あらすじ
カビは身近な生き物だが、意外にその実態は知られていない。人に害を与え、重篤な病気を引き起こすカビがある一方で、「善玉カビ」もある。人とカビのかかわりの歴史を詳述するとともに、洗濯機、浴室、食品に発生するカビなど身近な事例から、カビ対策やカビとのつきあい方も探る。
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Posted by ブクログ
子どもの頃、箱でみかんを買っていたときに、最後の方でみかんにカビが生えていたことを思い出す。酸性の食品は細菌は増殖しにくいが、カビはそんな環境でも生きられる好例なのですね。水虫は白癬菌というカビが原因なのですが、地球と人類の関係を人間とカビの関係に投影した野坂昭如氏の作品を引用してきたあたりは思わずうなってしまった。
Posted by ブクログ
専門家の口から「家庭のカビの原因は7割は家の構造か環境にある」とあって、少し安心したと同時に引っ越ししたくなった。
多くのカビには強い毒性はなく、カビが全くない場所はカビも住めないほどの(乾燥しすぎな)場所とも言えるので、我々はカビに対して潔癖になりすぎているかもしれないとも思った。
抗生物質のペニシリンがカビから発見されたのは知らなかった。
恩恵を受けている部分も含めてカビのことをよく知れた。
Posted by ブクログ
カビは、細菌が生きることができない酸性環境下でも生育できる。カビは2日間は胞子を作らず、胞子ができるとネズミ算式に増える。
発酵は食品保存に利用された。牛肉を岩塩で漬けたものがコンビーフ。豚肉を乾燥、塩漬け、燻製などの処理を組み合わせたものが、ベーコン、ソーセージ、ハム。ブドウの果実にはたくさんの野生の酵母が付着しているため、果実をつぶすだけでワインができた。
洗濯機は、使用半年後にカビが増える。カビは界面活性剤を栄養源にして、脱水槽の上部に多く付く。カビ対策は、乾燥させること、洗濯槽クリーナーを使うこと。エアコンでは、運転を止めた後に結露が発生してカビが増殖するため、スイッチを入れたり切ったりするのはよくない。浴室に生えるカビは、洗濯機に生えるカビと似ている。対策には塩素系カビ取り剤が用いられる。
ペニシリンは、ブドウ球菌を生やした培地に偶然アオカビが発生したことで、1929年にフレミングが発見した。その10年後、培養液からペニシリンの抽出に成功し、生産量を向上させる方法が研究されて大量生産されるようになった。結核の抗生物質ストレプトマイシンは、放線菌の培養液から分離された。
草食動物の糞には、様々な糞性菌が遷移する。最初に糖分を栄養源とするケカビやミズタマカビが、2週間後にセルロースを栄養にするケタマカビが、1ヶ月後にヒトヨタケなどのキノコの仲間が生える。
Posted by ブクログ
菌類はおそらく存在するうちの10%程度しか見つかっていない。
身近なカビはソトから入ってくるのだろうと放っておいたら、違うカビだったのだそうで。
カビはなぜ生鮮食品ではなく保存食品に生えるのか。栄養が豊富な生鮮食品の場合、カビより先に細菌が頑張っちゃうから。つまり腐っちゃうから。言われてみればあたりまえ。細菌ほどにカビは強くないのだとか。
かつお節なんかは、カビづけが重要だけど、昨今の生活では、カビはとにかく単なる敵になっていて、カビとともに暮らす知恵を失っている。設備に頼る家の換気しかり、食べ物の保存やカビの除去しかり。
人とカビは、まさに闘いながら共生しなければならないのに。人とカビの関係に限らず、そういうのがどんどん二極化していくのを思い、ちょっとイヤになっちゃう本。本が悪いんじゃないけど。