あらすじ
高校時代の同級生五人――三十代後半になった彼らの人生は、一人の自死をきっかけにして、さまざまな挫折や変貌や再出発を強いられていく。宗教二世、小説家、主婦等々、五人それぞれの生きることの迷いと歓びと傷、そして再生への切なる希望を深い声で語り、無常観の果てにある祈りの旋律が鳴り響く著者真骨頂の感動作!
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Posted by ブクログ
【あらすじ】
夜の底は、いつもあなたの香りがするから。
いくつもの悔恨と、ささやかな光を抱えて僕は。
高校の同級生五人、四十歳目前になった彼らの人生は、ひとりの自死をきっかけにして、さまざまな挫折や変貌や再出発を強いられていく——。
宗教二世、小説家、主婦等々、五人それぞれの生きることの迷いと歓びと傷、そして再生への切なる希望を深い声で語る。
『女性にとって、妊娠や出産や子育てがどんな重さを伴うのか、自分は知ろうともしなかった。それは漠然と喜ばしいことなのだ、と思いこんでいた。』
「この世に生まれてきたとしても苦しみしかない。そんな人生を負わせたくはない」
『日本の未来は暗いし、台風は必ず東京を直撃するし、大地震は間違いなく起こる、自分が子どもを産めばなんらかのトラブルが起こる・・・・・・。心がニュートラルな状態にある人間にとっては笑い話になってしまうほど、菜乃子の心は悲観的であらゆることに怯えていた。』
「・・・・死にたい気持ちがあっても別に死ななくてもいいんだよ。....死にたいって思うことは、お菓子が食べたいとか、水がのみたいとか、そういう気持ちのひとつでしかない。その気持ちを特別な感情だと思わなくていい。呼吸をして、それが過ぎ去るのをただじっと待つんだ。死にたい気持ちと闘わなくていい。死にたい気持ちを抱えて生きていくのは、ちっともおかしなことじゃないから」
【個人的な感想】
安定の窪さんの世界観。
好きだな〜と思いながら最後まで一気に読んだ。
菜乃子の子供を産むことに対する考え方が、すごく自分と近くで「わかる〜、、、」と思いながら読んだ。
でも、最後は別に特別なことを成し遂げなくてもそれなりに生きていけばいいんだと思わせてくれた作品。
Posted by ブクログ
学生時代から仲の良い5人の男女のグループのお話。
中心になる美少女はクラスの友達に相談ごとをよく聞かされる。そんな人気者の彼女なのに暗い闇を抱えている。
彼女が闇に引き摺り込まれないように周りの者は気を使うけれど…。
最後の章で彼女は生きることの意味、死んだことの意味を知る。
もっともっと早くにわかっていれば…。
いやいや、時が経ってからわかることもあるのかもしれないね。
5人の愛情と友情、生きることの意味を知る物語りでした。
(Word)
なんだって私は自分以外の誰かに認められなければいけないと思い続けてきたのか。(中略)人間はこの老いた達也のように、そこにただいるだけで十分なのだとやっと気づいた。
Posted by ブクログ
読み終わって、涙が溢れてきた。
なんだか暗くて重い話だなぁと思いながら読んでいたのだけど、ただの暗い話ではなかった。
最後は希望につながっていた。
自死した菜乃子が、死んでやっと気づいた書きたかった小説。
死にたい気持ちに寄り添う文章だけじゃなく、私のような人間がもう一度、生きてみようと思える文章。
この本は菜乃子が書きたかった小説そのものなんだろうなと思った。
Posted by ブクログ
全体的に面白いんだけどあまり救いがないな…と読み進め、最後の死んだ菜乃子の章の達也の言葉がすごく良かった。私もなんとなく死にたいな消えちゃいたいなと思ってしまう人生を今も生きているから。
ーー死にたい気持ちがあっても別に死ななくていいんだよ。死にたいって思うことは、お菓子が食べたいとか、水がのみたいとか、そうあう気持ちのひとつでしかない。その気持ちを特別な感情だと思わなくていい。
死にたい気持ちと闘わなくていい。死にたい気持ちを抱えて生きていくのは、ちっともおかしなことじゃないから
つい数日前に心療内科で、死にたいと思わないことがない人生なのはおかしいですかね、と先生に聞いたばかりで、その答えをもらえた気がして、それだけでこの本にあえて嬉しいなと思えた。
Posted by ブクログ
どうして自殺したのか分からない同級生の死を境に、それぞれ仲良しだった人々が自分を見つめ、日々を歩き出す。何故⁇どうして⁇な問いが人生には溢れているのかも。
Posted by ブクログ
高校時代の5人グループの中心にいた菜乃子の30代後半での自死。憔悴する配偶者の達也だけでなく、生き方に迷いのあった残る3人にもそれぞれに影響を与えていく。
自責の念で生き続ける達也、宗教をめぐる健太の生き方など、苦しみを引き受けながら人生を進む姿に胸を打たれるが、最後は、菜乃子の成長物語に。
自分のことを思っている人と寄り添うことで、あるべき生き方に気づくこと。また、菜乃子の死が倫子の小説を生み、それで救われる命があったこと。
菜乃子からは安堵と感謝の言葉が語られる。一方で、後悔の気持ちは振り払われているかのよう。
これがいい話となってしまうと「自死は残された人の気持を考えればあってはならない」と考えてきた私の信念が揺さぶられてしまいそうだが、人の気持ちは「べき論」で語るほど浅薄なものではないし、揺さぶられるのも小説なのかな。
それでも、これは菜乃子なりの葛藤を乗り越えたうえでの結論なのだと思いたい。残された達也の気持ちを考えればこそ。
Posted by ブクログ
大切な人の死は悲しい。思い出の中には後悔もあり、感謝もある。どんな死でも生きていたこと出会ったことに意味を求めて生きている者に影響を与え続ける。ということなのかな。
Posted by ブクログ
人生の中盤だからこそ、同年代には響くものがあると思う。
高校時代の同級生5人が30代後半になり1一人の自死によって様々な葛藤に悩まされる。姿を各々で語られる短編集。
30代後半は僕の中では人生で色々なイベントが起きる時期だと考えていました。
また、自分自身ももうすぐ30代後半なので、この小説からたくさんの人ことが学べると思い読みました。
一人の死が周りに与える影響力に驚きました。
生きる気力を無くしたり、逆に糧にしたりとその物事で捉える形が違うのだと感じます。
また、当時では語られなかったことを心に秘めて生きていたり。
人はいろいろなことを抱えて生きているのかも知れませんね。
人は生きることが価値ではなく。その場にいるのに価値があるのだと感じることができた気もします。
Posted by ブクログ
恩田陸さんの「黒と茶の幻想」が大好きで、それぞれの目線で語られる、長い関係の男女4人の物語という共通点にまず、心が躍った。最後の答え合わせのような菜乃子の章があったのもよかった。
誰かの目線で語られるその人と、その人自身の語りから受ける印象が違いすぎて、その相違点が興味深くおもしろい。
登場人物たちの人生には、それぞれ苦しみや迷いがある。それでも、その人生の中に確かに存在した一瞬の、儚くも美しい輝きが描かれていて、その光景が読後も静かに心に残り続けている。
Posted by ブクログ
高校時代、いつも行動を共にしていた菜乃子、達也、健太、沙耶、倫子。菜乃子の自死をきっかけに、それぞれの関係と思いが順に語られた小説でした。
月日が経つと環境が変わっていき、様々な経験を積み重ね、考え方が変わっていきます。そのなかでのそれぞれの上っ面だけでなく、人間の本能や心の奥底までをえがきだしていました。
分かりあえない親子、宗教二世、結婚への執着、同性愛、才能への嫉妬などが複雑にからんでいて、一気に読んでしまいました。
一番印象に残ったのは、最後の章です。死にたかった菜乃子が、自分を思い出してくれる4人の生きざまを見て思う事が、綴られていました。
救われた思いで読み終えられたことが、とてもよかったと思えた小説でした。
〈目次〉
窓辺の夕餉
野辺の送り
空夜
柘榴色の雪
芍薬の星月夜
Posted by ブクログ
菜乃子、達也、健太、倫子、沙耶。
高校の同級生の彼らはいつも5人でいた。
ずっとその関係が続いていた彼らだったが、
グループの中心的存在だった菜乃子が自死し、
そのバランスが崩れてしまう。
5人それぞれの複雑な関係性に驚く。
ああ、実はそうだったんだなと。
彼らの恋愛感情が、なかなか複雑。
一見、仲が良さそうな5人だが、内側には
ドロドロした物を抱えており、お互いを
肯定しているわけではないところが、
なかなか面白い。残された者たちが
菜乃子の死を、どう乗り越えていくのか。
倫子は作家として活躍し、沙耶は結婚して
子どもを産み育てる。さて、男性陣はというと、
達也は菜乃子の死を受け入れることが出来ないまま生きていく選択をし、健太は母親が入信し、
拒絶していた宗教の教祖となっていた(なぜ?)
最終話の、亡くなっている菜乃子の語りが
謎だったが、美しく、憧れられていた彼女の
内側にも、色々と思うところがあったのだと
分かる。
彼女が愛した芍薬の咲く季節に、彼女が成仏
していく描写がとても美しかった。
「死にたい気持ちと闘わなくていい。
死にたい気持ちを抱えて生きていくのは、
ちっともおかしなことじゃないから」
最後の達也の言葉が胸に残る。
決して明るくはないストーリーだが
印象に残る物語だった。
Posted by ブクログ
高校の同級生5人のうち、40代を前にした1人の自死。それをきっかけに浮き彫りになる、複雑な人間関係とそれぞれの本音。歳を重ねたからこそ、一筋縄ではいかない関係性が描かれている。
ラスト数ページ、同じような気持ちを抱えている人には何かしら刺さるものがあるのでは。
Posted by ブクログ
高校の同級生5人組の中心的存在だった菜乃子が自死した。5人の繋がりは仲良しグループと言うには不均衡で、下に見ていたり苦手意識があったり。恋愛感情も存在するが、菜乃子と達也の2人以外は成立せず。それでも卒後社会人となってからも5人の関係は、徐々に薄れつつも続いている。
菜乃子の死は生きる4人それぞれの人生を大きく、あるいは少しずつ変えてゆく。達也はそれまで全ての人生をいったんリセットし、その後も生涯菜乃子からの解放を拒む。健太の選択はただただ謎。猫を捨てたくせに。この男性2人に対し、主婦となって子供を育てる沙耶、作家として活躍する倫子。後進のサポートをする倫子はとてもカッコいい。女性2人には前進する強さが感じられ、男性2人とは対照的だ。
最終話は菜乃子が語り手となる。いきなりファンタジーになるのかと思って身構えてしまったが、ここで初めて菜乃子の内面が語られる。この形でなければ伝えられないことなのかもしれない。5人の中心だったはずの菜乃子のことを、他の誰一人として知らなかった。そしてその後の4人の人生についても、菜乃子の視点から語られる。
物語全体が、水に白い絵の具を落としたように、白く霞んで、輪郭が曖昧だ。霞の中は静謐でどこか温かい。不思議と暗い印象はなかった。
Posted by ブクログ
はじめましての窪美澄さん
装幀と表題のイメージ通り、静かな雪の夜を一人孤独に歩くように、5人の登場人物達がそれぞれの人生を語る連作短編集。
つい最近、多くのお宅の庭で芍薬の花が美しい姿を見せてくれたばかり。
芍薬を愛する菜乃子がその花の咲く季節にこの世を去り、数十年後の芍薬の咲く季節に成仏するまでが描かれている。
芍薬という花を軸にした時間の流れや、様々な表現の美しさが心地よく、文学の味わいを感じる。
テーマは菜乃子の自死であり、周りの人々の後悔や不安、密かな悩みや秘密が語られる。
人の悩みなど、想像以上であることもあるし、その逆もある。
それでも当事者にとっては死を考える程であることもあるのだと改めて知る。
それでも若い頃の悩みの多くは、歳を重ね、さらに大きな悩みができることで消化されていくのだろう…
老いた達也が若い子と菜乃子へ語る言葉がいい。
「…死にたい気持ちがあっても別に死ななくてもいいんだよ。…死にたいって思うことは、お菓子が食べたいとか、水が飲みたいとか、そういう気持ちのひとつでしかない。その気持ちを特別な感情だと思わなくていい。呼吸をして、それが過ぎるのをただじっと待つんだ。死にたい気持ちと闘わなくていい。死にたい気持ちを抱えて生きていくのは、ちっともおかしなことじゃないから。」
私も2年前に亡くした友人の死をよく思いだし、辛くなる事がある。
窪美澄さんもそんな経験をされたのかもしれない。
死を選ぼうとする者と、近しい人の死から立ち上がれない人。その両方にほんのり温かな気持ちをともしてくれる、そんな小説。
Posted by ブクログ
女3人、男2人のほぼ一生
自殺した菜乃子を中心に淡々と進んでいく話
達也の言葉「死にたいと思っても別に死ななくてもいいんだよ・・・死にたいと思うことはお菓子が食べたいとか、水を飲みたいとか、そういう気持ちの一つでしかない。・・・
特別な感情だと思わず、呼吸をしてそれが過ぎ去るのをただじっと待つんだ・・・死にたい気持ちと闘わなくていい。死にたい気持ちを抱えて生きていくのはちっともおかしなことじゃないから」
この物語はこれに集約されると思った。
菜乃子がそう思えればよかったのに
Posted by ブクログ
高校時代のクラスメイトの5人、その中心人物だった女子の自殺から、物語が始まる。
5人がそれぞれに生きづらさを抱えていて、自殺をきっかけに各々の悩みと向き合い始める。
どうしてこの5人が仲良くなったのか、ちょっと強引な感じがして、そこが引っかかったまま読み進めた。
結局引っかかったままで、最後までストーリーにのめりこめなかった。
Posted by ブクログ
亡くなった友人と関わった3人が彼女を回想する、心の描写で物語が進む。亡くなってからの彼女は、老いていく友人たちを俯瞰して見ていて…。亡くなった私の友人や祖父母も、私が思い出すたびにこうやって傍にいるのかもしれないと思った。生きていくって苦行だなーと思うことって誰でもある。人間はただそこにいるだけで十分なのだという言葉が心に残った。
Posted by ブクログ
元同級生5人。菜乃子の自死が残った4人の人生を揺らす。それぞれが一人称の物語。最後に死んだ菜乃子の魂が見てきた4人の話があって、これが一番面白かった。「死にたい気持ちがあっても別に死ななくてもいいんだよ。‥‥死にたい気持ちと闘わなくてもいい。」これは達也の言葉だけど、誰も自死だけはしてほしくないなぁーと思う。
Posted by ブクログ
わたしは、読んでいて頭に情景が浮かぶ小説が好きなんだけれど、好きな作家さんなのに最初の3編はずっとうっすらしていた。
気にいらない人とグループとはいえつながっている、というのもなかなか共感できなくて。離れられない理由はちゃんとわかるんだけれど。
そうしたら後半2篇、急激にしっかり情景や色が頭に浮かんでおもしろかった!うっすらだった3人も生き生きとしだして、あ、これは敢えて?敢えてのこと?!すごい!とわくわく読み進めました。
彼女が死んでしまう前と後、といことなのかな、わたしは身近な人の自死は未経験だけれど、たしかに「前と後」はあるだろうなと思う。それと重ねる時間。
84歳で自死ではなくても、親の死を経験する前と後で、わたしは感じ方が変わった。登場人物たちより20くらい長く生きていても。
亡くなった人のその後が、「芍薬の星月夜」みたいならいいなと思ってしまった。
霊感もないし、全然近くに感じられないんだけれど、自死でも自死でなくてもあんな風ならいいな。遺った者のワガママかもしれないけれど。
Posted by ブクログ
高校の友人5人それぞれの連作短編。
感想を書くのが難しい…。
生きている 菜乃子自身は登場しないのに 菜乃子が5人の中心にいて 残った友人4人を苦しめ惑わせてる。
それぞれすれ違いの恋愛感情も辛いね
もちろん菜乃子自身も苦しんでの決断だったんだろうけど 最後の章で その理由はわかったけど 想像していたのとはちょっと違ったかな。
みんな心に沼を抱えていて 足を取られる事もあるし生きてる方が辛い事もあるのかもしれないけど やっぱり生きて。
歳を取らない菜乃子 老人になった友人達 最後はちょっと悲しい
Posted by ブクログ
久しぶりの窪美澄。
登場人物5人を主人公とした、連作短編になっていて冒頭2つくらいはとてもいいなと思った。
他も良かったのだけど、どんどん特殊な人間関係が突出していって、さすがにこれは小説感がすぎるのではと思ってしまった。5人のうち2人がLGBT、1人はメンヘラ。さらに男女入り乱れての片思い&刹那的な性関係。
思うところはあるにせよ、やっぱり窪美澄さんはすごいな。
人間の愚かさというか、ふがいなさの表現がすばらしい。
Posted by ブクログ
同級生5人それぞれのパートに分かれて語られるので、複雑な5人の関係性もわかりやすく、それぞれの心情も切実に伝わってきた
心にじわっと染み込むような感覚で読んだ
Posted by ブクログ
学生時代から仲の良い5人組の内の1人が亡くなって、残された4人の視点で紡がれていくストーリー。
「なぜ自殺したのか」を追うのではなく、彼女の死によって皆が何を想うのかが主。
自殺した当人が一番苦しかったとは思うが、自分のせいで亡くなったのではと考える周囲の人も苦しいだろう。多くの人から愛されていたのに、自分のことは愛せなかった菜乃子に対して、憐れみだけでなく怒りの感情も抱いてしまうのは私だけだろうか。
最後の章は菜乃子視点だろうな、と思っていたらやっぱりそうで、しかも生前ではなく、死後の菜乃子というのが面白い。
彼女のことを思い出す人の所へ、彼女は姿を現す(生者に姿が見える訳ではない)。
死にたいから勝手に死んだのに、成仏するにも他人に思い出してもらうことが必要なんて、世話になりっぱなしじゃないか...と思いつつ、菜乃子のことは嫌いになれなかったな。
残された4人の話の方がメインなのに、私は彼らには興味がなく、菜乃子という人物のみ印象に残った。
Posted by ブクログ
闘わなくていい、ただ息をして待つんだ。絶望を日常の波に変える、終章の美しさ
「死にたい」という波が過ぎ去るのを、ただじっと待つ。残された者たちが紡ぐ、夜明けの物語。
高校時代から固い絆で結ばれていた5人組。しかし大人になり、その中の1人が自死という形で突然この世を去ってしまう。本作は、遺された4人がそれぞれに消えない傷と問いを抱えながら、それでも続いていく人生を歩み続ける姿を描いた連作群像劇です。
なぜ死を選んだのか。その本当の理由は、どれだけ考えても本人にしか分かりません。遺された人々は、「あの時もし自分がこうしていれば」という後悔や、割り切れない苦しみを背負いながら、暗闇の中を手探りで生きることを余儀なくされます。
しかし、その重い足跡の果てに待つ終章が、本当に美しい。
■引用
死にたい気持ちがあっても別に死ななくてもいいんだよ。死にたいって思うことは、お菓子が食べたいとか、水が飲みたいとか、そういう気持ちのひとつでしかない。その気持を特別な感情だと思わなくていい。呼吸をして、それが過ぎ去るのをただじっと待つんだ。死にたい気持ちと闘わなくていい。
Posted by ブクログ
展開の生々しさと救いの無さが苦しかったけれど、最終章で少し救われた気分になった。
ふと立ち止まって過去を振り返る時、その当時は見えなかったものに気づいて、あとから後悔することってすごく多いんじゃないかと思う。
私は菜乃子みたいな考えをしがちな人間だと思うが、残される人たちのことを思うと、やはりそう簡単に自死はできないなとも思った。
Posted by ブクログ
久しぶりにヒリヒリした人間模様のストーリーを読む。
5人のそれぞれの人生。
最後の章は、今までとはがらっと変わった展開。
救われる気もするけれど、なくてもよかった気もするなぁ。
最終章の評価(感想)は高いみたいだけど。
なんだか多様性が多い気がする、著者らしいといえばだけど。
Posted by ブクログ
高校時代仲が良かった男女五人のグループのうち、もっとも聡明で美しかった菜乃子がODで自死したことから溢れ出す、残された者たちの続きの人生。
当時から五人のあいだであちこちに矢印が向き合っていたことが分かり、それが二十年後の今もなお一方通行である事実にもどかしさを感じながら読んだ。
話の主人公が入れ替わっていく連作短編で、まさか五番目となる最終章は亡くなった菜乃子の視点ではあるまいなと冷や冷やしていたらそのまさかで、はじめ若干白けたのだけれど、蓋を開けたら五つの中では一番良かった。
クールでわりと物静かな印象を他人に与えながらも、実は彼女が「小説家になりたい」という野心や、才能ある他者への嫉妬を煮え滾らせていたところは意外だった。
〈私はまだ若かったけれど、余生、という言葉が浮かんだ。負け犬、という意識は十分にあったし、そう思うことがメンタルの不調を引き起こしているのは確かだった。自分、という人間の幼さや愚かさを抱えながら、私は地味な仕事を続け、余生を生きた。〉
そしてその先にあったのは、理想と現実の乖離に苦しんで、飽和した憂鬱のもとに起こった衝突事故のような死。
本を読みすぎた者の末路かもしれない。
Posted by ブクログ
この世を去った側と、残った側のお話。
重たい内容なのにどことなく穏やかな気持ちになる不思議な本だった。
残された側ができることって、その人の事を思い出すことだけなんだよね。本当のことを知りたくても、人と人だから一生知り得ることはない。いなくなったことを事実として受け止めて時々思い出す、ただそれだけ。
菜乃子からしたら、その時たまたま成功してしまっただけで誰の責任でもない。失敗したらそれはそれでまた死にたいと思いながら生活が続くのだろうと私も思う。
「死にたいと思うことは、気持ちの一つでしかない。特別な感情とは思わなくていい。」といった一文があってこれがこの本の全てだなと思った。