あらすじ
地球への侵攻を開始した未知の異星体〈ジャム〉に反撃すべく、人類は惑星フェアリイに実戦組織FAFを派遣した。戦術戦闘電子偵察機・雪風とともに、孤独な戦いを続ける深井零の任務は、味方を犠牲にしてでも敵の情報を持ち帰るという非情なものだった――。日本SFの新時代を画したシリーズ第一作、改訂新版
...続きを読む感情タグBEST3
このページにはネタバレを含むレビューが表示されています
Posted by ブクログ
『戦いには人間が必要だよ』零は唐突に言った。『でもどうしてだろう』少佐は退室しかけた足を止めて振り返った。『人間に仕掛けられた戦争だからな。すべてを機械に代理させるわけにはいかんだろうさ』
なんとなく敬遠していたタイトルだったが、読み進めるうちにストーリーと世界観、そして上の会話にも含まれている作品のテーマに夢中になった。
突然異空間につながった南極を通して地球に侵攻してきた異星体・ジャムと戦う超国家組織・フェアリイ空軍(FAF)所属の深井零少尉は、その中でも情報収集を至上任務とする特殊部隊の一員で、彼らの任務は何事があっても情報を持ち帰ることである。そのために彼らは高性能な戦術戦闘電子偵察機「スーパーシルフ」を駆り、彼らの部隊には味方が撃墜されようとも情報収集に徹するという非情な判断ができる類の人間が集められている。主人公の深井零も、そのご多分に漏れず愛機のスーパーシルフ・「雪風」以外には、ほとんど関心を示さない。しかし、物語が進むにつれて零は自分と雪風の関係に違和感を覚え始める。それは零の上司であり、唯一の親友でもあるブッカー少佐も同じだった。彼はこのジャムとの戦いに人間は必要なのかに苦悩するー
人間とは、機械とは、そしてその関係はという抽象的な主題でありながら、ジャムとの戦いという形を通じて描写することで鼻につくことなく入ってくるところに驚いた。続刊以降で零はどのように変化するのか、作者は先の主題をどのように描いていくのか、ジャムとの戦闘はどう展開していくのかなど気になる要素がたくさんあるので、楽しみに読んでいきたい。
Posted by ブクログ
フォロワーさん一押し小説。
文章が独特で、最初はとっつきにく思ったが、御終いの方まで読むと、逆にこの堅い文章がくせになってしまう。
ブッカー少佐の悪運が半端ない。
Posted by ブクログ
南極大陸に突如出現した超空間通路から地球に侵略してきた異星体「ジャム」(正体不明、生物かすらも不明)。通路の向こう側の惑星「フェアリイ」で進攻を阻止する空軍「FAF」に属する「特殊戦」パイロットたちの物語。
本格的SFながら人間の存在意義にスポットを当てた骨太で哲学的な作品。
解説にあるようにどこかフィリップ・K・ディックに通じる趣きがある。
味方を犠牲にしてでも敵の情報を持ち帰るという非情な任務のために戦闘機を駆る深井零。
他者への関心を持たず人間性を無くしながらも彼が愛機「雪風」へ自らの存在を投影するし、心を傾ける姿はなんとも「人間らしさ」に溢れている。
まるで歩調を合わせるように闘いのレベルを上げていく機械とジャム。その過程で性能を解放させる「雪風」。人間の立ち入ることの出来ない領域の闘いに突入していく中で今後どのような展開になるのだろう。
Posted by ブクログ
戦闘機での戦闘描写等、専門用語の嵐に最初は面食らったものの、読み進めるうちに綿密な世界観に胸躍るようになりました。人間対異星体と思っていた構図が、次第に地球機械対異星体なのでは?となっていく内容や、登場人物たちの苦悩にすごく引き付けられました。結局、敵の正体が何であるのかは判明しませんが、それは続編で、というところでしょうか。