あらすじ
医学的に脳死と診断されながら、月明かりの夜に限り、特殊な装置を使って言葉を話すことのできる少女・葉月。生きることも死ぬこともできない、残酷すぎる運命に囚われた彼女が望んだのは、自らの臓器を、移植を必要としている人々に分け与えることだった――。透明感あふれる筆致で生と死の狭間を描いた、ファンタジックな寓話ミステリ。第22回横溝正史ミステリ大賞受賞作。
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Posted by ブクログ
10数年ぶりの再読。
あらすじを見ると暴走族の元リーダーと脳死状態の女の子の交流、、、イロモノのように聞こえる。しかし読んでみると淡々とした文体で、惹き込まれた。
以前読んだ時は代理ミュンヒハウゼン症候群の話が記憶に残っていた。今回読んでみると第4幕の心臓病の元教師の話が、この教師と奥さんの心理描写に共感したせいか、一番心に響いた。
最後が少し安易かなーと思ったが、主人公の辛かったこれまでを考えると、最後くらいご都合主義でもいいじゃない、とも思う。
Posted by ブクログ
幸福な王子をモチーフとしたメーンストーリー。発想は素晴らしいです、肉付けの短篇も様々な人間性を醸し出す。でも伏線の回収悪さはどうも腑に落ちないです。オープン式なラストに引き出されたのも余韻ではなく、モヤ感だけね...
Posted by ブクログ
初野晴デビュー作。これで横溝正史ミステリ大賞を受賞したそうだ。面白かった。ちょっとメルヘンチックな感じで書かれているけど、よく考えれば気持ち悪いとも思える。角膜から皮膚から内臓から、葉月の体からはひとつひとつなくなっていくのだ。そして昴はそれを見ていくのだ。自分と同じような境遇。好きになった男にそんな姿を見せるのは葉月だって嫌だったろう。お兄ちゃんがこれからどうなっていくのか、知りたかったな。室井は今どうしているんだろう。って、あれ、死んだんだっけ?何かいろんな話が折り重なってて、虐待といい、臓器売買といい、ガンの告知問題といい、一つ一つ切ないし、面白いんだけど、ごっちゃになっちゃう感じ。細切れで読んだからか。最後、主要参考文献の「新潮45 誘拐少女を生体解剖する驚愕の『臓器ビジネス』」ってのが、非常に気になる。
Posted by ブクログ
連作短編集のような1個1個独立しているように見えて最後は全てつながって収束していくようなお話だった
水の時計というファンタジー要素もあり最後まで読まないと真相が分からないので正直分かりやすい話ではないが臓器提供を待つ患者や周りの家族の人生を淡々と描いている
移植とは生死とは人間の尊厳とは
脳死患者本人の意思を優先したくても実際には家族の意思が優先されることが多いのだろう
重たく難解なテーマだが面白かった
中学生の昴に救いがありそうなのに完全には救われず、万引きにしても叱るでもなく相談に乗るでもなく金目のものを置いている事と兄への見舞いという理由から同情され見逃される
葉月を死に追いやったのも仲間のせい
葉月も葉月で未成年のため倫理観、責任問題などから移植手術を拒まれ母を救えず父は死後にのこのこ現れ脳死の娘だけ本人の意思を無視して延命
手が届きそうで届かない現実がもの悲しかった
昴には自暴自棄になった落ち度はあるので被害者とは言いがたいが子供のうちに守られて軌道修正できていればと思ってしまう
最後には2人とも救われていたと思いたい
Posted by ブクログ
高村昴
暴走族『ルート・ゼロ』の幹部。
芥圭一郎
元新聞記者の医者。
葉月
脳死状態で閉鎖された南丘聖隷病院にいる。
中谷
昴の二つ年下。原付ばかりよく盗む。
高階稔
ルート・ゼロの幹部。広域指定暴力団の傘下の美緒興産とつながっている。
室井広志
ルート・ゼロの幹部。
室井可奈
室井広志の妹。
堀池
生活安全課の巡査部長。
澤登
医者。四十代半ばぐらい。
須藤貴子
北陽高校バレー部。神社で喧嘩を目撃する。
玲子
貴子の育ての母親。
さなえ
貴子の妹。入院している。
美和子
貴子のクラスメイト。
苅谷
バレー部顧問。一年の保健体育を受け持つ学年主任。軍曹。
仁村
さなえの担当医師。
笠原克也
小さな出版社を辞めた。フリーの編集&ライター。
仲西聡美
三十三歳。文房具を扱う商社の事務職。慢性腎不全。
丘本
斡旋業者。
由比忠彦
腎臓移植斡旋詐欺で刑事告発された「トーワ・コーポレーションを事件発覚直前に退社。高村の上司。
高村誠
笠原とは大学時代の同期。トーワ・コーポレーションに入社。志村病院精神科分室療養所に入院している。
ムロイ
高村誠の隣の部屋に入っている。交通事故を起こした。
森尾哲朗
冠状動脈硬化症。
レン
カンボジアの女の子。十一歳。
律子
森尾の妻。
香織
二十五歳。律子の遠縁。
牧村
警察。
境大助
境フラワーショップ主人。堀池とは小学校のときの同級生。
下妻加世子
三十六歳。急性リンパ性白血病。