あらすじ
5万両は誰の手に!? 江戸の裏金融界を舞台に、騙し騙され、大勝負!――巨大な騙(かた)りにまんまと引っかかった札差に泣きつかれ5万両の奪還に乗りだしたのは、江戸の裏金融界でその名を知られた「いかずちの弦蔵」。「一番大事なことは、カネをどう受け取るかの段取りだ」――江戸と大坂を股にかけ、弦蔵と騙りの一味が丁々発止の頭脳戦を繰り広げる! 迫力と興奮のノンストップ傑作時代小説。
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Posted by ブクログ
江戸を舞台にした「借金取り」VS「詐欺グループ」の冒険小説。ミステリーというよりは男気小説とでもいうべきか。
登場人物達の男気というか、カッコ良さを読む小説なんだと思う。稲妻屋の面々は勿論のこと、猪牙船の漕ぎ手、しゃがみ屋、大金持ちの伊勢屋に至るまでとにかくカッコ良い。生き方の覚悟が決まっているのだ。
こういう人々のブレない生き方を読むとフラフラ生きている自分がホント情けなく思えてきて、まずは形からと、日の出にむかって礼拝するとか、朝ご飯をしっかり食うとか、身体を鍛えるとか…そういうことから始めたくなる。
朝ご飯で思い出した、この小説でいちばんかっこよいのはおきち。稲妻組棟梁弦蔵の奥さんであり、稲妻組の雑務を一手に引き受けているお方。気の配りよう、ご飯の美味しそうなこと、いざという時のキップの良さ、美貌…どれをとっても文句なく、この人あっての稲妻組なのである、先にも書いたように男気を読む小説なのだが、一番魅力的なのは女性のおきちというところが、この本の良さでもある。
残念なのは、続編がなさそうなところ。和泉屋との決着もまだついてないし、稲妻組をはじめとする登場人物たちがこのまま埋もれていくのは、いかにも惜しい。
山本周五郎→藤沢周平→山本一力と続く、時代小説の大きな枝。この枝もグイっと掴んでおいかけてみたくなってきたぞ。