子春」オチの軽妙な明るさに救われる。「トロッコ」私の道に照らして考えて、少し怖くなって寂しい気持ちになる。

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2022年01月03日

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