あらすじ
酔った元小児科医がマンホールにはまって死亡。市会議員が山道を運転中にエアバッグが作動し、運転をあやまり死亡。どちらもつまらない案件のはずだった。事故の現場に、ひとりの娘の姿がなければ。片方の案件を担当していた先輩弁護士が、謎の死をとげていなければ。一見無関係な出来事の奥に潜むただならぬ気配。弁護士エヴェリーンはしだいに事件に深入りしていく。一方ライプツィヒ警察の刑事ヴァルターは、病院での少女の不審死を調べていた。オーストリアの弁護士とドイツの刑事、ふたりの軌跡が出合うとき、事件がその恐るべき真の姿をあらわし始める。ドイツでセンセーションを巻き起こした、衝撃のミステリ登場。
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Posted by ブクログ
次々と場面が変わり、時間の流れも前後するので、
話についていけるのか心配なぐらいだったが、
場面の長さが短めで、
主人公の刑事と弁護士の決断と行動の速さが
心地よくそのスピード感を楽しめた。
二人の主人公、リニ―弁護士とヴァルター刑事がそれぞれの事情を抱えながら、
それぞれの事件を二方向からつき進んでいくのは面白かった。
サイドストーリーの恋愛話もよかったし。
贅沢を言わせてもらえば、
もうちょっとくどく長く作り込んでもらいたかったかな。
それと、ヴァルター刑事が救急車で運ばれそうになりながら、
リニ―弁護士に恋愛のアドヴァイスをするシーンはもうちょっとかっこいい台詞にしてあげてほしかった。
Posted by ブクログ
オーストリアの作家アンドレアス・グルーバーの本邦デビュー作。一気読み必至の佳作。
なんでもない事故のために窮地に陥っていた叔父を助けるために、その案件に関わっていたエヴェリーンは、同じようになんでもない事故だと思われていた案件にも同じ少女の姿が映っている映像があることに気づく。
一方、精神病院に入院歴のある子供が自殺している案件で不審な注射の後を見つけ、殺人ではないかと疑いを持ったヴァルターは、その犯人の後を追うように捜査を始める。
一見、なんのつながりもない事故、あるいは自殺にまつわる、二人の視点で物語が展開する。いずれも心に傷を持ち、一方では真実のために脇目も振らない活躍をする。エヴェリーンなどは弁護士のくせに、家宅侵入と窃盗まで行って証拠を集めようとする。褒められたものではないが、その探究心と行動力には脱帽させられる。
複雑に絡み合った物語がやがてひとつの大きな流れに収斂していき、そこから先を予想できない展開に入っていくあたり、ドイツ語圏で数々の賞を取っているという作者の力量が垣間見える。その作者のスピーディ且つ読者を引きつけてやまない物語を、これまた非常に読みやすく、ページを繰る手を止めさせないような臨場感溢れる筆致で訳された訳者の仕事もすばらしい。同じ作者・訳者が手がけた「黒のクイーン」も是非読んでみたいところだ。
Posted by ブクログ
酔っ払ってマンホールに落ちた医師、山道から転落死した市議会議員。現場に現れる謎の少女の存在に気がついた弁護士のエヴェリーン。同僚弁護士でゲイのホロスペックの転落死。事件にぎもを持ったエヴェリーン。精神病院での少女の自殺事件に疑問持ったヴァルター。監視カメラに映った白髪の男。自殺した少女の生い立ち。児童虐待。過去に謎の死をとげた少年、少女。15年前にフリートベルク号のクルーズで起きた事件。エヴェリーンとヴァルターの捜査が繋がり事件の全貌が。
Posted by ブクログ
オーストリアで起こった不可解な、一見関連のない事故を調べる弁護士の事件とドイツで起こった、一見関連のない自殺を調べる刑事の事件が絡まっていき、終盤につながっていく。なかなか展開も早く、面白かった。よくあるパターンの2人が恋愛にならないのも良い。続編があるとのこと。読んでみたい。
Posted by ブクログ
主人公2人がそれぞれ追っている「犯人」が相手にとっては「被害者」で、それぞれがじわじわと真相を追う中で出会い、やがて一つの真実にたどり着く…というプロットが見事。エヴェリーンとヴァルター、2人の主人公はじめキャラたちもとても魅力的。ほかの作品もぜひ読んでみたい。
Posted by ブクログ
なにかのミステリ関連で本書のタイトルが出たので気になって読んでみた本書。
原文タイトルは「RACHESOMMER」。
うん?英語ではないな。
SOMMERは英語のSUMMERで夏なんだろうけど、RACHEって??
うん? そういえばシャーロックホームズに復讐の意味でこの文字が壁に描かれていた話があったんじゃないっけ??
とかなんとか思いながら表紙をためつすがめつ眺めた。
表紙は夏の夕暮れ時。ぽわっと灯のともった街灯と、そこに浮かびあがる金髪で肌を大きく出した青っぽいワンピを着ている華奢な女性の後ろ姿。そして立派な白い建造物の背景もなんとも雰囲気がある。そうか、これはヨーロッパのミステリなんだ、と納得。
プロローグの掴みはオッケー。
なに? どういうこと? この子、何者?? とじゅうにぶんに引き付ける。
場面も話の展開もスピーディで、読んでいるとただのミステリではなくサイコ系の空気もあって、程よい緊張感を伴って読み進めることができた。
が、最終的な感想は、うーん、緻密さに欠けるというか、なんだか大味だったなあというものだ。
いちいち挙げればきりがないが、いちばん肝心なのは、犯人である彼女がどうしてあそこまでの行動に出たのか、出られたのか、それがどうにも納得できないんだよなあ。
どうやらそこには多重人格がポイントになっているようだと私は理解したんだけれど、それでも本書だけではあの子のあの行動は説明不足なんじゃない? それともヨーロッパの読者さんって多重人格(解離性同一性障害)といわれればここまで基本人格とは隔たった行動をするのが当たり前という前提でもあるのかしら。
とにかく全体的に予定調和すぎるというか、表面をするっと撫でて問題解決な感じが否めなかった。
ミステリで手垢がつきすぎて今や御法度といわれるものに「夢落ち、双子、サイコパス」というのがあるけれど、本書も究極それなんだよなあ。そして追加される保護者のいない児童への性的虐待、それによる解離性同一性障害など、ちょっとおなかいっぱいです。
せっかく冒頭にゲーテの引用があるんだから、もっと緻密に書き込めばハンニバルにも劣らないスリラーになったような気もするんだけれど、みなさんはいかがでしたでしょうか。
怪物と対峙する者は、みずから怪物とならぬよう心せよ。汝が久しく深淵を見入るとき、深淵もまた汝を見入る。
====データベース====
地位も名誉もある男たちの事故死。病院に入院している少女の不審死。オーストリアの弁護士とドイツの刑事、ふたつの軌跡がであうとき、事件はそのおそるべき真の姿を現す。
ドイツでセンセーションを巻き起こした、衝撃作登場。