あらすじ
イノベーションとは、天才のひらめきではなく仕事である。自らのアイデアと知識を行動に結びつけるうえで必要とされる技術のマネジメントとはいかなるものか。技術が文明に果たしてきた役割とその可能性、イノベーションの方法論を説く。
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はじめて読むドラッカー[技術編]
テクノロジストの条件
ものづくりが文明をつくる
著:ピーター・F・ドラッカー
訳:上田 惇生
出版社:ダイヤモンド社
本書は、技術とイノベーションを論ずるための書である
ドラッカーは、文明レベルで技術を見る。
近代の最大の発明は、活版印刷であり、社会に変革をもたらしたものは、灌漑である
近代の技術観、世界観をもたらしたものは、デカルトである
そして、イノベーションは当然のことであり、変化は常態である。世界は常に進化しているのである
技術革命の教訓
①技術革命は社会的イノベーション、政治的イノベーションに対する基礎的ニーズをもたらす
②新しい制度は、新しいニーズに合致しなければならない
③それらの制度が実現すべき価値、それらの制度が使えるべき目的、それらの目的の優先順位はかなりのところ自由にすることができる
IT革命が行ったことは、昔からあった様々なプロセスをルーティン化したにすぎない
20世紀におけるマネジメントの偉業とほあ、製造業における肉体労働の生産性を50倍に上げたことである
そして、続く21世紀に期待される偉業とは、知識労働の生産性を同じように大幅に上げることである
知識労働の生産性を向上させるための条件
①仕事の目的を考える
②働く者自身が生産性向上の責任を負う
③継続してイノベーションを行う
④みずから継続して学び、人に教える
⑤知識労働の生産性は、量よりも、質の問題であることを認識する
⑥知識労働者は組織にとってコストではなく、資本財であることを理解する
ベンチャーが成長するための原則
①市場に集中する
②財務上の見通し、とくにキャッシュフローと資金について計画性をもつ
③創業者である、企業家自らの役割、責任基地づけを決めることである
イノベーションの手順
①技術的なニーズを予期し、識別し、計画し、行動しなければならない
②昨日を体系的に破棄しなければならない
③イノベーションのための具体的な経営政策をもたなければならない
④イノベーションのための仕事は、今日や明朝の仕事を担当する組織においてはならない
イノベーションを成功させるためには、集中しなければならない
目次
日本の読者へ——なぜ技術のマネジメントが重要なのか
プロローグ 未知なるものをいかにして体系化するか
Part1 文明の変革者としての技術
1章 仕事と道具
2章 古代の技術革命に学ぶべき教訓
3章 近代を生み出したものは何か
4章 IT革命は産業革命になれるか
Part2 技術のマネジメント
5章 知識労働の生産性
6章 ベンチャーのマネジメント
7章 つくるだけでは終わらない——製造の新理論
8章 技術をマネジメントする
Part3 イノベーションの方法論
9章 方法論としての起業家精神
10章 イノベーションのための組織と戦略
11章 既存の企業におけるイノベーション
12章 イノベーションの機会はどこにあるか
Part4 世界観の転換
13章 分析から知覚へ
14章 知識の意味を問う
15章 ポスト資本主義社会の到来
エピローグ インタビュー「新技術は世界をどう変えつつあるか」
編訳者あとがき
初出文献一覧
ピーター・F・ドラッカー著作目録
ISBN:9784478300725
判型:4-6
ページ数:295ページ
定価:1800円(本体)
2005年07月28日 第1刷発行
Posted by ブクログ
理論を構築する、知識をまとめあげるのではなく、
理論と知識を基礎とした技術をもって、
世に影響を与えるものこそがテクノロジストである。
止めどなく変化する世の中において、
変化しないことは世の進化に対しての敗退に値する。
世に負けない強い変化が必要なのである。
だが革命は一人の手で行えるわけではない。
多くの人の手が重なり、波となり、革命となりえる。
テクノロジストは革命者の一人として、
革命を先導するものとして、
日々その技術を磨き、邁進していくのである。
(以下抜粋。○:完全抜粋、●:簡略抜粋)
○デカルトは世界の本質とその秩序についての公理を定めた。
その一つの表れが、「科学とは因果関係についての知識である」とする
フランス学士院の定義だった。
端的にいうならば、それは「全体は部分によって規定される」という、
科学者でも哲学者でもない者には到底理解できない定義だった。(P.5)
○今日では、あらゆるものが因果から形態へと移行した。
あらゆる体系が、部分の総計ではない全体、部分の統計に等しくない全体、
部分では識別、認識、測定、予測、移動、理解の不可能な全体というコンセプトを、
みずからの中核に位置付けている。(P.6)
○テクノロジストの芸術の無視は、技術と科学の関係の理解を不可能にする。
なぜならば、少なくとも西洋では、ゴシック建築における数学理論、
ルネッサンス絵画における幾何学、バロック音楽における音響学に見るように、
科学は、技術と知り合うはるか前に、芸術と世帯をもっていたからである。(P.22)
○科学と技術の基本的な違いは、内容ではなく焦点にあった。
科学は哲学の一分野であり、理解にかかわることだった。
目的は知識の完成にあった。
したがって、それを利用することは、プラトンの有名な主張にあるように、
科学の乱用であり、科学の墜落だった。
これに対し、技術は利用に焦点を合わせていた。
目的は人間の能力向上にあった。(P.46)
●テイラーの手法(P.75)
テイラーが発見した生産性向上の手法は驚くほど簡単だった。
はじめに仕事を個々の動作に分解する。
次いで、それらの動作に要する時間を気k録する。
次に無駄な動作を探す。
(中略)
次に不可欠なものとして残った動作を短い時間で簡単に行えるようにする。
それらの一新された動作を組み立てなおす。
最後の仕上げとして、それらの動作に必要な道具をつくりなおす。
(中略)
簡単に見える。優れた方法というものは常にそうである。
だが、彼がこの方法確立するのに二十年を要した。
○知識労働の生産性を向上させるための条件は、大きなものだけで六つある。
第一に、仕事の目的を考える。
第二に、働く者自身が生産性向上の責任を担う。
みずからをマネジメントする。自立性をもつ。
第三に、継続してイノベーションを行う。
第四に、自ら継続して学び、人に教える。
第五に、知識労働の生産性は量よりも質の問題であることを認識する。
第六に、知識労働者は、組織にとってコストではなく資本財であることを理解する。
(P.80)
○知識労働の生産性向上は、
量ではなく質の面から取り組むべきことを意味するだけでなく、
まず仕事の質を定義すべきことを意味する。(P.81)
○ベンチャーが成功するには四つの原則がある。
第一に市場に集中すること、
第二に財務上の見通し、特にキャッシュフローと資金について計画を持つこと
第三にトップマネジメントのチームを、それが必要となるはるか前に用意しておくこと、
第四に、創業者である起業家自身みずからの役割、責任、位置づけを
決めることである。(P.96)
○チームは一夜にしてならず。機能するには時間がかかる。
相互信頼と相互理解が必要である。
そのために数年を要する。私の経験では三年以上かかる。(P.103)
○彼らは何をしたいかから考える。あるいは、自分が何に向いているかから考える。
しかし正しい問いは、客観的に見て、今後事業にとって重要なことは何かである。
創業者である起業家は、事業が大きく伸びたとき、
さらには製品、サービス、市場、あるいは必要とする人材が大きく変わったとき、
必ずこの問いをみずからに問いかけなければならない。
次に問うべきものは、みずからの強みは何か、事業にとって必要なことのうち、
みずからが貢献できるもの、他に抜きんでて貢献できるものは何かである。
これらの問いを徹底的に考えることによって、
はじめて自分が何をしたいか、何に価値をおいているか、
残りの人生すべてとまではいかなくとも、今後何をしたいか、
それは事業にとって本当に必要なことか、企保的かつ不可欠な貢献かを問うことができる。
(P.107)
○歴史は循環する。しかし、元の位置、昔の問題に戻ったかに見えても、
内容の次元はより高度になっている。歴史は螺旋状に動く。(P.156)
○経済的な機会の存在は、技術そのものの分析によっても明らかにすることができる。
スウェーデンは、技術の分析によって送電技術の世界的なリーダーになった。
彼らは原子力発電ではなく送電技術の開発に資金と労力を注ぎ込んだ。
基本的な技術は七十年前に開発されていた。
技術を分析することによって、
人材や資金の限られた小国スウェーデンが送電技術のリーダーとなった。
その間、アメリカ、ソ連、イギリス、フランス、ドイツ、日本のような大国は、
はるかに多くの資金を間違った分野に投入していた。(P.158)
○西洋ではスウェーデンだけが技術戦略をもっていた。
その成果の一つが送電技術だった。
さらにはスタイルと頑丈さを兼ね備えた自動車の開発であり、
小国という環境条件がもたらした短距離離着陸航空機の開発だった。
スウェーデンの技術戦略は、技術の専門家の手によるものではなかった。
三大銀行の調査陣の功績によるところが大きかった。
科学者や技術者ではなかった。
彼らは小国として、そのもてる資源を科学全般の進歩ではなく、
限られた分野のギャップを埋めることに集中すべきことを知っていた。
○既存の企業において起業家として優れた仕事をする人たちは、
通常それ以前に日常のマネジメントでも能力を示している人たちである。
イノベーションを行うことと、
既存の事業マネジメントすることの両方を行えると見てよい。(P.207)
○イノベーションの機会は、産業の内部に四つある。
第一が予期せぬこと、第二がギャップ、第三がニーズ、第四が産業構造の変化である。
イノベーションの機会は産業の外部に三つある。
すなわち、第五が人口構造の変化、第六が認識の変化、第七が新知識である。
これらの七つの機会は互いに重複する。
それぞれが、それぞのれリスク、むずかしさ、複雑さをともなう。
だがイノベーションのほとんどが、これら七つの機会から生まれている。(P.214)
○イノベーションとは分析的な作業であるとともに、知覚的な作業である。
したがって、イノベーションを行う者はみずから出かけ、
見たり、聞いたりしなければならない。
イノベーションに成功するには左脳と右脳の両方が必要である。
数字を見るとともに、人を見なければならない。
分析を行うとともに、みずから出かけ、ユーザーとなりうる人たちを観察し、
彼らの期待、価値、ニーズを把握しなければならない。(P.223)
○はじめから大がかりな試みが成功することはほとんどない。
しかし、大きな事業に育つか、ささやかなものに終わるかは予見できなくとも、
世界の基準となり先頭を走る事業を生み出そうとしなければならない。
最初からトップを目指すことなくして、イノベーションに成功することはない。
(P.223-224)
○イノベーションには、他のあらゆる仕事と同じように才能、知識、創意が必要である。
しかしそれらのものは当然としても、本当に不可欠とされるものは、
目的意識をともなう激しく集中的な仕事である。
勤勉、忍耐、決意が欠けていたならば、せっかくの才能、知識、創意も役にたたない。
(P.224)
○技術格差が生じたのは、それらの研究成果を製品化し、
マーケティングすることに失敗したためである。
技術格差とはマネジメント上の失敗である。
これこそヨーロッパにとって政府予算よりも大きな弱みである。
金はつけることができる。しかし、科学上の成果を経済的な事業に転換する能力、
すなわちマネジメントとマーケティングの能力を金で買うことはできない。(P.241)
○仕事は奴隷のすることだった。
そしてより多くを生産するための唯一の方法は、
より長く働かせるか、より激しくはたらかせるかだった。(P.264)
○第二次大戦中とその直後、私がはじめてマネジメントについて研究を始めた頃、
マネジメントは部下の仕事に対して責任をもつものだった。
言い換えると、それはボスだった。地位と権力を意味した。
今日にいたるも多くの人が、
マネジメントというとおそらく心に描くであろう定義がこれである。
しかし五十年代はじめにはすでに、
マネジメントとは他の人間の動きに責任を持つものと定義されるようになった。
しかも今日われわれは、この定義さえ狭義にすぎることを知っている。
正しくは知識の適用と知識の働きに責任を持つものである。(P.274)
○産業革命が産業革命たりえたのは、
イギリスに工具製作者というテクノロジストがすでに誕生していたためである。(P.280)
Posted by ブクログ
ドラッカーは経営に携わる人は抑えておくべき書籍だと改めて思った。最近話題のリーンやイノベーションが2005年時点ですでに理解・体系化されて説明されていることに驚きました。
Posted by ブクログ
社会生態学者のピーター・ドラッカー氏は数多くの著作を残しているが、本書は技術に関する氏の著作15点とインタビュー記事を抜粋したものである。
近年になってMOTや技術経営という概念が一般的になったが、技術をマネジメントする必要性を氏は1970年代から提唱している。本書を読めば、最近話題になった数々のイノベーション理論の原点が氏の著作にあることが理解できる。
技術に関わるものにとってはPart2「技術のマネジメント」、Part3「イノベーションの方法論」がも最も興味をひくであろうが、技術と社会の化関わりについて記したPart1「文明の変革者としての技術」、Part4「世界観の転換」にも注目したい。
特に14章「知識の意味を問う」では知識人や技術者の倫理や社会に対する責任についても述べられている。CSRや製造物責任の概念も広まりつつあるが、形式的なものになっていないだろうか?東日本大震災や原発事故に関する様々な論争を見ると、研究者や技術者と社会とのコミュニケーション不足が問題を複雑にしているようにも見える。「知識社会において、最大の問題は知識ある者の責任である」という氏の指摘を改めて自らに問う必要がある。
Posted by ブクログ
各パートの書かれた年代は驚くほど昔なのに、普遍的かつ今でも通用する、というか日本企業が未だ到達していない理論に目を開かされることばかり。単なるテクニックでは断じてなく、哲学のレベルで理論の土台ができていることが、他のビジネス本では類を見ない深さを生みだしているように思う。
Posted by ブクログ
世界で活躍するエンジニアになりたい方に、是非読んでいただきたい本です。一般的に企業などの組織内で、エンジニアとして仕事をする時、それは専門的・分業的にならざるを得ません。よってエンジニアが所属する組織の構造は、縦割り方のピラミッド構造になるわけですが、結果、この構造がエンジニアの生き方を大きく拘束します。技術を使うのではなく、技術に使われるようになります。
そうじゃないだろう!エンジニアだって、もっと自由な生き方があるはずだ!自分と関わる組織の生産性を高め、世界中のプロフェッショナルとワクワクする仕事をする、そんなゾクゾクする働き方があるはずだ!そう強く思う方、ここにそのヒントが載ってます!(ちなみに,この本を読んで,技術者が社会に果たすべき役割を確信し,会社を辞めることを決意しました.)
Posted by ブクログ
ドラッカー3冊目だし、同じようなことが書いてあるわと一瞬だけ思った私。
いやいや、ドラッカーはそんなにうすぺらくはありませんでした。
またしても触発され・・・。
イノベーションは技術ではないというところは昔から思っていた私の意見と一致(おこがましいですが)
ドラッカーに鼓舞してもらいながら事業計画を進めたいと思います。
Posted by ブクログ
理系文系関係とわず、なるほどと思わせる本だと思います。
変化の波を感じたら恐れずに、ただあくまで慎重に、乗っていけばいいんじゃないかな。
進むのにもリスクがあるけど、とどまるのにも大きなリスクがある。大きな変化の時には特に。
Posted by ブクログ
ドラッカーの技術者のための著作。とっつきにくいが、読み進むにつれて、ドラッカーの歴史的事実と技術をふまえた深い洞察に感銘を覚える。
テクノロジーモニタリング(技術観察)、我が社の製品のための顧客と考えてはならないなど、示唆に富んだ内容多い。さすが、エッセンシャルというだけある。プロフェッショナルの条件もそうだが、内容が濃い。
[private]
以下、心に残った言葉
P.8 成長、変化、発展が正常
プロセスにおいては、成長、変化、発展が正常であって、それらのないことが不完全、腐敗、死を意味する。
P.45 放血を葬ったのは、科学知識ではなく、臨床観察
P.46 科学と技術の基本的違い
・科学の目的は、知識の完成
・技術の目的は、人間の能力の向上
P.61 グローバルな競争
IT革命により、地場の小さな市場を相手にするだけの中小企業でさえ、グローバルな競争力を必要とするようになった。
P.62 イギリスの凋落の原因
イギリスは、テクノロジストを社会的に高く評価しなかった。社会の指導層ジェントルマンとしなかった。
P.80 知識労働の生産性を向上させるための条件
1. 仕事の目的を考える。
2. 働く者自身が生産性向上の責任を担う。自らをマネジメントする。自律性を持つ。
3. 継続してイノベーションを行う。
4. みずから継続して学び、人に教える。
5. 知識労働の生産性は量よりも質の問題であることを認識する。
6. 知識労働者は、組織にとってコストではなく資本財であることを理解する。
P.82 知識労働の生産性を上げるために最初に行うこと
行うべき仕事の内容を明らかにし、その仕事に集中し、その他のことはすべて、あるいは少なくとも可能な限り、無くしてしまうことである。
→私見 北原さんのレポートを先に作るというのは、まさにこのことだ!
P.106 トップチーム
実際に必要となるはるか前から、トップチームを構築しておかなければならない。ワンマンによるマネジメントが失敗する前に、そのワンマン自身が同僚と協力すること、人を信頼すること、さらには人に責任を持たせることを学ばなければならない。
P.144 人工爆発をもたらした幼児死亡率の激減の最大の原因
最も注意を払われなかった大昔からの2つの技術だった。一つは、トイレと井戸を離すという、マケドニアではアレキサンダー大王以前に知られていた公衆衛生の初歩だった。もう一つは、1860年頃にアメリカで誰かが発明した網戸だった。この2つの技術が第二次大戦後、急速に熱帯の村落に普及した。途上国の人口爆発の主たる原因となったものが、この二つの技術だった。
P.147 テクノロジーモニタリング(技術観察)
新技術についての予測はどうしても賭になる。間違った技術を奨励したり、最も恩恵をもたらす技術を抑制する危険が常にある。従って、発展途上の技術についてはモニタリングが必要である。つまり、観察し、評価し、判定していかなければならない。
→私見 ソフトウェアの新技術も観察、評価、判定し、取り入れるかどうか常に考えていかなければならない。
P.164 我が社の製品のための顧客→顧客観点へ
我が社の製品について考えている限り、マーケティングではなく販売について考えている。
P.169 イノベーションを可能にするトップの態度
判断だけを仕事とするトップは、アイデアを拒否する。非現実的であるとする。生煮えのアイデアを体系的な行動に転換することをみずからの仕事と考えるトップだけが、イノベーションを可能にする。
P.176 イノベーションの戦略
古いもの、死につつあるもの、陳腐化したものを計画的かつ体系的に廃棄することから始まる。イノベーションを行う組織は、昨日を守るために時間と資源を使わない。昨日を捨ててこそ資源、特に人材という貴重な資源を新しいもののために解放できることを知っている。
P.179 既存の事業とイノベーションの進み方
既存の事業においては、今いる場所から、行こうとする場所へと仕事を組織する。これに対しイノベーションにおいては、行こうとする場所から、今しなければならないことへとさかのぼって仕事を組織する。
→私見 吉越さんや、クリティカルチェーンにおける、outputから遡る計画と同じ考え方。
P.210 得意分野でイノベーションを行う
いかなる組織であろうと、得意分野以外でイノベーションを行おうとしても成功することはない。イノベーションが多角化であってはならない。いかなる利点があるにせよ、多角化はイノベーションや企業家精神と相容れない。理解していない分野で新しいものを試みるのはむずかしい。
P.214 イノベーションの機会
産業の内部
1. 予期せぬこと(予期せぬ成功)
2. ギャップ(ニッチ)
3. ニーズ
4. 産業構造の変化
産業の外部
5. 人口構造の変化
6. 認識の変化
7. 新知識[/private]
Posted by ブクログ
始めて読むドラッガーの技術編。三部作の後に発行されているので、三部作と重なる論文も多い。
技術革命(イノベーション)によって、社会、産業革命、テイラーの仕事の革命、IT革命と次々時代に変化してくことが語られている。
ドラッガーの言う歴史の流れの中で、社会が産業が変化していくことがわかれば、時代の中での現在位置がわかると思う。
順番からいえば、はじめて読むドラッガー3部作を読んでからよんだほうがよいかもしれないと思った。
Posted by ブクログ
現代社会における技術の在り方、特にイノベーションと、その体系的な管理法について多くのことを学べた。また、これからの労働はどう変化していくのかについても記述されている。
非常に読みごたえがあるが、ある程度の科学史の知識が無いととっつきにくい印象。
Posted by ブクログ
イノベーションとは、天才のひらめきではなく仕事である。みずからのアイデアと知識を行動に結びつけるうえで必要な技術のマネジメントを説く。ドラッカー技術論の集大成。
Posted by ブクログ
ドラッカーの本は経営者向けのマネジメント系の本が多いのですが、これは技術者向けの本です。技術者の持つ技術が社会や顧客に貢献するためには、何に配慮すればよいかについて述べられてます。つまり、組織の中で技術者が貢献するためには、誰がなぜその技術を求め、誰がどうやってそれを普及させていくかまでイメージすべきと説いており、それができる人をテクノロジストと定義しています。また、技術者で無い人が技術と技術者をマネジメントすることの重要性にも触れています。実例と理念のバランスがよく、イメージがつかみやすいです。ドラッカーや技術が社会に与える影響に興味のある理系の人は必読です。
Posted by ブクログ
読んでいて、かなり苦痛な本だった。
テクノロジストとは、知識労働者のうち、肉体労働も行うもののことだそうです。
生産性をあげるには、という話だけ少し興味があって、
どういう仕事なのかを認識する
仕事の品質をあげる
知識労働者であることを意識する
だそうです。確かに、と言えなくもない。
あとは流し読みした。
Posted by ブクログ
色々な論文や著作からの日本オリジナル編集版という事で「短編集」の趣でしょうか? 全体を通しての繋がりという意味では不満ですが、一つ一つの文章に込められたメッセージはむしろ「濃い」。
科学と技術が結びついたのはむしろ近代であり、それ以前は科学とは芸術、哲学の分野であった、とか、近代の労働をめぐる議論は、思想の問題ではなく、むしろ生産性の向上をどう扱うかという問題であるとか、とにかく刺激的な議論が満載でした。あと、14章「知識の意味を問う」での、知識が中心となる社会が来ることは断言できるが、それがどういう社会になるかは自分にも判らない、という話が、なぜか心に残りました。
Posted by ブクログ
成果に責任を持つマネージャーについて論じたのが『マネジメント』とすれば、こちらはアクションそのものに責任を持ち実行する知識労働者≡テクノロジスト(要は現場の人)を論じた本。とは言えそこはマネジメントの大家ドラッカー、テクノロジストを如何にマネージするか、について書かれているので、正確には『マネジメント』の部分集合(現場のヒトのマネジメント)を深化させた本、ともいえる。
最初の1/4と最後の1/4、つまり本書の1/2は技術史に関する記述に充てられているが、マネジメントに直結する部分が少なく、本書を手にする多くの人にとって、あまり意味のあるものとは思えない。
残りの1/2には、示唆に富む内容が含まれるが、上記のため、マネジメントを考える上で有用な情報の密度は『マネジメント(エッセンシャル版)』に比べて格段に劣る(そもそも「エッセンシャル版」なのだから密度が濃いのは当然といえば当然だが)。
技術史に関する記述を脇に置くと、本書を要約は次のとおり:
・知識労働の生産を向上させる条件は以下:
①仕事の目的を自ら考えさせる
②生産性向上の責任を担う、つまり自らをマネジメントする
③継続してイノベーションを行う
④継続して学び、人に教える
⑤量よりも質を重視する
⑥知識労働者はコストではなく資本財
・ベンチャーのマネジメント
①想定を市場に合わせて変える(市場の反応は得てして予期せぬものとなる)
②キャッシュフロー計画を持つ
③トップマネジメントのチームを事前に用意しておく
④創業者の位置づけを自ら、組織にとっての必要性と己の強みを軸に決める(場合に応じて自らの役割を限定し、必要な場合は去る)
・イノベーションの組織と戦略
①外の世界にどのような影響を与えたいのかを定義づける
②リスクと不確実性を区別し、前者に基づくイノベーションを管理しつつ、後者に備える
③既存の事業を持つ場合、イノベーティブ事業と既存事業のバランスをポーロフォリオ上で取る
④イノベーティブ事業と既存事業で評価基準を分離する
⑤トップが新しいアイディアを奨励し、成果に責任を持つ
⑥イノベーティブ事業と既存事業とで、組織を分離する
Posted by ブクログ
世界で活躍するエンジニアになりたい方に、是非読んでいただきたい本です。一般的に企業などの組織内で、エンジニアとして仕事をする時、それは専門的・分業的にならざるを得ません。よってエンジニアが所属する組織の構造は、縦割り方のピラミッド構造になるわけですが、結果、この構造がエンジニアの生き方を大きく拘束します。技術を使うのではなく、技術に使われるようになります。
そうじゃないだろう!エンジニアだって、もっと自由な生き方があるはずだ!自分と関わる組織の生産性を高め、世界中のプロフェッショナルとワクワクする仕事をする、そんなゾクゾクする働き方があるはずだ!そう強く思う方、ここにそのヒントが載ってます!
BLS中部推薦/元代表 梅舘