あらすじ
世界にはなぜ豊かな国と貧しい国が存在するのか?
『銃・病原菌・鉄』のジャレド・ダイアモンド、ノーベル経済学賞の歴代受賞者が絶賛する全米ベストセラー!
《ワシントン・ポスト》《エコノミスト》《フィナンシャル・タイムズ》各紙誌の年間ベストブックに選出!
下巻には坂本龍馬や大久保利通も登場。
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Posted by ブクログ
世界にはなぜ豊かな国と貧しい国が存在するのか、本書は、政治・経済上の「制度」による違いがその理由であることを古代ローマから、マヤの都市国家、中世ヴェネツィア、名誉革命期のイングランド、幕末・明治期の日本、ソ連、ラテンアメリカとアフリカ諸国、現在の中国といった広範な事例を用いて説明するもの。
これからの日本を考えると、既得権益に縛られずに、世の中のニーズに応じた創造的な技術・仕組み・取組みが自由活発に進められる社会により良く変えていくことが重要で、政治・行政としてもその基盤を作ったり、後押しすることが役割になろうと感じました。
今後の日本、また世界を考えていく上で必読の良書です。ちなみに、筆者は同じヨーク大学・LSE出身の政治経済学者で親近感があります。
【ポイント】
・豊かな国には自由で公平、開放的な経済制度があり、技術革新・創造的破壊による持続的な発展のインセンティブがある(一方で、権力者が国家を食い物にして民衆から収奪する仕組みあり)。また、法の支配、民主主義、多元主義といった政治的基盤がそれを支えている。
・日本の明治維新とその後の経済発展は、イギリス名誉革命、フランス革命と並んで偶然性も相まった稀有の出来事。
・現在の中国の急速な発展も、既存技術の導入などに留まっており限定的で、政治的な開放がなされていない統制的な経済制度では、長続きしないのが歴史的な必然。
・あくまで制度という人間によって左右できるものが主要因であることは楽観的、一方で、人の問題であるがゆえ一度形作られた制度は硬直的でなかなか変わらないことは悲観的(奴隷制、植民地時代の制度が未だに残っているアフリカ、南米など)。
・これまでの国際機関や開発機関による「開発援助」は往々にして途上国の時の権力者を肥太らせ、また国際機関から現場に至るまでに幾重にもピンはねされるために、真の援助が必要な大衆には届かず、必要な制度を作るにも至っていないのが現状。一方で、何もしないよりは何かした方がマシなのも事実。
Posted by ブクログ
長期的な経済発展は、地理的、環境条件、社会学的要因、文化の違い、生物学的遺伝的差異でもなく、政治・経済制度の違いにある。
包括的な政治制度と包括的な経済制度の組み合わせが必要。収奪的政治制度と包括的経済制度ではだめ。新自由主義は、その見本。
収奪的政治制度のもとでは、破壊的イノベーションは起きても潰されやすい。既得権益を守るため。規制緩和は限界をむかえる。
中国のような収奪的政治制度のもとでは、経済の自由度が高まっても破壊的イノベーションは起きにくいので、経済成長は持続しない。
収奪的政治制度がデフォルト。
長期的には、自由民主政治と資本主義は不可分。格差があっても、経済強者の交代可能性が必要。
中国とアフリカは、短期的には高度成長しているが、どちらも収奪的政治制度をとっているため、危うい。
アフリカ経済のネックはガバナンスにあると言われ続けているが、修正がきかない。