あらすじ
日本を代表する経済人・松下幸之助氏と、創価学会名誉会長・池田大作氏との往復書簡集『人生問答』(聖教文庫)のデジタル版(原著は1975年発刊)。松下氏は、松下電器産業(現在のパナソニック)の創業者で、スケールの大きな社会活動家(1989年逝去)。池田氏は世界的な仏法指導者で、創価学園、創価大学、民主音楽協会、東京富士美術館等を創立している。両者の語らいは、真摯に縦横に、そして温かな友情の音律をたたえて進んでいく。下巻では、「何のための教育か」「現代文明への反省」「日本の進路」「世界平和のために」が収録されている。
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Posted by ブクログ
下巻は、教育の在り方から、世界平和についてまで、大きなテーマで語り合いが進められる。下巻の内容もまた、当時の対談から50年を経た今でも、読者に十分な示唆を与えてくれるものとなっている。
最初の教育については、「知識偏重型教育から人間教育へ」と両者がともに訴えておられるが、これは当時よりさらにその重要性が増しているのではないか。
本書の「教育と犯罪」について語られている部分に、「知識教育だけで人間教育がなされなければ、犯罪も知能的になり、増加するのは当然」と警告しているが、その現象が加速しているのではないかと感じる。
犯罪の内容が無節操となり、しかも巧妙化している。「高等学校の試験に、学科試験だけでなく、人間的良識の査定も含めて合否を決定してはどうか」との意見は非常に現実的な発想だなと感じた。
もう一点、「子どもが親の所有物ではない」という意見は痛烈かつ、現代最も再認識すべき、考え方ではないかと感じた。
「現代文明への反省」の章で述べられている「反省」は現在も継続的に求められるものが多い。当時は、公害が問題であったが、環境問題や資源の枯渇問題などは、さらに環境悪化、温暖化や生態系の変化が起こっているだけでなく、原発事故などで当時の問題がさらに肥大化していると思える。
当時はTVによる映像文化が盛んになってきた時代で、TVの問題としては、視聴率にとらわれた番組内容の低俗化などによる悪影響が取り上げられていたが、現代はさらに映像の手段がYouTubeなど、個人発信の時代となり、フェイク情報なども含め、問題はさらに複雑化してきているようにも思える。
本書は、このように現代社会を再チェックすべき視点を示してくれているのである。
次章では、日本の性質や特性を振り返りながら、世界の中での日本の役割を考えたり、日本の憲法や天皇制などについて、深く検討し語り合われている。
最終章では、世界の平和について語られているが、その中で「世界語は必要か」という話があった。世界共通語があるとコミュニケーションが効率的になりよいが、反面各国の精神文化が衰退しないように母国後と併用するほうがよいという語りになっていた。
そして、現在どうなっているかというと、いまは自動翻訳というものができてきた。違った形でコミュニケーションの効率化が図られながら、各国の精神文化が維持できているなと感じ、人類の知恵は素晴らしいなと思う。
当時の課題がどのように現代解決されているかという視点でも、非常に興味深く読める書でありました。
下巻目次
◆「8何のための教育か」
※教育の目的 義務教育の基本的理念 教育の改善すべき点 学問のための学問では ほか
◆「9現代文明への反省」
※科学の進歩に欠落していたもの 科学の発展にともなう矛盾 心の豊かさを生みだすには 新しい学問創造の指標 ほか
◆「10日本の進路」
※どこに発展の基盤をおくか 国家目標の設定 国としての命運 世界に対して担う役割 ほか
◆「11 世界平和のために」
※真の世界平和とは 人類の平和を築く道 世界平和を目指す実践 平和というものの姿 ほか