あらすじ
一枚食べたらもう引きかえせないからね――。小説家の〈私〉は未施錠の多目的トイレで本のページを貪り喰う女を目撃する。女の警告に挑むかのように、私は蔵書を手に取り……(「食書」)。一泊二日で十万円。三十三歳、無職の〈私〉は怪しげな仕事を請け負う。他言無用の宗教儀式、そこには長い黒髪の女ばかりが集まっていた(「髪禍」)。人生を逸脱することの恐怖と恍惚に、極限まで踏み込む七編。(解説・大森望)
...続きを読む感情タグBEST3
Posted by ブクログ
どの短編も表現技法が丁寧で洗練されており、読んでいて非常に心地よかった。物語を書くということに真摯に向き合う著者の姿勢が透けて見えるような、とかくすると狂気をも感じさせる文章であった。
中でも印象的だったのは「食書」で、久々に脳天をガツンとやられたし、読み終えてまさしく呆然とした。読書は好きだけど、多少なりとも倦んでいるような本読みにこそ、読んでもらいたい作品。正直、この「食書」だけで⭐︎5をつけちゃうね。
Posted by ブクログ
口から、耳から、鼻から怪異が侵入する奇抜な発想の短編が七編収録されていて、人体のパーツが怪異の呼び水に変貌する流れとそれに飲み込まれていく人々が圧巻の筆致で描写されていた。まさに怪奇幻想の極致とも言うべき作品だった。
Posted by ブクログ
小田雅久仁『禍』新潮文庫。
『このホラーがすごい! 2024年版』で、国内編第1位を獲得した7編収録のホラー短編集。
小田雅久仁の作品を読むのは『本にだって雄と雌があります』『残月記』に次いで3作目である。『本にだって雄と雌があります』は一種の幻想小説で、『残月記』はSF小説であったが、この『禍』はホラー小説というから、小田雅久仁は都度都度スタイルを変える忙しい作家のようだ。
最近はホラー小説ブームなのか雨穴の『変な家』のようなモキュメンタリー小説や角川ホラー文庫で次々と刊行される正統派ホラー小説などが目に付くようだ。本作を読み、『このホラーがすごい! 2024年版』で、国内編第1位を獲得というのはどうにも納得出来なかった。
『食書』。書けなくなった小説家が何時しか現実と夢の中の世界を行き来し、その境目が解らなくなってしまうという恐怖。
小説家である主人公は書店の未施錠だった多目的トイレのドアを開けると、本のページを貪り喰う女の姿を目撃する。女は“一枚食べたら引き返せないからね”という言葉を残し、立ち去った。女が本のページを貪り喰う姿を思い出した小説家は蔵書の中から1冊を取り出し、『魔女』という中編小説の1ページを食べてみる。
夢とは不思議なもので、過去の体験や本やテレビで見聞きしたものや願望や創作などが入り交じり、あり得ない世界を見せてくれる。昨夜、自分が見た夢は関東の何処かの街で小さな本屋に行った帰りに菓子と飲み物を買い、何故か知人と小さな小屋みたいな所で飲み食いしているとヒグマが窓を開けて侵入しようとするので、それを阻止しようとする変な夢だった。登場する本屋は、その昔、3ヶ月ほど長期滞在した成田の駅前にあった小さな本屋みたいな感じだったし、ヒグマの顔は飼い猫にも似ていたように思う。
『耳もぐり』。話はあちらこちらと脱線しながら、少しずつ『耳もぐり』について明かされていく。奇妙な話ではあるが、怖くはないし、結末も予想の範疇だった。
『喪色記』。幻想的な話ではあるが、怖くも面白くもない。このレベルで『このホラーがすごい! 2024年版』の国内編第1位を獲得したのかという疑問ばかりが頭の中を渦巻く。
『柔らかなところへ帰る』。痩せた妻と暮らす男がバスの中で出会った太った女に欲情し、淫らな妄想を抱くという話。
『農場』。読む前にこのタイトルから想像するに、人間が家畜のように農場で飼育されるという内容ではなかろうか。
予想は遠からず近からずの正解で、ハナバエという人間の鼻を栽培する農場の話であった。余りにも異様な話なので想像が付かず、怖さは感じなかった。
『髪禍』。一泊二日で10万円という破格であるが、怪しげな仕事を請負った33歳の無職の女性が、仕事先に向かうと他言無用の宗教儀式であった。そこには長い黒髪の女性ばかりが集まっていた。
今ひとつ。
『裸婦と裸夫』。『現代の裸婦展』を請負った観に行こうとした男性が電車に乗ると、裸の男が現れ、次々と裸になる乗客が現れるという、スプラスティック小説。
筒井康隆の小説のような振り切った感が無い。
本体価格800円
★★★
Posted by ブクログ
数年前に『このホラーがすごい!』で総なめに評価されていた本。気になっていたけど、単行本を読めず今頃文庫本を手に取りました。
ジャンルは、純粋な"ホラー"というより"怪奇物語"や"異形物語"かなと思いました。
(文庫解説が大森望さんがしているし…)
人間の〈からだ〉のパーツをモチーフにした話。
2011年から2022年まで10年かけて書いた作品をまとめた本だったことには驚いた。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
個人的には『農場』の世界観がディストピアっぽくて好きでした。(村田さやかさん好きな人は好みそう)『耳もぐり』『食書』も独特で面白かった。
ただ、エロい方にシフトした作品は下品で好きじゃなかった。
『柔らかなところへ帰る』『裸婦と裸夫』
『喪色記』は2回読んでも理解が足りず、よく分からなかった。いろいろな作品を彷彿させる。
パラレルワールドの世界ということかな?
『髪禍』は宗教集団×謎の儀式。
気持ち悪いは気持ち悪いけど、期待しすぎたせいかそこまでじゃなかった。髪の毛を食べるとかは普通レベル。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
◆2011~2022年
「耳もぐり」小説新潮2011年9月号
「食書」小説新潮2013年9月号
「柔らかなところへ帰る」小説新潮2014年3月号
「農場」小説新潮2014年11月号
「髪禍」小説新潮2017年6月号
「裸婦と裸夫」小説新潮2021年12月号
「喪色記」2022年8月号「灰色の獣たち」改題