【感想・ネタバレ】ハイペリオンの没落(下)のレビュー

あらすじ

〔英国SF協会賞/ローカス賞受賞〕宇宙の蛮族アウスターの侵攻に対抗すべく、連邦の無敵艦隊が投入され、熾烈な戦火の中にとり残された惑星ハイペリオン。この星にある、時を超越した遺跡〈時間の墓標〉を訪れていた七人の男女の眼前で、ついに幾多の謎が解明されるときが近づいていた! 傑作未来叙事詩第二部

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Posted by ブクログ

ネタバレ

銀河を覆う転移ネットワーク“ウェブ”が支配され、200以上の惑星が次々と崩壊していく。宇宙の命運を懸けた戦争は、ついに終盤へ──シリーズ第4作目。

これまでの旅で出会った数々の星が、無惨に滅びていく光景は胸を打ちます。それでも巡礼者たちは、人類のためではなく、友のためにそれぞれの道を選び、時間・宇宙・データの彼方を駆け抜けながら、自分なりのやり方で宇宙を救っていく。その姿は、まさに彼らの旅の集大成と呼ぶにふさわしいものでした。

特に鮮烈だったのは、AI=テクノコアの正体と陰謀です。彼らのサーバー(本体)は“ウェブ”そのものであり、転移ゲート間の隙間に隠されていた。そしてゲートを通過する人間のシナプスを演算資源として利用する事で、動力として利用する。さらにシュライクを解き放ち、人類抹殺による下剋上を狙う──1作目から示唆されてきた「ウェブ」「AI」「シュライク」という要素が、ここで見事に収束していく構成に唸らされました。

そして圧巻は、世界中の転移ゲートを破壊するという決着です。これはディストピア作品の王道ともいえる「支配の仕組みを壊す」展開でありながら、“ウェブ”を失うことは即ち、人類が1000年以上かけて築いてきた文明そのものを巻き戻すことを意味します。その代償はあまりにも苛烈でした。ゲート通過中の人間は細切れとなって絶命し、数多の人々が宇宙の片隅に取り残され、家族とも再開できず生きる術を失う。世界中の人類が地獄に突き落とされる、この凄惨な描写は、今年読んだ中で最も衝撃的なものでした。
さらに、テクノコアの真意を掴めず操られていた間は崇められ、彼らの手から世界を解放した途端に、暴徒により惨殺されるCEOの末路も、人間社会の残酷さを突きつける象徴的なエピソードでした。

最後に、巡礼者たちが再び集まり、領事は宇宙の彼方へと去ってゆくラスト。
もはや“ウェブ”は存在せず、今度の別れは永遠のものとなる。しかしそれでも、自らの宇宙船で少しずつ宇宙を切り拓いていこうとする姿は、人類が開拓者としての強さを取り戻したような終わりで、清々しくて良かったです。

人類の栄華と崩壊、そして再出発。その全てを描ききった壮大な結末に、ただ圧倒される一冊でした。(もっとも、物語自体はまだ続いていくのですが。)

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2025年09月25日

Posted by ブクログ

ネタバレ

ハイペリオンシリーズは、最近出会った中では珍しく最初だけ面白い尻窄み作品に該当しない作品のようだ。
レビューで絶賛されているのに釣られつい大人買いしてしまい、最初は良くても巻が進むにつれ面白さが減っていき大人買いを後悔する、というパターンが続いていたので嬉しい限り。

『ハイペリオン』の続編。と言うより、『ハイペリオンの没落』でもって初めて物語が完結するので、実質一作品だ。
『ハイペリオン』は巡礼者が一人一人物語を語るオムニバスのような作りだったが、本作ではそれをベースに前作では背景だった現在の時間軸でのストーリーが大きく動き出す。
『ハイペリオン』で別々に語られた物語が同じ世界の中で重なり合っていき、相互の関連が判明していく構成は、よく考えられているなあと素直に感心する。伏線回収と言ってもいいかもしれない。本作を読み終え、もう一度前作を読み返し細々とした部分を確認したくなる。

惜しむらくは、結局シュライク:苦悩の神とは何だったのか、ソルとサライが見た夢はどんな意味があったのか、なぜシュライクはレイチェルを連れて行ったのか、カッサードの前でモニータがシュライクに変貌したのは何故か、今一つ判然としなかったこと。前作では緻密な引用でそのよく練られた作り込みに感嘆したが、今作は広げた風呂敷の回収に若干の杜撰さを感じてしまった。
それとやはりカッサードのカルマが、自分的には、他の巡礼者が背負っているものから若干見劣りしてしまうのだよな。前作ではそういうのもあっていいかな、と思ったのだが。
さらに書くと、中でサイリーナスだったか誰だったかも言っていたが、一人また一人といなくなるのが何となく。物語上必要だったんだろうけれど。
そんなこんなで★3

また、これは多くの読者もそうだったのではと想像するが、途中でモニータ=レイチェルであること、敵はコア、というクライマックスはなんとなくわかってしまった。
それも残念。
まあこれは作者のせいではないだろうな。メタ的視点をつい持ってしまう自分が悪い。

続編は、多分読む。
ネガティブなことも書いたが、トータルとしては面白く密度の高い物語であることは間違いがない。

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2024年06月30日

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