あらすじ
関東湾人工島の自治区に男女別で隔離されている人間たちは、人工妖精(フィギュア)と共に暮らしていた。その一体の揚羽(あげは)は、亡くなった後輩が葬式で“動く死体”(リビング・デッド)になってしまった事件の謎を追う。一方、自警団(イエロー)の曽田陽平は人工妖精の“顔剥ぎ”(フェイス・オフ)事件の痕跡を捜査していた。どちらも当初は単発的な事件だと思われたが、突如自治区を襲ったテロをきっかけに、これらの異変が自治区の深い闇のほんの一端であることを二人は思い知る……。人間に仕える人工妖精の愛と苦悩を描くアンドロイド成長SF第二弾!
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Posted by ブクログ
スワロウテイルシリーズ2冊目、看護学校時代の後輩の葬儀に参加した揚羽(?)だが、火葬場で動く死体と化した彼女と相対することに。青色機関の抹消抗体として揚羽は彼女を退け、事件としてその謎を追い始める。自警団の陽平が追う貌剥ぎ事件、そして同時期に自治区を襲ったテロ、単発的に見えた複数の事件だったが全ては東京自治区の暗部に繋がり、自治区の存亡を懸けた事態が進行していく。
前半はある違和感を覚えながら読み進めていたが、真相が明らかになるにつれ別々にみえた事件が繋がり始める過程に引き込まれた。怒涛の複線回収で違和感の原因もしっかりと解決され、今回も緻密な世界観設定の下で繰り広げられるお話に大満足だった。キャラクター造形も秀逸で、特に人工妖精たちを含む人による被造物であるキャラたちのやりとりがお気にいり。
Posted by ブクログ
シリーズ第2作。東京自治区を襲う危機と揚羽(?)を襲う危機が複雑に絡み合い、一見美しく麗しい自治区の暗部に踏み込んでいくという前作にも増して重層的で面白いストーリーが展開していきます。
第一印象としては全般的に「あぁ、3.11後だなぁ」という雰囲気が作中の端々から、いささか過剰とも思えるくらいににじみ出ているのですが、いわゆる「時事ネタ」の一歩手前で踏みとどまっている感じはします。
そして前作では(おそらく)「記憶」を一つのテーマとして語られた通底している人に造られる存在である「人工妖精」の自己認識、アイデンティティを巡る時に複雑怪奇な議論は、今作では「顔」という形で登場し、人と人に愛されるべく生まれた人工妖精の物語に充分すぎるほどの奥行きを与えてくれているように思えます。前作を楽しんで読めた方には是非今作も読んでみて欲しい、そんな作品であります。