あらすじ
人生はずっと続くから。
つかの間の休息を。
山のふもとに立つ「ペンション・ワケアッテ」。タクシー運転手によると、「ワケアリ」のオーナーが経営しているらしい。不安や秘密を抱えながらペンションを訪れる人々だったが、大自然に囲まれた静けさの中、本当の自分の気持ちに気が付き、明日への一歩を踏み出していく。
あくせくした毎日から抜け出し、「今」を生きる大切さを噛みしめたくなる、温かな連作短編集。
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Posted by ブクログ
読み終えて、心がホッとする物語でとても好きだと感じました。
自分の過去を受け止めているからこそ、
今悩んでいる人たちに向き合える楓。
ペンション・ワケアッテにくるお客様たちの心をほぐし、スッと軽くしてくれる。
そしてそんなお客様を通して、
楓も自分の過去を受け止めたままではなく
前に進もうとする姿に心惹かれました。
また、勝一の博識さが個人的には面白かったです。基本的にはお客様視点の物語でしたが、
勝一視点の物語も読んでみたいなと思いました。
宿泊されたお客様から、お手紙が届く宿。
それだけできっと素敵な宿だなと思います。
ペンション・ワケアッテに私も泊まりたいです。
余談ですがペンション・ワケアッテのイントネーションが気になりました。
本来の意味通り分け合ってなのか、
訳あってなのか…………?
Posted by ブクログ
「自分と向き合い、同じ時代を「分け合う」喜び」
日々の慌ただしさに追われていた私が、2か月振りに手にしたのが『ペンション・ワケアッテ』だった。ページをめくるうちに、ちょうど一年前に読んだカルステン・ヘン著『本と歩く人』の物語を思わせるような、静かで暖かい雰囲気に包まれ、凝り固まっていた心がじんわりとほぐれていくのを感じた。
本書を通じて私の琴線に深く触れたのは、全編に溢れる「分け合う」という言葉だった。
振り返れば、私のこれまでの歩みも、多くの人との「分かち合い」に支えられていた。話を聞いてもらったり、近況報告、愚痴会、ご飯会。今まで関わってきた人たちが、限りある時間の中で私のために時間を作ってくれた。自分がどう思っているかを他者と共有するだけで、人間はこんなにも楽になり、生きやすくなる。人はやっぱり一人では生きづらいのだと、過去の温かい思い出が次々と蘇ってきた。
本書のタイトルは『ペンション・ワケアッテ』。その名の通り、他者と何かを「分け合う」ことの温かさが大きなテーマとして描かれている。しかし、誰かと心を通わせ、温かさを分け合うためには、まず自分自身と向き合い、心の器を整えておくことが大切なのだと、作中の登場人物たちの姿が教えてくれた。
物語の登場人物たちは、虚栄心や恐怖、思い込みや焦り、むなしさといったネガティブな思考を抱えたままペンションへ向かう。そんな彼らが、ペンションで意図的にボーッとする時間を作り、思考を黙らせて自分を俯瞰していく。そうしてガチガチになった心と思考をほぐし、「自分と向き合う時間」を取り戻していく。
自分を俯瞰する時間を作るからこそ、他者への感謝や敬意をまっすぐに「分け合う」ことができる。登場人物たちが変化していく姿を見て、私は気づかされた。
心に余裕が生まれたからこそ、こうして再び本を開き、大切なことに気づくことができた。2ヶ月振りの読書が本書で良かったと思う。これからも読書時間を増やし、この著者の他の作品にも触れてみたい。
本書は、自分を見つめ直し、他者と生きることを愛おしむ大切さを教えてくれた。