【感想・ネタバレ】5年後、メディアは稼げるか?―MОNEТIZE ОR DIE ?のレビュー

あらすじ

米国の新聞社・出版社が繰り広げている
「血みどろの生存競争」が日本にやってくる!

4カ月でビジネス誌系サイトNo.1に導いた
東洋経済オンライン編集長が予見するメディア・サバイバル

今、日本と世界のメディア界は、大きな岐路を迎えている。今後5年、メディア業界は100年に一度といってもいい激震を経験するはずだ。では、ウェブのさらなる進化などによって、メディアの形はどう変わっていくのか。ネットメディアを運営するプレーヤーの目と、業界を分析するジャーナリストの目から、「メディア新世界」の姿を予測する。
・8~9割のメディア人はデフレに
・テクノロジー音痴のメディア人は2流
・日経以外の一般紙はウェブで全滅する
・有料課金できるメディアの条件
・起業家ジャーナリストの時代がくる
・最後のガラパゴス業界が激変する
・欧米メディアの“血みどろ”の戦い
・これからはコンテンツとデータが王様
・5年でデジタルは端役から主役に
・一番偉いのは、新しい“稼ぎ”を創る人
・新時代のカギを握るのは、30代
・“のっぺらぼうメディア”の終わり
・ウェブと紙の6つの違い
・紙の本はそのまま残る?
・雑誌が紙である必要はあるか?
・次世代ジャーナリストの10の生き方
・記者は没落、編集者は引く手あまた
・ウェブメディアの8つの稼ぎ方
・どうすればネット広告は儲かるか?
・サラリーマン記者・編集者の終わり

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Posted by ブクログ

ネタバレ

 「東洋経済オンライン」の編集長の佐々木さんが執筆した『5年後、メディアは稼げるか』は、メディアの現在とこれから進むべき道を記した本だ。本の帯には「マネタイズか?死か?」と強烈な煽り文句が書いてあるが、メディアを仕事としている人ならば、これが煽りではなく的確に現状を捉えた言葉であると実感できるだろう

 ウェブメディアの特徴や概観(アメリカ含め)を網羅的かつ客観的に説明し、メディアの稼ぎ方を考察、これからのメディア人(あくまでメディアで食っていこうとする人)に必要なスキルやスタンス、考え方を筆者の私見も交えながら論じている。

 長年編集部に在籍していた経歴があるためか、具体例を交えながら分かりやすい説明を展開している部分は素晴らしい。今まであまりメディアに触れてこなかった人でも楽に読み進められるので、業界研究の入門書として好適だ。メディア志望の就活生も読んでおいて損はない。

 一方メディアに携わっている立場であれば、この本の位置づけは大きく変わる。デジタル主体の媒体展開(ジャンル横断含め)、ユーザー属性をはじめとするデータの重要性、フリーミアム戦略――いい意味で、ここで書かれていることの多くは"当たり前"だ。というより、当たり前のこととして認識していなければならないように思う。言葉として整理されていなくとも、直近のWebの動きを見ていれば感覚として共感できるはずだ。

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2018年10月14日

Posted by ブクログ

ネタバレ

2013年に東洋経済をビジネス系サイトNO.1に導いた「東洋経済オンライン」編集長の佐々木紀彦氏によってかかれたビジネス本。

「5年後、メディアは稼げるか」という題名のとおり、近い将来メディア界で起こりうる変化や、その変化にともないメディア担当者にもとめられるであろう知識やスキルを、実際のデータをもとに理論的に説明されている内容です。

日本だけでなく、海外の媒体データも取り上げているので非常におもしろいです。

電子書籍の例にもみられるように、媒体が紙からWEBへ移行していっている風潮はいなめませんが、その移行の際にメディア担当者が気をつけるポイントを、紙とWEBの特性を比較した上でわかりやすくおしえてくれています。

ただ、すべてをWEB媒体にしていけばいいってものではなく、情報の種類によりどの媒体がよいか向き不向きがあることも、提供する情報別に分類して説明されています。

媒体は何にしろ、メディアを通じて稼いでいくのに必要な要素がたくさん詰まっている本なので、情報発信することをお仕事にされている方は、今後のお仕事の参考になること間違いなしの1冊です。

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2013年09月08日

Posted by ブクログ

ネタバレ

現・ユーザベース CCOである佐々木氏による、これからのメディア論が語られた1冊。
海外のメディアの事例を取り上げながらも、今後日本のメディアが生き残っていくためにはどのような方向性を模索するべきなのか、ということについて自身の考えを非常に簡潔に述べている。

特に印象的だったのは、メディアの収支モデルの変化。
従来の紙媒体メディアでは、その収入の多くを広告費で賄っていた(米国 約9割、日本 約3割)が、多くのメディアがWeb媒体に変化することによって、広告費の価格が落ち、次第に売り上げが低下しているというもの。これはこれまでは有限の枠しか設けることができなかった広告(紙面上)が、無限に広がるネットワーク上に広がることとなった(Web上)ため起きた、構造上の大きな変化である。

この構造変化を明らかにした上で、著者は日本のメディアに警鐘を鳴らす。アメリカのメディアなどは元々広告費への依存が大きかったため様々な変化をしている過渡期であるが、日本のメディアはそこまで依存をしていなかったため、大きな変化を希求していない。
しかし、このままでは日本のメディアは廃れ、本来の役割を果たすことができなくなってしまう。

ここまで明らかにした上で、著者はこれからは「起業家的ジャーナリスト」が必要とされていると言う。つまり、自分で企画をし、それを形にし、自分でプロモートするという一連のプロセスを実行でき、かつビジネス、テクノロジーへの理解もあるジャーナリストということである。
これは私自身が働きながら痛感していることとも重なる。これからは決まった枠を埋めるだけの記者ではなく、ユーザーのニーズを読み解き、かつそれを満たすことのできるジャーナリストこそ価値を持つこととなる。

メディア業界で起きている大きな変化を分かりやすく解説し、かつその上で方向性を示した良書であると言える。


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以下、特に印象に残った箇所を引用する。

「私自身、ウェブメディアに移ってから、この世界の"ジャーナリズムの弱さ"を痛感させられています。いちばん驚いたのは、当たり前のように、原稿を前もって取材対象者に見せることです。こんなことは、経済ジャーナリズムの世界では考えられません。原稿の事前確認ができれば、取材対象者は自分に都合の悪い話はすべて削ってしまいます。(p. 138)」

「個人的にはいちばん大事だと思っているのが、孤独に耐える力です。ビジネス誌の編集者という仕事柄、起業家などイノベーティブな人物に出会う機会も多いですが、そうした人々には共通点があります。それは、人生のターニングポイントで一度は逆張りをしているということです。進学、就職、転職、起業など、人生の要所で周りから反対されるような決断をしています。では、逆張りする力、自分の信念を貫く力はどこから生まれるのでしょうか。それは、孤独に耐える力です。(p. 171)」

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2018年09月02日

Posted by ブクログ

ネタバレ

・タイトル付けがうまい雑誌:週刊文春、アエラ、BRUTSU

◆アメリカメディア市場
・オンライン広告が安すぎて稼げない
 100:10:1の法則:紙で100万円だった広告が、ウェブで10万円となり、モバイルで1万円となる
<理由>
①広告需要<<広告枠
②巨大なPF覇者の存在(Google,Facebookなどで64%の広告枠を握っている)

◆攻めている米メディア
・Financial Times
30人体制のデータ分析部門:サイト上での読者の行動を分析→有料会員を増やすための施策だし
 -どの分野のコンテンツが好きか
 -どの時間帯に読むか
 -どんな読者が有料会員になりやすいか

・New York Times
①プライシング
-モバイル、PC、タブレットで価格が違う
-特定のカテゴリーだけ読めるプラン(政治とか)を導入
-特別イベントへの参加権とセットの高額プランを導入
②グローバル
-NYTの翻訳記事+現地記者の記事というスタイルで展開
③動画コンテンツの拡充
-動画の広告料は高いから
-無料のニュース動画配信を開始
④ブランドエクステンション
-NYTブランドを使った商品展開をする(ゲーム、Eコマースなど)
-クロスワードパズルは年会費40ドルで提供している
⑤イベント
-コネクションを活かした大物イベントを高額で展開

・フォーブス
-ルイス・ドヴォーキンの手腕:オープン化
-書き手の99%は外部(そのため書き手のプロフィールを詳しく出している)
-編集権限も書き手に委譲(コメントや構成を変えられる)
-ただし、書き手になれる合格率は10%程度
⇒目利きした人をマネジメントするビジネスに変化

◆ウェブメディアの分類
・PVの高さ×ARPUの高さで2by2マトリックスを作る
①PV低い×ARPU高い:ニッチメディア
-代表例はビジネスメディア
→B2B広告に強いので広告料とれる
-日本なら日経ビジネスオンライン、海外ならアトランティックやフォーブスがここ

②PV高い×ARPU低い=マスメディア
・海外だとハフポや英ガーディアン

③PV高い×ARPU高い
・海外:ウォールストリートジャーナル、FT、NYT
・日本:日経新聞(有料会員30万人、月額課金6億)

◆メディアの稼ぎ方
①広告
②有料課金(メーター制)
③イベント(著名人の講演など)
④ゲーム(NYTクロスワードパズルなど。会員制)
⑤物販(ほぼ日の手帳が代表例)
⑥データ販売
⑦教育(ex.ワシントンポストは予備校事業を展開)
⑧マーケティング支援

◆どうすればネット広告は儲かるか?
①データ志向の徹底
・クッキーでは拾えない深い粒度の情報を拾う
→読者を会員登録させる
・その際に不快感を与えてはダメ。登録すると付加的なサービスを受けられるようにする
(fbログインなどで簡単にするのもあり)
・自社がもつ様々な読者データとひもづけて管理する(イベント出席率など)
→共通IDで管理するのが大前提

②広告を面白くする:ブランドコンテンツ
・商品を直接アピールせず、長期的にブランドを育てるコンテンツ
・売上成長率40%、単価が高い
→参入が相次ぐ

◆有料化を成功させるには?
①ターゲットが経済系かエリート系かデータ系
・人はビジネスや投資に役立つ情報には金を払う
②紙で築いたブランド
・ハフポは有料課金をしても失敗した
③無料サイトとしての実績
・最初から有料化しても読まない
・ただしPVだけでなく、スティッキネス(中毒性)も大事
 -ハフポは月1読者が66%で月30回以上訪れる常連は1%未満
 -NYTは常連が14%、1-30回訪れる人は51%

◆ベンチマーク
・オンラインプロデューサー:ネットマネタイズのプロ
-中川淳一郎:博報堂→雑誌編集者→NEWSポストセブン編集しつつ企業のオウンドメディアのプロデュース
-柳瀬博一:日経ビジネス記者→書籍編集→日経ビジネスオンラインプロデューサー(JICA×池上彰の企画や三浦しおん×コニカミノルタ企画など秀逸)

-編集とマネタイズのプロ:リクルートが多く抱える
→人材をRからひっぱるのもあり

・起業家ジャーナリスト
-津田大介
-渡邊正裕(MyNewsJapan社長)
-アンドリューサリバン(人気政治ブログディッシュ運営)
-タイラーブリュレ(グローバル情報誌モノクル編集長):雑誌を軸にweb,ラジオ、動画配信、カフェ、セレクトショップを展開

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2014年11月16日

Posted by ブクログ

ネタバレ

フツーの事が書いてあるように感じる
だが、そう考えるのは浅はかなのだろう

誰もが考えているような事ではあるが、それらを体系づけて本にまとめるという事はできるようでできない事

働き方とか働く人の意識といったところが昔とは変わったのは間違い無いと思う
昔は単純な表現をすると「縦割りだった」というのかな。。。自分の仕事だけ理解して、自分の守備範囲だけを守っていればそれで良かった
むしろ、守備範囲外にしゃしゃり出てくる事は良しとはされなかったと思う

しかし、最近はそうではない
これもWeb時代になってからという事かもだけれども、自分の守備範囲外の部分についても多少なりとも理解しながら他者や他社とコミュニケーションをとって仕事を進めていく事が求められている
コミュニケーション能力も含めて、昔よりも幅広い技術や知見を求められる

Web時代になって部品化が進んだという事かな
各部品を作る専門家がいつつも、それら各部品を合わせてどういったサービスを展開するか考える必要が出てきている

部品化を勧めるスペシャリストと、それらの部品を組み合わせて新たなサービスを展開するゼネラリスト
どちらかを目指す必要があり、そういった能力があるかないかで給与や待遇も二極化されてしまっているようだ

おそらく、その傾向は今後も更に大きくなっていくのだろう

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2014年12月01日

Posted by ブクログ

ネタバレ

【起業家ジャーナリスト】p30
『フリー』『メーカーズ』などの著書で知られる『ワイヤード』誌元編集長で起業家のクリス・アンダーソン、グローバル情報誌『モノクル』のタイラー・ブリュレなど、編集とビジネスセンスを兼備した人材が世界で活躍の場を広げている。

【一貫性よりも多様性】p48
ウェブメディアの記事構成は、テレビ局の番組構成に似ています。テレビ番組には、堅い報道番組もあれば、お笑い番組もあれば、ドラマもあれば、スポーツ中継もあります。同じようにウェブメディアでも、多様性がポイントになります。「東洋経済オンライン」でも、恋愛ネタからお堅い経済ネタまでを網羅した、バラエティに富んだラインナップを意識しています。

【雑誌が紙である必要はあるか?】p56
「速報性のあるもの=ウェブ」「ひとつのテーマを深堀りしたもの=雑誌」というふうにうまく住み分けられれば、ウェブと紙は幸せに共存できます。ウェブの編集部は毎日番組を創るテレビの製作部隊で、雑誌の編集部はひとつの作品を創り込む映画の製作部隊のようなイメージです。

ウィリアム・デレズウィッツ「リーダーシップにとって、真に重要なのは想像力であり、新規かつ逆張り的な物の見方を考え出し、それを表現する勇気です。よきリーダーであるためには、いかにしてひとりの時間をつくるか、ひとりで思考に集中できるか、大多数の一致した意見に左右されないか、をわかっていなければなりません。"孤独”とは、ひとりで静かな時をすごすことへの自信と心地よさです」『週刊東洋経済』(2011年11月26日号)p172

ショーペンハウアー「文体は精神のもつ顔つきである。それは肉体に備わる顔つき以上に、間違いようのない確かなものである」『読書について』p174

<メモ>
cakes

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2014年03月19日

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