あらすじ
秘かに待望されてきた幻の完全版ついに刊行。名著のほまれ高い『中国の大盗賊』で割愛されていた150枚を完全収録。陳勝や高祖から毛沢東まで、縦横無尽に活躍する「盗賊」の姿を活写する中国史の決定版! (講談社現代新書)
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Posted by ブクログ
中国の盗賊の代表として、陳勝・劉邦、朱元璋、李自成、洪秀全、および毛沢東を紹介。ユーモラスな語り口で読みやすく、理解しやすい。
中国における盗賊とは、仕事にあぶれたならず者の武装集団のことで、中央・地方の政府が組織したものは「官軍」、そうでないものは「盗賊」とされた。頭脳としての知識人や情報網を持つ商人などを取り込みしだいに大きくなり、ついには天下を狙う集団も現れる。
面白いのは毛沢東で、先に紹介された陳勝・劉邦、朱元璋、李自成、洪秀全を「農民の革命戦争」として定義し、正義の行いとみなしている。本来のマルクス主義は都市の工場労働者を革命の主導者としているが、共産党は農村のあぶれ者を動員しているし、詩作に秀でた毛沢東は、マルクス主義者ではなく中国の伝統的知識人であった(マルクス主義の根幹を、「造反有理(上の者をやっつけるのはいいことだ)」の一語にまとめてしまった)。中国共産党は伝統的な盗賊集団と見たほうが理解しやすい。
Posted by ブクログ
歴史を淡々と述べているのではなく、盗賊という見方や、つまりどうゆうことかとわかりやすく書いています。元にしている資料もはっきり当てにならない、中国ではこうゆう風に評価されているけど、現実は違うときっぱり書いていて読みやすかったです。この本を読んだ後では、現在の中国の「即死刑」の風潮もわかる気がするし、一人っ子政策もある意味「盗賊防止策」なのかなと思ってしまいます。(そうは書いていませんが)中国の歴史をサッと要点をまとめて読めると思います。
Posted by ブクログ
タイトルから、日本でいう石川五右衛門、フランスでいうアルセーヌ・ルパンのような大泥棒を思い浮かべがちだが、この本では劉邦や朱元璋のような国を盗った大盗賊が挙げられる。そういえば、この二人は農民出身で最初は片田舎の盗賊として挙兵した。
中国では農業からあぶれた者(閑民)が武装して盗賊となるのですが、それでは困るとして国が閑民を兵とすることがよくあった。しかし、この兵のほうが盗賊よりも徹底的に略奪するなどしたから厄介だった。
注目すべきは毛沢東。本書では彼も一地方勢力として旗揚げし、勢力を拡大して中国全土を支配したという点で、劉邦や朱元璋と同じような盗賊皇帝として描かれている。
毛沢東は勢力を拡大していく過程で
・共産主義(正確に言えば共産党の全面肯定)を一種の宗教のように利用した
・共産党の幹部階級が贅沢な生活を送り、農民は共産党から土地や耕具を与えられ、謂わば共産党の農奴としてその土地を耕すという支配と被支配の関係が成立した
・「共産党は数億の人民に衣食を与えることに成功した」などの嘘が罷り通した(つまり国家による言論や情報の統制)
ことから、中華人民共和国も、実は清以前の王朝時代と根本は変わらない(あえて言うなら共産党帝国)のかもしれない。
Posted by ブクログ
盗賊ってなんだろう?というところから始まり中国の大盗賊を紹介しています。勝てば官軍とか後付神格化とかの裏をみたら実は盗賊でしたとか、ヒーローと悪人ってとても紙一重なのねと。物語ではかっこよく書かれていても実際はこれかと思うとちょっと萎えますが、面白い本でした。
Posted by ブクログ
中国歴代王朝の殆どは盗賊による創業だ、
というユニークな視点から迫る中国王朝史。
漢の高祖劉邦から現中国共産革命の祖毛沢東までを
大盗賊だと宣うのだから痛快な書ではある。
先ず、著者は盗賊の発生する要件を
氏族社会と近代資本主義社会との中間段階にある農業社会とする。
農村の過剰人口が盗賊の発生母体だ。
農村地域に、働き場のない、あるいは働いても食えない人間が、不断に、また大量に発生する。彼らは流れ歩く閑民となり、盗賊となる。
中国には、大昔から20世紀の今日に至るまで、常に盗賊がいた。
その彼らが権力争いの表舞台へと勇躍登場しては歴史を作ってきたのだ。と。
彼らへの呼称は、単に「盗」といい、また「賊」ともいい、また「寇」ともいう。
清代以後には「匪」とも。
曰く、山賊、海賊、水賊、馬賊、妖賊、教匪、流賊または流寇、土賊、などなど、
活動場所や行動様式によって呼称が異なる。
漢の高祖、劉邦
明の太祖、朱元璋
清王朝の、李自成
太平天国の、洪秀全
そして共産革命の、毛沢東
これら建国の祖はなべて盗賊から出て王朝の開祖となったのだ、という訳で、
各々、章を設けてその経緯をたどる。
1927年に毛沢東が作った中国共産党の軍隊は、中国歴史上の、盗賊の流れに位置づけられるべきもので、
それは、マルクス主義を信仰し、不平知識人が指導し、貧しい農民の味方を標榜する、一大盗賊団なのだ、と。
実際、毛沢東らが政権を取るまでは、「共匪」「紅匪」「毛匪」と呼ばれていたことからも、時の権力や一般の民からは、中国古来からの盗賊扱いの位置づけだったことがわかる、と。
中国独特の「革命」思想にも触れえて、成程そうかと肯かせる。
著者は中国文学のれっきとした学者であり、故なき論を展開しているのではなく、歴史の事実を踏まえたものだけに説得力はある。
まあ、肩の凝らない書ではある。