あらすじ
300万年前に地球に出現した謎の石板は、ヒトザルたちに何をしたか。月面に発見された同種の石板は、人類にとって何を意味するのか。宇宙船のコンピュータHAL9000は、なぜ人類に反乱を起こしたのか。唯一の生存者ボーマンはどこへ行き、何に出会い、何に変貌したのか……作者の新版序文を付した傑作の決定版!
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Posted by ブクログ
映画2001年宇宙の旅を製作50周年記念上映で視聴しており、帰りに本書を書店で購入して帰って以来積んでいたがようやく消化。アーサー・C・クラークは地球幼年期の終わりを途中まで読んだ程度。
本書と映画の関係がいまいち掴みきれていなかったが、どうやら原作でもノベライズ化でもなく制作は同時進行だった模様。途中までは足並み揃えていたが……ということらしい。訳者あとがきに試写会に参加したレイ・ブラッドベリの逸話が載っており、ちょっとクスッとした。
映画が観念的すぎてよくわからなかった……と消化不良に陥る人は多いのではないかと思うが、本書はかなり丁寧にさまざまな事柄が説明されているため読後はスッキリする。ただ映画版は語ることが少ないために自由な解釈ができその余白が不思議な魅力となっているので、しっかりと設定が語られる本書とはあまり相容れないようにも思える。相互補完的に読むよりも、あくまでも各々の創作者が同じお題で自由に創造したらどうなる、くらいの気持ちで読むと丁度いい気がする。
内容的には、前半はややゆったり話が進行するものの、有名なHALの反乱が始まる中盤から後半にかけて物語は一気に加速する。アーサー・C・クラークは個人的にかなり言葉を尽くして状況や設定を説明してくれる作家だなという感想があり(そしてわかりやすい言葉であまりにも全て説明してくれるため壮大なスケールの物語が逆にチャチに感じられるときがある)、HALの「心情」までもが丁寧に描写されている。その結果、ボーマンによるHALの「殺害」描写はより生々しく感じた。
宇宙船そのものになる知的生命体(のちにそこからも解脱)であったり、「(向こうは)星でいっぱいだ!」というセリフであったり、あの作品の元ネタはこれかと膝を打つ機会がたびたびあった。往年の名作を読む楽しみのひとつだなと思う。
訳者あとがきにあったボーマンの代わりにHALが人類代表としてスターゲートに辿り着いたらどうなっていただろうと考えるのも面白い。一方で本書を読んで何よりも心に残ったのは、HALとの死闘や偉大すぎる知的生命体ではなく、骨格のデリケートな宇宙世代の人類のことだった。続編に期待したい。
Posted by ブクログ
映画も見たこと無いし、原作も初めて読みました(笑)中々面白かったと思います(笑)好みとしては第1部が面白くって(笑)SFの世界に入ってからもいい感じで進んでくれたと思います(笑)ただ『宇宙大作戦』とかのSFが好きな僕にとっては少し路線が違うので(笑)とりあえずは映画の方も見てみよう(笑)『2010年~』の方も気になるし(笑)
Posted by ブクログ
アーサー・C・クラーク氏の『2001年宇宙の旅』は、1968年にスタンリー・キューブリック監督による映画とほぼ同時に世に出された、極めて特異な成り立ちをもつSF作品である。その背景には、冷戦下の宇宙開発競争があり、アポロ計画が頂点に向かって進んでいた当時の高揚と不安が色濃く反映されている。人類が月を目指し、地球の外に「次なるフロンティア」を求め始めていた時代に、この作品は誕生した。科学技術の進歩への期待と、その一方で人間の倫理や意識はそれに追いついているのかという懸念――その二重性が本作の根幹をなしているように思われる。
物語の出発点となるのは、太古の地球に現れた黒いモノリスである。これは、人類の祖先に「道具の使用=知性の目覚め」を促す存在として描かれており、ここから物語は遥か未来の宇宙探査へと飛躍していく。その中で人工知能HAL9000が登場し、乗組員に反旗を翻すという出来事は、技術が人間を超える瞬間に対する寓話的な描写でもある。当時すでにコンピューターは軍事や科学の分野で急速に発展しており、「機械が人間の知能を上回るのではないか」という不安が芽生え始めていた。その未来像をクラーク氏は冷静かつ大胆に先取りしている。
小説では、こうした展開が論理的かつ端正な文章で語られており、モノリスの起源やHALの故障理由、主人公ボーマンの意識変容などが比較的丁寧に解説されている。それに対して、キューブリック監督の映画は、台詞を最小限にとどめ、音楽と映像による象徴表現を重視した抽象的な構成になっている。特にラストの「スター・チャイルド」へと至る描写は、理屈を超えた神話的なインパクトを与える。小説と映画は同じコンセプトに基づきながらも、それぞれのメディアの特性を最大限に活かした表現を貫いており、両者で一つの全体を成しているような関係にある。
この作品が書かれた時代はまた、人類の未来に対して楽観と悲観が複雑に交錯していた時代でもあった。核戦争の恐怖が消えないまま、科学技術だけが猛スピードで進んでいく。そうした背景のもと、『2001年宇宙の旅』は、宇宙を舞台にしながらもむしろ人間そのものの存在と進化に問いを向けているように感じられる。とりわけ、ボーマンの変容――人間の次なる姿としての「スター・チャイルド」――は、進化の終着点を示すのではなく、その先に広がる未知なる可能性を象徴しているのかもしれない。
本作品の根底には、「人間とは何か」「知性とは何か」「進化はどこへ向かうのか」といった問いが通底している。これらの問いは、単に物語の中にとどまるものではなく、現代を生きる私たち自身の問題としても響いてくる。いま、生成AIに代表されるように人工知能が目覚ましい進歩を遂げ、人間の思考や創造性と見分けがつかないような成果を生み出しつつある。HAL9000のような知性が、決してフィクションだけの存在とは言い切れなくなってきた時代において、『2001年宇宙の旅』が描くテクノロジーと人間性の緊張関係は、ますます切実な意味を帯びている。私たちは、知能とは何か、意識とは何かを本当に理解しないまま、かつてクラーク氏が描いた未来に少しずつ近づいているのかもしれない。その意味でこの作品は、過去の幻想というよりも、現代に生きる読者に向けた静かな警告であり、未来への哲学的な羅針盤のようにも読めるのである。科学と文学、映像と理性、そして人間の想像力の交差点に立つこの物語は、今なお私たちに問いを投げかけ続けている。どこから来て、どこへ向かうのか――その旅路に、終わりはない。
Posted by ブクログ
月の裏側で発見された四角い石板「モノリス」が発した信号をもとに土星の衛星を目指す人類と、地球外生命体の初接触を題材にしたお話。
名前だけ知っていたHAL9000がどういうものなのか知りたくて聴いたが、状況が段々悪化していく辺りは想像より怖くて良かった。
「デイジー・ベル」が歌われたのはこんなやべえシーンなのかよと思った。
超性能の人工知能なのに、嘘を付こうとすると処理落ちでもするのかレスが遅くなるのがかわいい。
後半へ近づくにつれて段々と概念的な内容が多くなっていったが、自分の認識を越える何かを見てしまった場合、こんな感じの感想になるんだろうかなどと思った。
Posted by ブクログ
昔、映画を観て内容よくわからなかった…となっていた作品。読んでみるとこれまで自分が触れてきた小説やゲームなどの作品のなかに2001年の影響があるなと感じられたのは面白かったし、内容について自分なりにこうなんかあぁなんかと考えることができたので良かった!
個人的に印象深いのがTMA•1が〈月を見るもの〉に最初に与えた豊かな暮らしへの羨望という所だった。道具を使う知性とかがヒトザルを人へと押し進めたものっていうのはなんとなく想像しやすかったけど、意志や心といった精神性はこれまで見過ごしてきたなと感じた。道具を用いるのにもそこに至る動機がなければ何も得られない。明確な目的を持ってはじめて道具に用途が産まれる。人間性と道具やテクノロジーの関係性について思わず考えてしまいました。
今やスマホやパソコンといったインターネットの恩恵をただ享受するのではなくそこになぜそれが必要なのかを問う感情が必要なんじゃないかと、稲田さんの『映画を早送りで観る人たち』を読んだあとだからか考えてしまう。
p94でiPadみたいな機器を使っているときのフロイドの独白「無限に移り変わる情報の流れをニュース衛生から吸収しているだけで、一生が過ぎてしまうだろう」も何やら響いてくる。
道具に使われるのではなく、道具を使う側に回る。ハルとの戦いのシーンはハルのもつ目的意識を人であるボーマンが奪い返すことで人間性の再帰をはかるシーンに自分は思えた。
解説や他の人の感想を見ていろいろな考え方ができる可能性を秘めていてこの本はさながらTMA•2みたいだなと思って少しニヤニヤしました。
Posted by ブクログ
昔、映画をみた記憶はほとんどなかったけれど、読んでいくうちに思い出してきた。HALのところは結末を知っていても読むのが怖かった。絶対に味方と思っている存在が敵になったのに、冷静に対処して、最後には許せてしまうのが凄い。
Posted by ブクログ
映画は何度か途中で挫折したせいで、一応最後まで目を通したはずだが内容はほとんど覚えていない、くらいのインプットで今回読んでみた。
この小説と映画は同時進行で制作、今のメディアミックスの形で作られていたということを、前書きで初めて知って驚いた。1960年代といえば米ソの宇宙開発競争真っ只中。そんな中、製作されたこの作品は、すごい熱量で迎えられたのだろう。
本の半分くらいまではなかなか話が進まないが、第四部でボーマン船長が出てきてからストーリーが急速に展開していく。個人的に一番印象に残ったのは人工知能HALの殺害シーン。人工知能を『殺害』と表現するのはなんだか可笑しな気がするが、まるで人間を解体していくかのように機械をこじ開けて、HALが段々と知性を失っていく様子がの描写された一連のシーンに圧倒された。
ボーマンが土星に向かった後のモノリスとの接触の後は、「え、これで終わり?」感が強い。人間ではない何かになってしまったのはいいが、何をするんだろう…。
シリーズであるとは知っているので、続編を読もうかと迷っている。