あらすじ
許されぬ殉死に端を発する阿部一族の悲劇を通して、高揚した人間精神の軌跡をたどり、権威と秩序への反抗と自己救済を主題とする歴史小説の逸品『阿部一族』。ドイツ留学中に知り合った女性への恋情をふりきって官途を選んだ主人公を描いた自伝的色彩の強いロマン『舞姫』ほか『うたかたの記』『鶏』『かのように』『堺事件』『余興』『じいさんばあさん』『寒山拾得』を収録。「森鴎外 人と作品」(山崎正和)、「『阿部一族・舞姫』について」(高橋義孝)収録。
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Posted by ブクログ
「舞姫」は、こんなひどい話だったのか。文章が難解で強引に読み通した結果、泣けた。なんとなく雰囲気は掴めたんでしょうね。(笑)
豊太郎との暮らしを夢みながら、エリスがお腹の子の為に、産着やオムツを縫っている幸せそうな姿。そこからの最後が辛いし酷いし苦しい。
豊太郎は有能なのだろうが、芯が無く、頼りない。異国に馴染めず、唯一、心を許したのは、年端もいかないエリス。
対照的にエリスは、心が真っ直ぐで美しい。
出世と恋愛。国への大義と異国の少女への一時的な感情。
どちらを選ぶ?
そうなるわな。それほどの思いがあるわけでなく…。熱意も無し。妊娠させておいて。
さいごの一文も秀逸。自分の意思と違うんかい!と呆れると同時に、本作を強く印象づけるモノとなった。
あと、印象的だったのは、「阿部一族」。殉死こそが美しいとされる武家社会にあって、殉死を許されなかった家臣一族の話。
好き嫌いとか虫が好かんとかそんな理由でここまでの大事になるとは…。なんでこうなるの?みんな同じ殿にお仕えしていた身でしょう!敵対していたわけではないのに。怒りと共に滑稽さも感じてしまった。命ってそんなモノなのか?武士って何なの?一族郎党を巻き込む事態なんだぞと。武士道に思い描いていた理想とは違う愚かさがそこにはあった。
それにしても、明治と言う時代に、公費で留学し帰国する為に異国の女性を捨てる話や殉死とは何ぞやと疑問を呈する問題を取り上げるとはかなり突っ込んでる。しかも軍医という職に就きながら。軍医としての森林太郎と作家としての森鴎外の思想は随分と違っていたのかもしれない。いやー興味深い。短編集なので、他作品もバラエティに富み、怒りや悲しみ笑い…と、感情が忙しかった。さすが文豪。
Posted by ブクログ
舞姫
確か初めて読んだのは中学生のとき。
そのときは、豊太郎はなんてクズなんだろうと思った。同じ女性として、捨てられたエリスがかわいそうだと思った。(読書感想文にも豊太郎の悪口を書きまくったように記憶している。)
しかし、今、大人になって再読してみると、豊太郎が「ただのクズ」から「理解できるクズ」に変化していた。
位階をとるか、愛する女性をとるか。このチャンスを逃したら、もう二度と故郷での栄達は望めないかもしれない。そんなときに「当然、エリスを捨てて故郷での出世を選ぶんだよね?(意訳)」とまるで確定事項のようにお偉いさんや友人に言われてしまったら(しかもエリスのいない場所で!)、本心はどうあれ、「私はエリスを選びます」と言える人間はなかなか少ないんじゃないだろうか。豊太郎は積極的にエリスを捨てたわけじゃなく、いろんなものに流され続けた結果、エリスを捨てざるを得ない状況に追い込まれてしまったわけだ。
有名な最後の一節「嗚呼、相沢謙吉が如き良友は世にまた得がたかるべし。されど我脳裡に一点の彼を憎むこころ今日までも残れりけり。」これも以前読んだときは「他責思考の激しいクズ」としか思わなかったけれど、今読んでみるとこう言いたくなる豊太郎の気持ちもちょっと分かる。
自分も大人になったなあ…と少し苦い気持ちになった。
その他、「かのように」などを特に興味深く読みましたが、長くなったので感想は省略。
Posted by ブクログ
「かのように」が良すぎる。
話の中の哲学的思考も好きですし、父と秀麿の若干の相手の考えの認識違いもありながらストーリーが進んでいくという流れも好きです。
秀麿がラスト父とは妥協するしかねーかーみたいなことを言っているのが、たとえ秀麿が父の考えを時間的に正しく捉えていたとしてもそういった結論になるのかなと思いました。それがいい。
これを読んだ人にはぜひ日本人の信仰についての本や解説書を読んで欲しいです。あと秀麿には本居宣長「古事記伝」を読んで欲しかったと感じました。
Posted by ブクログ
森鴎外が登場する本を読み、作品が読みたくなって本書を手に取りました。
短編集です。お目当てはタイトルの舞姫と阿部一族。ちょうどタイトルのものでした。
舞姫は文語体だったのでかなり読みにくく、味わう、という心境には至りませんでした・・・未熟(涙)。
主人公の豊太郎は終始ダメな奴だったけど、帰国の手助けをしてくれた友人に感謝しつつも恨む、という、最後まで人のせいにする根性が気に入らなかったです。
きっと彼女の切実な思いにも最後まで理解が至らなかったことでしょう。
こういう人は親や上司の言いなりになって、それにひっそりと不満を抱えながらも順風に生きていくのでしょうね。
阿部一族は、恥ずかしながら初読です。
こちらは読みやすかったですが、悲惨過ぎて哀れ。
生きるも地獄、死して後も家族も不幸になる顛末には、死んでも地獄、というよりほかない。
これは器の小さい殿様によるイジメですね。命が軽く、武士道精神が歪んでみえました。