【感想・ネタバレ】廃用身のレビュー

あらすじ

廃用身とは、脳梗塞などの麻痺で動かず回復しない手足をいう。神戸で老人医療にあたる医師漆原は、心身の不自由な患者の画期的療法を思いつく。それは廃用身の切断だった。患者の同意の下、次々に実践する漆原を、やがてマスコミがかぎつけ悪魔の医師として告発していく――。『破裂』の久坂部羊の、これ以上ない 衝撃的かつ鮮烈な小説デビュー作。

...続きを読む
\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

このページにはネタバレを含むレビューが表示されています

Posted by ブクログ

ネタバレ

前半は、健康法で自費出版してそうな医療エッセイを読んでる気になってしまった。
持論と経緯、そして改善した実例。
通販の医学博士がおすすめするような胡散臭さが漂っていて、繰り返すことで洗脳されるような怖さ。

後半はその原稿の編集者による取材で、一つの事実と二つの考え(漆原/マスコミと漆原へ悪意を持つ者)が解説される。

時折身体に痺れや可動域が狭くなっている自身の老化が進んで、麻痺して、自身の部位の不自由さに苦しめられる未来は確実にやってくる。
その時、切断して身が軽くなり晴々とした人が現れたら、私もそうなりたいと願ってしまう…
五体不満足(乙武洋匡)を参考文献に挙げて、無くなれば有るものを活かす方へ気が向くことでQOLが上がるというのを、他人には肯定するが自身では受け入れるだろうかと自問して、答えが出ない。

デビュー作だからすごいのか、この作家の他の作品も読もうと思う。

0
2026年08月08日

Posted by ブクログ

ネタバレ

読み始めた瞬間から、本作が「小説」であることを忘れ、最後のページに辿り着くまでずっと現実に起きた話だと思っていました。それほどまでに日付や登場人物の設定が細かく、読み終えた後も「これはフィクションだったの?本当に?」と疑っていました。

本編の衝撃的な展開も去ることながら、個人的は介護業界が抱えている闇や、人知れない苦労の方がグロテスクだと感じました。私の両親も近いうちに介護対象の年齢になりますし、私だっていずれはなります。そのとき、自分はそのグロテスクな存在になるべくなりたくないと誰もが考えると思いますが、ではそのために自分には何が選択肢として残されているのでしょうか?

映画化されることを機に作品を知り、読み終えた頃には映画の上映期間が調度終わってしまっておりましたが、読んですぐに映画を見に行きたかったと後悔しました。大満足の作品です。

0
2026年07月19日

Posted by ブクログ

ネタバレ

>ぼくの親切の源は、圧倒的な優越感だった。

「親切」と評価されるわたしの行動、差し伸べている手は、本当に純粋に、相手のためを思ってのものなのか。
それとも、無意識のうちに「与える側」という特権的な立場や優越感をもち、与えることで相手に「親切な人だと思ってほしい」という自己の浅ましさから来るものなのだろうか。
そう思うと、漆原氏と同様、わたしの頭も廃用身なのかもしれないな、と、絶望に近い気持ちにもなる。

0
2026年06月07日

Posted by ブクログ

ネタバレ

半分くらいまで、ヤバい新興宗教の本読まされてるみたいでしんどかった。喜びも笑顔も1面でしかなく、「本当はどうなの?」と思いながら読み進める。最後の1行じゃないけど、終盤に声の出てしまう部分があって、一義的に理があってもやはりそれは全てでは無いのだよなと思わされた。この本を読んで欲しいと言ってきた人と感想を話していたのだが、そこに「良い面があるな」と思ってしまったことが怖いねと。先日、介護職の方が「被介護者には痩せて欲しい」と言っていたのを見てしまってリアリティが増して、

多分これ、一生忘れないし、一生怖い

0
2026年08月15日

Posted by ブクログ

ネタバレ

映画化されていることは知っていたので、本屋で見かけて何気なく手に取ってみました。
想像以上に内容が重いことにビックリしながら読み進めましたが、難しい医学的用語やわかりづらい表現がなかったためか、非常に読みやすかったです!
当方老人介護に少し関わりある仕事をしているため、老人虐待や介護負担の問題など、勉強になることが多く、自分の学びにもなりました。

漆原先生の視点で読むと「善良な」行動や考えでも、
読んで行くうちに色々な人の視点で見ると「嗜虐的」「グロテスク」だとか、、善悪が単純に決められないが故に、ラストの展開は少し悲しい気持ちになってしまいます。

漆原先生の
「自分の知らない自分がいた」というセリフは、とても印象に残りました。

0
2026年08月09日

Posted by ブクログ

ネタバレ

この話はノンフィクション?フィクション?どっちだろう。リアリティがありすぎることに驚き、深く考えさせられる小説だった。※小説なのだが、研究発表のような形でストーリーが進むので、一見リアルな話かと思ってしまう。

『廃用身』とは…脳梗塞などで身体が麻痺し、回復する見込みがない手足のことを言うらしい。
小説の中で漆原(うるしばら)医師が提案する『Aケア』というものは、廃用身を切断し、介護する者の手助けをするもの。
(『切断』=アンピュテーションということから)

介護の現場は本当に大変だと思う。小柄な女性ならまだしも、体重が80キロ、90キロあるような方の介護をするのは想像するだけでキツイと思う。動かなくなった四肢を切断することで体重が軽くなれば介護側の負担が減る…小説とはいえ、本当にショッキングだった。(物語では廃用身を切断した老人が性格も明るくなったと書いてある)

しかし現実の介護問題とリンクしているように感じ、とても他人事に思えない。
というのは、うちの母親は昨年脳梗塞になり、右の手足が麻痺し、リハビリしても動かない状態だ。もし動かない手足があることで、本人がうつ状態になったり、床ずれが治らないとして、本人から『Aケアしてほしい』と言われたら、複雑な想いをするだろう。

介護問題の深刻化がこの作品を通して残酷に突きつけてくるようだった。将来に向けて、実際に起こりうるケースであることを作者の久坂部羊さんが語っているネット記事も読んだ。ただ久坂部さんは医者の肩書もお持ちだからこそわかるのだろう。小説の中で漆原医師は週刊誌のスクープでバッシングされる。それほど手足を切断するという『Aケア』は、一歩間違えば残虐非道な猟奇的な虐待であると捉えられてしまうと予想しているのだ。

この小説はつい最近だが染谷将太主演で映画にもなった。(問題作すぎて鑑賞は見送った)小説を読んだ今なら、観てみたかったと思う。配信になるのを待とう。

0
2026年06月23日

Posted by ブクログ

ネタバレ

実写の予告で気になって、この本を手に取った。予告は不気味でホラーチックな雰囲気だったから、怖い場面がいつ来るかと警戒しながら読み進めてた。

だけど、予想に反して前半は恐ろしさを全く感じなかった。廃用身を切り落とすと聞いて、残虐な場面や患者の悲痛な声を想像していたから驚いた。


後半から語り手にが変わって漆原を客観的な視点でみるようになる。ここで物語の印象、すなわち漆原の印象が何度もひっくり返り始める。

私は頭の中で漆原が本当は善人か悪人か何度も考えていた。だけど、最後まで読むとそこに答えがないことに気が付く。人間は善人と悪人の二種類に単純に分類できるものではない。

「漆原が嗜虐的な一面を持ち合わせていたとしても、Aケアが悪ということにはならない。施術と人間性は別問題」というような語りが、この本の1番本質をついていると思った。

0
2026年06月25日

「小説」ランキング