あらすじ
わたしは「みんな」を信じない、だからあんたと一緒にいる――。足の不自由な恵美ちゃんと病気がちな由香ちゃんは、ある事件がきっかけでクラスのだれとも付き合わなくなった。学校の人気者、ブンちゃんは、デキる転校生、モトくんのことが何となく面白くない……。優等生にひねた奴。弱虫に八方美人。それぞれの物語がちりばめられた、「友だち」のほんとうの意味をさがす連作長編。
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Posted by ブクログ
短編連作で物語の中心になる恵美ちゃんから展開していく。松葉杖の恵美ちゃんと腎臓の悪い由香ちゃんはある時から一緒に行動する。性格も考え方も違うけど、2人には穏やかな時間が流れて、素敵な関係だった。短編では親友のブンとモト、八方美人な堀田ちゃんなど様々な友達関係があり、「みんな」は恵美ちゃんから大事なことを教えてもらう。特に印象的だったのはブンとモトの話。小学生・中学生時代の話も好きだった。本を通して、本当の友達や大事にすべきことを考えさせられた。大人になっても「みんな」に縛られている人は多い気がする。
Posted by ブクログ
作家さんのお名前は以前からお勧めサイトなどでちらちら見ていた。
「泣けるお話」探しをしてて、同僚にお勧めされて本書を手にとりました。
今まで「泣けるお話」を探していて、あまりピンとこなかったのですが、本書は…泣けました!!!
一番泣けるシーン(由香ちゃんがなくなったと恵美ちゃんが感じるところ)を電車の中で読んでしまったせいで、理性が働いてしまい、こらえてしまったのですが…。
お勧めしてくれた方は「娘に読ませたくて買った本なんだよね」とおっしゃっていたんですが、(気持ちはめちゃくちゃわかる。思春期の学校という狭い場所でなんとか生きなくちゃならないときの辛さを和らげる手助けになればと思う)やっぱり、このお話が納得いくようになるのは、外の世界を知って、体感・実感してからかな~とも思った。
あと、恵美ちゃんが「今、由香ちゃんが逝ってしまった」って思った時には実はもうとっくに亡くなってて。
でも、みんなが少しずつ由香ちゃんの事を語りにくるっていう奇跡のような偶然は嘘じゃなくて…という展開がとてもよかった。
由香ちゃんが亡くなるところで終わるんじゃなくて、大人になった(現在に戻ってきた)ところまで物語が語られたところも好き。(人によっては蛇足に感じるかもだけど…。)
Posted by ブクログ
交通事故で足が不自由な恵美とその友だちの生まれつき身体の弱い由香、恵美の弟のブンを中心に、それぞれの周りの「友だち」で悩む人たちに焦点を当てたそれぞれの物語の連作短編集。
最初は小学生から始まり、中学生、大人へと時間が進んでいく形になっており、年齢が進むにつれ、児童小説からティーン小説に変わっていくのが読んでいて面白かった。
視点が恵美の結婚相手となるルポライターとなっているため、子育て日記を読んでいるような少し俯瞰気味な視点となっていた。そのため、感情移入はするものの、どこか昔の遠い話のような雰囲気が常に漂っており、歴史の教科書を読んでいるように感じた。また、恵美のやや冷たいともとれる態度がブンたち年下の子たちから見ると、クールに格好よく見えるのは不思議だった。
とかく、同じ年の人たちが集められた学校という場所では、どうしても周りとの比較が発生してしまい、その中でどう優位に立つか、馴染んでいくかが重要なように思ってしまいがちではある。けれど、本当に大切なことはただ一つだけであることを恵美が気付き、「みんな」から脱して、例え他の人より輝くところが見つからないとしても、それぞれの「もこもこ雲」を探す話だったと思う。
個人的には、「ふらふら」の章が好きだった。小学生の時に恵美と由香をいじめていた子の太鼓持ちをしていた子は、中学生になると、周りの目を気にする八方美人になっていた。そのせいで、良かれと思ってやったことが裏目になり、いじめの標的になってしまった。生き方に悩む時に二人と話す機会があり、自分のしたいことを持とうと変わっていこうとする。いじめは、すぐにくだらない理由で別の子へ標的が移っていくが、皆と一緒になって標的を相手にせず、ささやかな自分の意志で反撃を行う。変わろうと思ってもすぐには変われない部分もありつつ、それでも自分なりに良い方向へ向かおうと努力をし始めるところが好きだった。