あらすじ
――シャールがその天才に出会ったのは、あの奇病が国に広がる、2年前のことだった。
13歳のシャールは、国いちばんの料理人である父のあとを継ぐために修行をつづけている。あるとき、慈善団体の活動に参加したシャールは、貧民街で暮らす少年・アズレと出会う。アズレのもつ天才的な料理の才能に気づいたシャールは、彼に料理を教えることにするが、ふたりの関係はある日、とうとつに終わってしまう。そして2年後……。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
好きな物語だった。
料理人のシャールと貧民街で育ったアゼルの友情譚。
相手の立場と心情に想像を巡らせること。
西村ツチカさんの挿絵がとても可愛かった。
食べ物を美味しいと感じ続けられる人生でありたい。
巻末のレシピ、ちょっと試してみたい。
Posted by ブクログ
長谷川まりるは天才なんや…
食死病(なにも食べられなくなる病)が流行する世界で、有名レストランの跡取り少年と、貧民街に住む少年が出会う。
秀才と天才の話なんだけど、最後に視点がぐるっとひっくり返る。半ば察してはいたけど、あまりにお見事すぎる。
立場の違いや生まれの違い価値観の違いを、料理を通じて描く秀作。
Posted by ブクログ
シャールは思いやりのない子だった。先生に言われて、父は貧民街のスープ作りに出されることになった。シャールの父は国一番の料理人で、シャールの味付けは完璧だった。
貧民街で子供に出会う。アズレという男の子は、シャールの作ったスープに牛乳を加えて更にコクのある美味しい味付けに変えてしまった。シャールはびっくり仰天する。父に料理の腕がまだまだと言われていたけれど、初めて実感したのだ。
父が食死病という食べられなくなって死ぬ病気で他界する。シャールは子供ながらレストランを継ぐことになった。シャールはアズレを探し出して、レストランのシェフとして手伝ってもらうことにする。
Posted by ブクログ
食べ物から死のにおいを感じる食死病が広がった世界。そこで出会った有名料理家の息子と、貧民街の少年。
立場や境遇により見えるものや見え方が変わることを示すのに、料理を通じた物語で表す。それが物語の力であり、長谷川まりる作品の魅力だろう。
Posted by ブクログ
すごくおもしろかったんだけど、読後に残るざらりとした感触をなかなか言葉にできない。「食死病」という奇病がなんとも残酷であるんだけど、コロナの後遺症で、美味しいものを味わいたくても味覚(というか嗅覚)を失ってしまったり、摂食障害で食べることが恐怖になってしまったりというケースも想起させるし、そもそも食というのはほかの生きものの命をうばわなくては食べられないものであるという、なんか根源的な問いを突きつけられるようでもある。そういう一筋縄ではいかないテーマが設定されているのが長谷川まりるさん流なのかなと。
もうひとつわたしが勝手に考えている長谷川まりるさんの作品の特徴は、魂のつながる伴奏者がいること。今回の伴奏者はなかなか手ごわくて、元は立場に上下があり、でもほどこしを受ける側に天賦の才があるわけで。その関係が、断絶を経て以前よりいい形でよみがえって進んでいくのは希望を感じさせてすごい。
よい物語だった。
あ、あと、キム・チョヨプ『惑星語書店』の「外から来た移住者たち」を思い出して再読した。こちらは、謎めいた食堂に入ったら、今まで食べたことのない風味の、スープとプリンを供される人の話。味音痴で何を食べても美味しいと思ったことがないけどこれは美味しいというと、店主が、実は自分もそうで、味覚が鋭敏すぎるがゆえに、チョコレートがひどい味に感じられたり、塩味が苦味になったりすると告白する。でも美味しいものをあきらめるのではなく、一度でいいから美味しいものを見つけようと思ってこの仕事を始めたのだと。
じつはこの店長にはさらなる秘密があって、それがサラリと明かされるのがゆかいなんだけど、そちらは読んでのお楽しみということで。
食死病とは似ても似つかないんだけど、ちょっとだけ似ていなくもないお話でした。
Posted by ブクログ
易しい言葉と表現で、社会の色々な問題を教えてくれる子供向けの物語なのかもしれないが
だからこそ、大人に刺さる物語。
巻末に載っていたレシピ。
ピースープと赤いチキン 作ってみたい。
Posted by ブクログ
有名料理家の息子と貧民街の少年が、料理を通じて少しずつ交わっていく。生まれも立場も違えば、見えてくる景色もまるで違う。その当たり前のことを改めて思い出させてくれる、対象年齢の青少年たち以上に大人に気づきを与えてくれる作品だと思う。
「食べることは、生きること」。食べたいときに食べたいものを食べられる環境にいること自体が、実はとても恵まれている。そんな当たり前の有難みを忘れないでいたいと思う。2人の少年を対等に扱うレストランの大人たちの姿も良かったなあ。
Posted by ブクログ
よくある天才と秀才の友情と葛藤にとどまらず、そこにほんのひとつまみのファンタジー、さらに一粒のミステリを加えることで、残酷で温かい物語に。
タイトル回収も良いし、大人が読んでも間違いなく楽しめる良質な児童文学
Posted by ブクログ
最近手にした本が重たいテーマが続いたので
長谷川まりるさんの新刊児童書で癒されよう…
と手にしたけれど、美味しそうな表題とは裏腹に思いのほかこちらも考えさせられる物語。
有名シェフの息子シャールと天才的な味覚を持つ貧しい育ちのアズレ。
食死病という奇病の流行に振り回される二人の人生…
長谷川まりるさんは、なかなか奇抜な架空の設定の小説を書かれるから毎回辻褄合わせが大変だろうなあと思う。でも、児童書であっても丁寧な取材をもとに描いているのだろう。いつの間にやらまりるワールドに没入してしまう。
今回も食を通して生きることについて考えさせられる物語だった。
コンビニ弁当やお惣菜などが簡単に手に入り、添加物で味付けされた食品にあふれた現代。
畑から収穫したまのま野菜や絞めたばかりの肉から料理することができない人が増えていると思う。
子ども達だって、丁寧に料理するプロセスは見たことがないかもしれない。
マリー・デジャルダンさんの素敵なレシピは読んでいるだけでワクワクするし、どんな味だろうと想像が膨らむ。
一から、心を込めて作る料理の素晴らしさに子ども達が気づいてくれたら…と思う。
そしてまりるさんが一番伝えたかったのは、
相手に対する思い込みを捨てることで、相手を知ることができるということなのかなと思う。
シャールはアズレを天才だと思っていたけれど、本当は苦しみの中で生きるために必死だっただけ。
シャールは気づいた。
「アズレの才能は祝福ではなく、むしろ呪いだった」
シャールがアズレの苦しみを理解できたことで、分かり合えたし、二人の理想を追求できた。
こんな素晴らしい友情があるんだとぜひ子ども達に伝えたい。
古典児童文学はちょっと苦手という子どもでも、これはきっと読みやすい。中世の雰囲気を味わえて、古典に興味を持ってくれるかもな〜などとまた期待が膨らんでしまう。
Posted by ブクログ
国一番の料理人の息子として父から日々料理の特訓を受けていた13才のシャールはある時、慈善団体の活動として貧民街でスープを振る舞っていた時、そのスープの鍋にいきなりミルクをカップで突っ込んだアズレと言う少年のスープの味が忘れられず、その天才的味覚に驚き、常にアズレの後ろ姿を追いかけていたシャール
映画「アマデウス」のサリエリを思い出した
秀才の前に、超えたくても、超えられない天才が存在していた
Posted by ブクログ
天才的な味覚を持つ少年と、超有名な料理人の父を持つ努力家の少年。
二人が互いに切磋琢磨して、料理の道を究めていく…というあらすじかと思いきや、「食死病」が出てきたあたりから、展開が読めなくなって、ドキドキハラハラ。
料理の道を生きると決めた二人が、食死病の蔓延する世界でどう生きていくのか。
読んでいく途中で絶望的な気持ちにさせられたが、それでも生きることを諦めない二人の姿に勇気をもらった。
この物語の結末を、ぜひ読んでほしい。