あらすじ
政夫と民子は仲の良いいとこ同士だが、政夫が十五、民子が十七の頃には、互いの心に清純な恋が芽生えていた。しかし民子が年上であるために、ふたりの思いは遂げられず、政夫は町の中学へ、民子は強いられ嫁いでいく。数年後、帰省した政夫は、愛しい人が自分の写真と手紙を胸に死んでいったと知る。野菊繁る墓前にくずおれる政夫……。涙なしには読めない「野菊の墓」、ほか三作を収録。
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Posted by ブクログ
久々にこんなにピュアな恋愛小説読んだ…。この時代を生きたことはない筈なのになんかリアル。伊藤佐千夫の作品にぐっと興味が湧いた。
終始主人公視点で進むのだけど、民子を礼賛する言葉はほとんど内面に関するもの。外見や性愛に囚われない、イノセントな恋愛だということを示してる。主人公の愛情はヒロインが他人の元へ嫁いでも何ら変わらない。美しすぎる。ムリ。泣いた。素敵すぎる。
この時代の恋愛小説といえばひたすら女性が耐え忍ぶ精神性を尊ぶものが多い印象があって、個人的には政夫の誠意が光る作品だったかも。
Posted by ブクログ
兄嫁なんだアイツ絶対に許さねぇ!
幼さの残る二人が、周りから「デキてんじゃないの?」と言われた途端に意識して恋に落ちてしまうっていうのがなんともリアルで可愛くて良かった。
映画版はきっとラストが改変されてハッピーエンドだろうと信じてたんですけど、やっぱり民子は死ぬんですね。つら……
Posted by ブクログ
久しぶりに胸きゅん。
普段、イヤミスとかホラーとかおどろおどろしい本ばっかり読んでる自分の中にまだこんなピュアな気持ちが残っていたのかと驚かされるほど、可愛いやりとりにきゅんきゅん。
だからこそ、ラストが哀しい。
Posted by ブクログ
北村薫著、秋の花より。
再読するたびにいつか読もうと思っていたコチラをようやく手に取る。
普段あまり遣わない漢字や言葉が多くて、そういえば私、小説たくさん読んできたつもりだったけど、いわゆるクラッシックな名作っていうやつはあんまり読んできてなかったな、ということに思い至った。
と、いうことで読み慣れない古い言葉や漢字に悪戦苦闘…、
短編で良かった。
お話のスジは主人公政夫が、思春期の入口にいた頃、仲の良かった2つ年上の従姉妹とのその関係を周りにとやかく言われ始めたことから意識してしまい、お互いプラトニックな恋心を通わせたタイミングで親や親戚からその仲を引き裂かれ、従姉妹は望まぬ結婚をさせられ、失意のうちに若くして亡くなり…という思い出を振り返って語る、というもの。
従姉妹…民子の亡くなった理由としては嫁に行き、身重になったものの、子どもはおりてしまい後の肥立ちの悪さゆえ、ということらしい。
縁談を断る民子に、政夫の母が言い放つ言葉がなかなか厳しく、また、嫌がる彼女に強引に縁談を勧めた家族の圧も結構しんどかったことだろう。
実際、民子の死に際して政夫の母も民子の家族も大きな責任を感じている。
物語は過去の政夫の視点で進む。
民子の死を伝えた時の、母の詫び言、
墓に参った政夫を出迎えた民子の家族の詫び様に、1番感情を動かされた。
政夫に民子との仲を引き裂いたことを涙ながらに詫びる。
さらに政夫に民子の死、その一部始終を涙ながらに聞かせる。
…いやいや、皆さん、
それでその罪悪感から逃れようとしていませんか?
…なんなんだ、この人たち、と。
秋の花の正ちゃんは、政夫に随分ご立腹でしたが、私は民子が亡くなった後の政夫の母や、民子の家族の詫びようになんだかとてもイライラしてしまった。
いやマジで、
民子の嫁行った先のお家の方にもめちゃくちゃ失礼だろうよ。
2人で茄子をもぐシーンや、綿の畑で過ごす時間、野菊と竜胆のやりとりなど、繊細で美しいところもあったけど、
実はイマイチ政夫や民子にも共感できなかったんだよな。
時代認識の差なのかなー…。
共感ではないが、同情するとしたら、民子の嫁ぎ先の旦那さんに1番同情した。
(おそらく待望のお子さんも亡くなってるわけだし)
とは言え、読み慣れない文体にも関わらず、なんだかんだで感情を動かされる。
美しい悲恋に感動で涙が流れる…という動かされ方ではないけど、集中が途切れず一気に読めたのも良かった。
あ、ほかの3編もじわじわ面白かったです。
Posted by ブクログ
情景描写の美しさや、若い二人の初々しい恋愛がとても素敵だった。
ただ、政夫は恋に恋してるだけのような感じがしてしまった。本当に民子のことを思ってるんだったら会いに行ってやれよ!まあ、15歳だったらそんなもんかなとは思うけど。
あと、民子も最後に握るのは写真と手紙は違うだろ。自分の死後にそれをみた母親達がどんな気持ちになるのか想像できない子じゃないと思うから、もしかしたら無理矢理結婚させられた腹いせとして、自分の死後に傷つけてやろうという魂胆があったのかもだけど、もしそうじゃないんだったら竜胆を握っておけばよかったのに。せっかく政夫=竜胆という2人だけの約束事があったんだから。