あらすじ
廃用身とは、脳梗塞などの麻痺で動かず回復しない手足をいう。神戸で老人医療にあたる医師漆原は、心身の不自由な患者の画期的療法を思いつく。それは廃用身の切断だった。患者の同意の下、次々に実践する漆原を、やがてマスコミがかぎつけ悪魔の医師として告発していく――。『破裂』の久坂部羊の、これ以上ない 衝撃的かつ鮮烈な小説デビュー作。
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Posted by ブクログ
>ぼくの親切の源は、圧倒的な優越感だった。
「親切」と評価されるわたしの行動、差し伸べている手は、本当に純粋に、相手のためを思ってのものなのか。
それとも、無意識のうちに「与える側」という特権的な立場や優越感をもち、与えることで相手に「親切な人だと思ってほしい」という自己の浅ましさから来るものなのだろうか。
そう思うと、漆原氏と同様、わたしの頭も廃用身なのかもしれないな、と、絶望に近い気持ちにもなる。
Posted by ブクログ
映画公開に伴い、原作から履修することにした。
とても読みやすい。
後半漆原の心の内に秘めた残虐性が目立ったが、老人デイケアの現状・本人の障害に対しては合理的な"ケア"にも思えてしまう。
これが約20年前執筆なのが驚きだが、超高齢化社会に拍車がかかるこれからを考えさせられる一冊だった。すき。
Posted by ブクログ
映画を観たので再読。非常にシビアで現実的な高齢化社会に対する予測、介護の今後、老人虐待問題などで何が善とも悪とも言い切れない重い内容になっている。がまあ普通にマスコミは一意にカス
「自分が本当は心底で何を思っていたか」なんて自分にも理解し得ない。それを周囲に誘導されてしまった面も否めず、「頭はわたしの廃用身」という遺書がとても悲しい。自分の頭、考えることを廃用身と言えてしまうほどの悲しみはない。反面まあ「不要だから取った方がマシなのでは」から実際に切断まで行けてしまう人間は全然怖い
割合で言うと「良くなった」と感じている老人の方が多く、しかし悪い例が凄惨すぎて単純には肯定できない難しさがある。因果関係も否定しきれないわけだし。ただ「四肢のいずれかがないことが当たり前」になった時代にここまでの反発が起きるかと言うと……。人間は結局社会の価値観に動かされている面もあるよなあ、と感じさせられる名作だった。
Posted by ブクログ
映画の予告で見かけ、ショックを受け、
映画は気になるけど視覚的に辛そうだからとりあえず原作を…と手に取りました。
あの映像を見てショックを受けたので
私もきっとAケアで手足を取ってしまったらショックを受ける側の人間なんだろうなって思う。
でも実際話の前半で展開された漆原先生のAケアについての文章を読んでいると
「悪くないかも…」と思ってしまいました。
いつか自分が麻痺とか硬直で苦しむのであれば、苦しみからの解放に望みをかけたくなるかも。
漆原先生も、奥さんも、マスコミにリークする人にもみんな表と裏があり
それを面白半分に切り貼りして、燃やすだけ燃やして重要な部分には目を向けないしマスコミの罪は本当に重たい…。フィクションだとは分かりつつもマスコミへの怒りだけはしっかり刻まれました。笑
あと、奥付けページでフィクションかどうか分からなくなる感覚にドキッとさせられました。
こういう部分にまでこだわられているのはとても良いです。
Posted by ブクログ
「廃用身」という言葉を初めて知りました、と書いたらこれ造語なんですね。
字面からショッキングで引き込まれます。映画化してて気になって読みました。
作者が医師なだけあって老人医療の描写が生々しく、現実味を感じました。
この作品が書かれてから20年、いつかは誰しも老いるとなると目を背けてはいられない問題です。
わたしも、例えばこの腕動かないしそれなのに痛いし、苛々するし落ち込むから邪魔でしかない…と思うと、思い切って切ってほしい!と言い出すかもしれません。ありがたいことに今現在は不自由なく動かせてるってだけで…
自分だけでもそう思うのに、周りの人にも迷惑をかけてるだろうと思い詰めてしまうともうダメ。
漆原先生がたとえ支配者感を内に秘めて勧めてきてても、良いかも…となりそう。
「患者さんからの同意がないと絶対にしない」と仰ってはいたけれど、同調圧力を感じなくもないです。「迷ってるくらいならやりなよ。絶対良いって〜!」みたいなものではあるけれど。
安楽死の是非よりは、このAケアのほうが議論しやすそうな感じはします。
見た目がショックなら、それこそ義手義足もあるし…江戸川乱歩の「芋虫」を思い出しちゃった。
ある程度の年齢の人は、「攻殻機動隊」の義体になれるかも!と思ったらむしろ高まりそう。
でもまぁ、この国では同調圧力の問題を解決しないとAケアも安楽死も議論できないな、と思います。
マスコミの偏向報道の醜さを感じました。
カストリ雑誌のごとく、衝撃的に歪めて解釈したものしか報道せず…
でも、それも前半の、漆原先生の手記を読んでいるからそう思えるだけなのかもしれません。報道しか知らなかったら「え?なにそれ…」ってなりそう。
春日武彦先生の解説も面白かったです。
グロテスクは、グロそのものではなく、それを発する・接する側の鈍感さと無自覚さ。
グロテスクは精神性だとぼんやり思ってたのが言語化されている、さすが!と思ってしまいました。
そういえば、作品群にグロテスクを感じている小川洋子さんの、「薬指の標本」思い出させる描写があってあぁ…となりました。
小川さんに関しては、鈍感でも無自覚でもなく“全てを平等に見つめる目線の冷徹さ”にグロテスクを感じて温度が下がります。
誰かに肩入れするのではなく、平等に観察してる感じ。小川さんはこの冷静さがたまらなく好きです。