【感想・ネタバレ】個を動かす 新浪剛史 ローソン作り直しの10年のレビュー

あらすじ

株主・ダイエーの業績不振と迷走に巻き込まれて経営が蝕まれ、「セブンイレブンのマネをしろ」と言われ続けて現場も疲弊。
諦念と停滞に蝕まれた「万年2位」のコンビニ会社に、商社出身の歳若い新社長がやって来た。新浪剛史、当時43歳。
2012年5月で、就任から丸10年が経った。
脱・POS依存、チェーストア理論への挑戦、大胆な権限委譲、商習慣を打ち破る戦略調達と、SPA(製造小売業)化、フランチャイズ契約の常識を覆す驚きの新オーナー制度――。
「小売りについて何も知らない商社マンに何ができる」と、流通の“玄人”たちに嘲笑されながら、高度成長期モデルの常識や固定観念を覆し、流通業界に新たな地平を拓きつつある。
限られたリソースを巧みに組み換え、「勝つべき地点」に戦略的に集中投下して王者に挑む。
1人のリーダーが、10年の歳月をかけて固陋な組織をじわり変えた。
これは、コンビニ業界の最新動向のドキュメントであると同時に、組織と構造を変革する10年にわたる再生と挑戦の物語である。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

ローソンの新浪社長のインタビューを元にした本ですが、読んだ印象は新浪社長は日本に数少ないプロの経営者であると思いました。

日本におけるコンビニエンス業界でナンバーワンの企業はまぎれもなくセブンイレブンであり、その事実は動かし難い。ただその現実を前にして二番手企業としてどのように強みを発揮するか経営者の手腕であり、ローソンの採った様々な戦略もその視点で見てみるとあっさり理解出来ます。

全体でセブンイレブンに勝てないのであれば勝てそうな分野を見つける。セブンイレブンがコンビニの主力世代である20代~30代の男性をターゲットしたコンセプトの店を作るのであれば、ローソンは働く女性をターゲットにした「ナチュラルローソン」を作り、共働きの主婦を意識して店舗に野菜や果物といった青果を置くコーナーを作り、従来とは違うターゲットを対象とする。

利用金額に応じてキャッシュバックを付与し、一見するとリピーター獲得を目的とした「ポンタカード」も真の狙いは、レジで店員の判断で性別や年代を把握するセブンイレブンのPOSシステムよりより精緻な売上データを獲得する事が目的。

セブンイレブンが実質創業者である鈴木社長の強烈なカリスマによる中央集権型企業を目指すのであれば、ローソンは本社から地方に権限をどんどん委譲し、現場での発想力を期待する仕組みを構築する等、明らかにセブンを追いかけるのでなく、セブンの戦略を見つつも自分達の勝てる分野やセブンとは異なる手法を追い続けているのは確かです。

以前読んだ「良い戦略・悪い戦略」の本における、よい戦略の基準である、一点集中、何をやる、何故やる、どうやるが明確な点を全てクリアしていますので見事なものだと思います。

ビジネスマンとしても大いに参考になる書であると思いました。

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2013年06月18日

Posted by ブクログ

ネタバレ

ダイエーの立て直しの資金集めのための見せかけだけの拡大事業を、どのように立て直したかがわかる。
マネジメントをどんどん地域に細分化しながらも仕入れ部分は顧客のデータを最大限活用してデータ化し、効率化。
何が一番参考になるって、顧客をしっかり見ることがどれだけ重要かってこと。
社員のモチベーションも上がるだろうなと思った。事例が多いからすぐに読める

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2015年09月07日

Posted by ブクログ

ネタバレ

ローソンCEOの新浪さんによるローソン作り直しを書いた本。
自分自身、ナチュラルローソンというコンセプトが好きで、そこでバイトをしていたので、この本を読んでみたいと思い手に取った。ナチュラルローソンという、ほかのコンビニがやっていない面白い取り組みを考えた新浪さんとはどんな人なのだろうかと。

まず、本全体を通して感じたのが、個の大切さ。コンビニ経営とはまさしく川上から川下まですべてを掌握しないといけないビジネスであるが、どこの場所でも個を活かせるような仕組みづくりが大事だということがわかった。

被災地の店舗まで出向くという新浪さんの行動、ナチュラルローソンなど業態の多様性、中央集権型から地方分権型への移行、POSシステムとPontaカードの活用、ソーシャルメディアの活用、などあらゆる場面で「個」の重要性を考えさせられた。

また、新浪さんは、組織を動かすにあたって、理論だけでなく、実践するのに長けた方だなと思った。

本文中にこういう記述がある。

「企業内の「個」を奮い立たせて、地域の「顧客」と向き合う「個店」を作り上げる」

また、よく私がバイト時代に店舗内でよく見ていたポスターの言葉

「私たちはみんなと暮らすマチを幸せにします」


コンビニという、一見「個」や「愛」のなさそうなものに、新しい何かを注ぎこむ新浪さんをはじめとするローソンの方々は素晴らしい仕事をしているなと思いました。

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2013年01月28日

Posted by ブクログ

ネタバレ

サントリーへの転身で話題となった新浪社長の、ローソン時代を
総括することとなった著書。

ダイエー救済の犠牲となったローソンをいかに立て直し、
業界の雄セブンに挑んでいるか。この様子を端的に表したのが
序文にあるので引用。

・優れた経営のリーダーシップは、越えることなど
 想像もできない巨大な壁に挑む「意志」を組織の中に生み、
 鼓舞する。もちろんただやみくもに挑むのではない。
 勝てないゲームのルールを変えてみせる。自らの限られた
 経営資源を組み替え、最適化し、「こうすれば勝てる」と
 戦略を示す。「そうか、戦っていいのか」「ひょっとしたら
 自分達は勝てるんじゃないか。」(中略)
 この本では新浪社長のリーダーシップを通じて、諦念に
 沈んだ組織が、所与の競争条件の中、いかにして生き生きと
 蘇ったのかを描きたい。(P4)

加盟店が全国に薄く散り、不採算店舗が多かったという弱みを、
多様な顧客ニーズに応えるための現場への権限移譲、
不採算店舗閉鎖で生まれた余剰人員の活用(新店舗立ち上げ要員、
ミステリーショッパー)という妙手に繋げていく下りは
まさに経営資源の組み替え、これぞ現実の経営戦略。

他にも、ローソンに行って最初に手をつけたのが「おにぎり」の
商品力UPであったり、セブンが店舗毎に仮説検証を繰り返す
スタイルに対し、ローソンではPONTAを活用した本部主導も
加味した発注を模索するなど、断片的にはニュースとなっている
話を経営の文脈に載せて整理されており、大変参考になる。


■目次と印象に残ったエピソード

①試された「分権経営」

②迷走する経営を上場の「傷跡」

・「ダイエーのために上場するということの犠牲になったな、という
 印象を受けていました。(中略)何でもかんでも、形式上、上場に
 向けて株価がつくように強いられていた。だから、それによる
 弊害というのがすごくあった。(中略)」
 「形式上」とはどのような意味か。
 上場の方針が決まった後、ローソンは出店を加速した。96年末に
 6000店余りだった店舗を99年2月には7000店へと急拡大。
 97年には沖縄県に店を出して全都道府県への出店を済ませた。(P45)

・経営不振に陥ったダイエーは、余剰になった人員をローソンに
 送り込んだ。その一部は独立し、ローソンの加盟店オーナーに
 なっていた。彼らはローソンのSVの頭越しに本社ダイエー出身者と
 交渉するなど「越権」行為を繰り返し、組織のモラール(勤労意欲)を
 著しく低下させていた。(P53)

③一番うまいおにぎりを作ろう - 「成功体験」を作る

・新浪が給食会社で学んだのは「基礎」の重要性だ。(中略)
 どこかに経営資源を集中投下する必要がある。新浪は、まずは
 給食会社が提供するサービスの基礎である「ご飯」と「みそ汁」の
 改善に経営資源を注力する(中略)
 これらの品質を上げると「あの食堂はうまい」という
 評価につながった。事業者向け給食の業界は狭い。
 すぐに噂が広がって、新規受注が増え始めた。(P69-70)

・このおにぎりの開発を通じて『お客様を見るよりもまずとにかく
 粗利を上げろ』というようなダイエー時代の文化が変わるん
 じゃないか、という期待感を心ある社員が持ってくれました
 (P76-77)

④「田舎コンビニ」を強みに転じる

・田舎にぽつりと店を構えるなど、高効率の立地にドミナント
 展開できていなかったローソンは、つまり、立地だけ見れば、
 業界首位に比べて「20~30代男性」に特化しきれていなかったと
 言える。だが、これを反転させればどうだろうか。
 コンビニを縛り続けてきた「20~30代男性」という
 セグメンテーションから、より自由な可能性、「多様」な
 可能性に開かれているとも言えるのだ。(P93)

・新浪が就任後間もなく進めたのは、中央集権というよりも、
 むしろそれはまるで正反対の「地方分権」-徹底した
 現場への権限移譲だった。(P100)

・「新浪さんは基本的にすべてやる前提なんです。新浪さんの
 いいところですね。『やる前提で考えた時の課題はこうだよね。
 だから、これをこう変えた方がいいんじゃないの』という
 前向きなアドバイスをしてくれる。」
 組織が考え抜いた上で、自身の描く経営の「ビッグピクチャー」に
 反していない提案を持ってきたら、新浪は「やる」「やらない」と
 いう議論はしない(P104)

⑤オーナーの地位を上げましょう

・ローソンの上場益で有利子負債を削減したいダイエーは
 「見かけ」の成長性を示すために出店数を増やす必要性が
 あった。(中略)本部の収益性を犠牲にしてチャージ率を
 下げることで加盟店の「数」を確保する。(P128)

・ローソンでは「3つの徹底」と呼んだ。
 すなわち「マチのお客さまに喜んでいただけるお店・売り場
 づくり(個店主義)」「お店とマチをキレイにする」「心の
 こもった接客」。言い換えれば、品揃え・接客・清潔さの
 三点だ。(中略)新浪はこれらの「基礎」の底上げに店舗運営の
 資源を集中投下させ、どうしてもこれら三つの基礎について
 向上できない加盟店は契約を解除した。(中略)
 2004年、これら「3つの徹底」について数値化する仕組みを
 導入した。「MS(ミステリーショッパー=覆面調査員)」と
 呼ばれるものだ。(P131)

・「(注:覆面調査には)毎年およそ30億円のコストをかけて
 います。(中略)ただ、実はMSは余剰人員を活用する方策でも
 あったんです。社長に就任してから、意欲の下がった社員が
 やっている不採算の直営店をどんどん閉めました。(P138)

⑥加盟店オーナーにも「分権」

・(注:オーナーの地位を高める切り札として導入したのが)
 「MO(マネジメント・オーナー」。新浪は加盟店に対してMSという
 顧客視点の「基準」を用意し、サービスの向上を求めた。
 その「ムチ」を高い水準で乗り越えた有力なオーナーに対しては、
 本部の権限させ与えてしまおうという大胆な仕組みだ。

・MOに対しては、本部がパソコンを貸与し、経営する全店舗の
 販売実績や発注状況を一覧できる仕組みを提供する。(中略)
 従来の仕組みでは、一店舗ごとに仮設をたてて発注し、
 販売データで検証することはできたが、複数店にまたがる
 そうした実証ができるのは本部の「特権」だった。(P152)

⑦「個」に解きほぐされた消費をつかむ

・「売れた」「売れない」としか分からないPOSシステムの
 世界に、「リピート購買」という新しい物差しを一本
 差し込む込むだけで、データの見え方がまるで変ってくる。
 (P179)

・もう1つ注目したいのが「本部」と加盟店」の役割分担だ。
 第六章で見たように、ローソンはMO制度などによって店舗の
 「運営」の権限を加盟店側に委譲しようと試みている。
 だが一方で、加盟店任せだった「発注」業務は、むしろ逆に
 加盟店から本部への移そうともしている。(P188)

(注)ローソンではPONTAデータの解析によって、発注業務を
   本部へ移すことに取り組んでいる。

8.「強さ」のために組み替える

9.僕が独裁者にならないために

10.人間・新浪剛史

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2015年01月19日

Posted by ブクログ

ネタバレ

【気になった場所】

優れた経営のリーダーシップとは
→超えることなど想像できない壁に挑む意志を組織の中に生み、鼓舞すること
→勝てないゲームのルールを変え、こうすれば勝てるという戦略を示す

「お客様のため」を外すと、道を大きく誤る

小売業の機能
・モノを集め、作り仕入れる
・モノを売る
・店舗を出す

素人の意見を聞いて、先入観を無くす

体験という差別化

異質なものは、自分の知らないものをもたらす

権限を使いこなすのに時間がかかる

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2019年09月08日

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