あらすじ
生きることは闘いだ。他人はみな敵だ。平和なんてありはしない。人を押しのけ、奪い、人生の勝利者となるのだ――貧しさゆえに充たされぬ野望をもって社会に挑戦し、挫折した法律学生江藤賢一郎。成績抜群でありながら専攻以外は無知に等しく、人格的道徳的に未発達きわまるという、あまりにも現代的な頭脳を持った青年の悲劇を、鋭敏な時代感覚に捉え、新生面を開いた問題作。
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Posted by ブクログ
めっちゃ面白かったー!!一気読み。
しかも沢山メモとりながら読んだ。
なんなら結末はあらすじから容易に想像できるのだけど、それに至るまでの主人公の考え方や過程に読み応えがあった。
最低な男というのが一般的な感想だと思うけど、男とか女とか超越した視点で楽しめた。
「誘惑とは結局、相手にあるのではなくて、自分の情感の中にあるものだった。」など、名言ばかりじゃないの・・。
主人公の江藤が法学生ということで、ところどころに法律やそれに基づいた論理的な思考が出てくる。が、自分の都合の悪い時だけ論理が崩壊する。
なるほど、そう来るか、、!と笑
それにしても法律には「愛」という字は一つも出てこないというのは成る程と思った。
非嫡子についての表現も興味深い。
解説にも書いてあったけど、いくら優秀で将来有望な学生とはいえ、世間知らずというか、幼稚というか、ある意味純情なところが彼を躓させている。
なんだかんだ言って母ちゃんの方がよく分かっていた…。
古い作品だけど読みやすいので是非若い人にもよんでほしい。
男女の駆け引きという点で東野圭吾の何某かや、名作・◯◯器を思い出した。切り札を使わないといけない関係というのは切ない…。
Posted by ブクログ
江藤は精神面であまりに幼かったのだろう。追い詰められて観念的になってしまった。そういう意味では冒頭に出てきた左翼学生の三宅と同じであった。
まったくもって,人間は危うい期間を,人生の中で過ごさなくてはいけないのだなあと思った。
Posted by ブクログ
打算的な賢一郎くんに「いつか天罰が下れ」と思いながら読んでいた。エゴイズムは仕方がない。みんな自分をいちばん大事にするのは当然。とはいえ、それを正当化するための屁理屈みたいな理論にむかつきますよね。たしかに「よく考えている」とも言えるけれど、ほとんどが保身のための言い訳なのだから。男が女に対してこういう屁理屈をぶつときは、たいてい「オレは言ったよ」「お前は頷いて聞いていた」という言質をとるためなのではないかしら。本当に自信のある生き方をしているのなら、こんなに無理くりな屁理屈はこねないでしょう。「いうまでもなく、それは彼のエゴイズムだった。あるいは臆病さ、または狡猾さ、そして小さな賢明さでもあった。」というところは、「まさに」なんだけれど、賢明さが最後に来るのがいかんとも。野心を持つのもいいけれど、人には分相応というものがあり、適当なところで折り合いをつけながら生きているというのが現実なのでは。理想と現実についても、恋愛と結婚についても。登美子も保身のために必死であるけど、妊娠出産の当事者だから賢一郎くんよりは同情の余地がある気がする。少なくとも殺されるほどは罪深くはないのでは。
お母さんがお弁当や着替えを差し入れたり、それを「ありがたいな」という刑事さんの、ふつうの人情のようなものに最後に触れられるのは、救いみたいな気がした。登美子が主人公の『裏・青春の蹉跌』が読みたい(存在しません)。