あらすじ
指名手配中の弟の居場所を捜査当局に教えなかった兄は、その行為を責められるべきなのか? 論議を呼ぶテーマの向こうに見え隠れする「正義」の姿とは? 日常のアクチュアルな問いに切りこむ斬新な哲学対話が、世界の見方を大きく変える。知的興奮に満ちた議論は感動のフィナーレへ。NHK教育テレビで放送された「ハーバード白熱教室」の第7回~12回、および東京大学特別授業の後篇「戦争責任を議論する」を収録。
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Posted by ブクログ
講義の中で様々な意見を指揮者のようにコントロールし結論へとまとめていく教授が、珍しく慌てる一場面が合ってw。
東大での講義は日本でもよく取り上げられる問題。歴史は継続しているとはいえ、ではいつまでその問題が続くのかは疑問。今後も秀吉を理由に問題が持ち上げられないとはいえないのではないか。
過去の古い記録を根拠に日本海を東海と改めようとしているのだから、いつでも過去の歴史が突然頸を持たけ噛み付いてくる可能性はあるような気がする。
中華思想や北と南の建国神話が根づいている以上、問題が解決する道は遠そう。
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正義を考えるためには善を考えることが必要。
善を考えるためには「原理と具体例を相互に往復しながら考えていくというアプローチを取るべき」
by ロールズ(反照的均衡)
カントの考えでは、人間が自律的に行動していると言えるのは、義務という名の下に何かを追求している時だけで、自分の個人的な利益のためではなく義務のために、何か善い道徳的な行為をしているときだけ。
その行為は自由から生じている。
なぜなら強制されたのではなく、道徳法則を受け入れることを自分で選んだから。
道徳法則は主観的な条件に左右されないので普遍的な法則である。
純粋理性とはどんな外部条件にも左右されず自分自身に適用されるもの。
「正義の原理は、仮設的契約から最もうまく導かれる」by ロールズ
「すべての正義は差別を内包する」byアリストテレス
アリストテレスの考え方は
「目的論的道徳理論」という考え方
目的、目標から論理を組み立てる
アファーマティブアクションへの反論を「大学教育にふさわしい目的や目標とは何か」という問いに置き換えることは、目的論的道徳理論の考え方
アリストテレスの政治論
政治とは、善い人格を形成すること、市民たちの美徳を高めること。つまり、善き生をもたらすもの。
カントやロールズの政治論
政治は私たちを善くするものではなく、私たちが善や価値、目的を選択する自由を尊重し、他者にも同様の自由を認めること。
コミュニタリアニズム
「自己というものは、ある程度までその人が属するコミュニティや伝統や歴史によって規定され、負荷をかけられている存在である」という考え方。
負荷ありし自己
コミュニタリアニズム批判
「責務が、そのコミュニティの構成員というアイデンティティによって定義されてしまったら、責務どうしが対立したり、重複したり、競合したりするかもしれない。そこに明らかな原則はないから」
Posted by ブクログ
前回に引き続き面白い議論がたくさんあった。やっぱりハーバードなだけあって、学生の鋭い視線もすごい。指摘や批判も的確。そのような多様な意見を拾って、議論を上手にファシリテートするマイケル・サンデルも素晴らしい。自分も多角的な視点を持てるようになりたい。
同性婚、愛国心・忠誠心のジレンマ、アファーマティヴ・アクションなど社会問題は判断が難しい。自分でも何が正しいのか結論が出せない。
quote:
この講義の目的は理性の不安を目覚めさせ、それがどこに通じるかを見ることだった。我々が少なくともそれを実行し、その不安がこの先何年も君たちを悩ませ続けるとすれば、我々は共に大きなことを成し遂げたということだ。
Posted by ブクログ
煽り重視の敵対的テレビ討論にはない落ち着いた状況で冷静に意見交換していく中でいろんなことを考えさせる講義。建設的な話はこのようにする。という感じ。結果を求めるシビアな話に埋没しがち飛ばされがちな対話がここにはある。
Posted by ブクログ
面白かった。話の内容はもちろんだけど、議論の運び方とかが上手い。何か明確な答えが出るわけでもないが、その過程がいかに重要かってことを再確認させられる。
上巻に比べて急に議論が高度化する印象だけど、じっくり読めば理解に難くはないはず。
上下巻どちらも巻末にサンデル教授の東大での講義が前後編にわかれて収録されていて、なんでこんなややこしいことするんだと思ったが読んで納得。東大での講義はハーバード大での講義を圧縮したもので、つまり上巻での議論と東大講義前編の議論が対応している。下巻についても同じ。読んでみればいっそう理解が深まるし、ハーバード大の生徒と東大生の違いというか、アメリカ人と日本人の考え方がこうまで違うのかみたいなこともなんとなくわかって面白い。
Posted by ブクログ
マイケル・サンデル教授の政治哲学講義録の下巻。
能力主義やアファーマティブ・アクション、愛国心、同性婚等のテーマから「正義」とは何かを解き明かします。学生から積極的な発言を引き出すスタイルは、聴講する側の知性も問われます。日本の大学の講義とは随分と違う印象。
Posted by ブクログ
ハーバード大学で大人気の政治哲学の講義と東大安田講堂で行われた特別授業を書籍化した下巻となります。「正義とは何か?」この単純にして最も難しい命題に挑戦するサンデル教授と受講生とたちとの掛け合いに注目。
この下巻は、NHK教育テレビで放送された「ハーバード白熱室」の第7回~12回まで、および2010年8月に行なわれた東京大学特別授業の後篇「戦争責任を議論する」を収録したものになります。
僕がこういう講義に魅かれるようになったきっかけとは、現在は東進ハイスクールで教鞭をとっている英語講師の今井宏先生が大学時代の恩師の授業をはじめて受けたときにちょうど、サンデル教授が展開しているような授業たったと参考書に収録されているエッセイで述懐していたからです。自分がかくまっている人間を尋ねて人が訪ねてきたときにその人はいないと答えるということは果たして正義か否かという問題は、あんまり詳しいことはここでは言えませんが、この命題に近いことが実際の生活のうえで起こったことがあって、本当に考えさせられるものがありました。
そして、東京大学で行われた講義には、前の世代で行われた過ちを今の世代が背負うべきか?という命題には。すごくデリケートかつ普遍的なことで、こういうことがものすごくまじめにやり取りされるのは、一般社会の営む上ではほぼありえない話で、普通は何も考えることなく通り過ぎていくものですが、いざ、この問題が浮かび上がってきたときに、きちんと立場を明確にできるのか?などと読んでいて自分に問いかけました。答えは出ていませんが…。
この本はできることならば上巻とあわせて一気に読まれることをお勧めいたします。
Posted by ブクログ
『これからの「正義」の話をしよう』で有名になったマイケルサンデル。
政治哲学をテーマに、生徒とディスカッションしている様子が記載されている。
哲学や道徳、倫理について、深く深く思考を張り巡らせることが出来る上に、サンデルの超絶プレゼンも学べる1冊。
アリストテレス、ロック、カント、ベンサム、ミル、ロールズ、ノージックといった古今の哲学者を、巧みなリードのなかで把握できるのも素晴らしい。
価値観を右往左往してパラダイムシフトが起きる超良書。
Posted by ブクログ
格差原理、愛国心、同性婚
戦争責任は次の世代も負うべきか、
アメリカ大統領は原爆投下を謝罪すべきかなど、
一つ一つの問いかけが絶妙です。
必ずしも正しい答はなくても、
考えることの重要性に気付かされる。
Posted by ブクログ
哲学に答えは無いのかもしれない。それでも皆で考え、意見を出す。それにより、自分の意見を言うことで自信を得たり、様々な意見があることを知り得たりする。一人一人が何が正しいのかよく考え、行動することが、社会をより良いものにしていく原動力なのかもしれない。
Posted by ブクログ
哲学の問題をわかりやすい事象にたとえて議論するスタイルはすばらしいが、問題そのものは非常に難しい。考えることが大切だというのはわかりますが(^O^)
Posted by ブクログ
ハーバード大学の人気講義の翻訳本(台本)。
正義とはなにか…事例を交えながら、生徒との会話で講義を作り上げていく。
下巻は上巻の続きですが、段々と生徒のキャラクターが浮き出てきたところが、また面白い。ハナの顔が見たいな~!
サンデル先生の話が上手いから、人気講義になるのもよくわかる。言語を越えて、彼の授業(の翻訳本)に触れることが出来るのはありがたい。
結局、偉大な哲学者たちにもひとつの答えを出すことができないけれど、避けられない問題があって、いろんな考えで問題をみて共に考えていくことが重要だってことかな。
なにが私にとって正義と思えるのか、落としこめるところまではまだこの本を読めていないけれど、はじめはそれでもいいんだと思う。哲学的思考を知り、様々な視点で考えるだけでも、得たものはあった。
☆内容☆
指名手配中の弟の居場所を捜査当局に教えなかった 兄は、その行為を責められるべきなのか?論議を呼ぶ テーマの向こうに見え隠れする「正義」の姿とは?日 常のアクチュアルな問いに切りこむ斬新な哲学対話 が、世界の見方を大きく変える。知的興奮に満ちた 議論は感動のフィナーレへ。NHK教育テレビで放送 された「ハーバード白熱教室」の第7回~12回、およ び東京大学特別授業の後篇「戦争責任を議論する」 を収録。
Posted by ブクログ
この本を読んで思ったのは、悩み多き自分の主張を確かめたくて
ある人の主張や理屈に従い、誰かの考えを受けいれるだけなら
答えだけを壁にコピーして貼って毎日拝めばよいだけ。
自分の主張を表し・現し、
誰かの主張に(従うためではなく)耳を傾け、
自らの主張を別視点から疑問を持って見直したり、
考えた末に受け入れたりの過程とソレを上手く導く
「対話」と「議論」の本来あるであろう親しみやすさと美しさ。
この手の機会に接して思うのは、「自分はわかっている」
「自分以外はわかっていない」という意識がどこかに働き
答えなぞ録に聞かず本当は「議論」していないのではという懸念。
議論はとかく戦わせたという状態に価値や意味を見出しがちだが
そこに満足すると誰にも何も生み出していないのではないかと
現在の生活と照らしてみる。
Posted by ブクログ
ハーバードの大学教授が哲学を身近に感じる問題に問いかける
NHK白熱教室の講義録下巻
読んでいるとだんだん脳が疲れてくるけど、
それはたくさん考えさせられている証拠
自分の信念のもとは自分が育ったコミュニティ
基本はそれを裏切ることはできない、けどそれは決して善ではない
Posted by ブクログ
「犠牲になる命を選べるか」「徴兵制の是非」「同性婚について」など馴染みやすい命題で議論が展開されますが、理解するにはある程度、哲学用語の知識が必要だと思いました。
「格率」自分で自分に定めた行動の法則。信念とも言い換えることができる。
「道徳法則」人間界には従わなくては道徳法則があるとカントは考えた。道徳的な行いを善しとする理性は人間だけに先天的に備わっているからである。
「定言命法」道徳法則は目的を達成するための手段ではなく、目的そのものでなくてはならない。
例:人に親切にすることに目的はない。なぜなら親切にすること自体が目的だから。
自分の利益や要求、特別な状況がほかの人のそれよりも重要であるという理由で自分の行動を正当化するべきではないというのが定言命法の特徴であり要求である。
自死について:生命の権利はとても重要で、とても基本的なものなので不可譲であり、自分でも放棄することはできないという。私の命は私自身の所有物ではない。なぜなら、他の人々が私に頼っているかもしれないから。人生を生きるとは、自分の命を絶って単に自由に放棄することはできないという、他の人に対する責任を含むかもしれない。
人の尊厳を尊重するとことは、人を単なる道具とみなすのではなく、目的そのものとして考えることを意味する。だからこそ、他の人の福祉や幸せのために人を使うのは間違いである。
恵まれた者は、恵まれない者の状況を改善するという条件でのみ、その幸運から便益を得ることが許される。
Posted by ブクログ
下巻も引き続き読んでみる。
上巻よりも若干難しくて理解しにくいところがあったので、何度も読み返したりしていて時間がかかった。
でも、やっぱり人を引きつけて惹きつける、この方の話術はすごいと思う。生徒のいろんな意見を分類したり、ぐちゃぐちゃになりがちな討論をきちんとまとめあげている。
人気講座なのも納得。
その場にいたら、すごく興奮するんだろうな。
Posted by ブクログ
上巻と比べて、議論がやや抽象的になっていく。多数の例や生徒との対話を通じて、理解を促しているけど、何回か読み直さなきゃ理解が追いつかなかった。正義を正義たらしめるめのはなにか、深いテーマだった。
今で言うアクティブ ラーニングみたいなこの授業を是非受けてみたい。
Posted by ブクログ
うそをつかない=カントは嘘も方便は賛成していないが積極的な嘘でなければ許容している。
ロールズ=無知のベール。功利主義を批判した。
公正な機会均等=能力主義、これだけでいいか。才能に恵まれて得た富を分配する方法を変えればいい=格差原理。恵まれた者は恵まれない者の状況を改善するという条件でのみ、その幸運から便益を得ることが許される。
アファーマティブアクション
テキサス大学のロースクールの合否決定基準。人種で差別することは違法か。多様性の促進とどちらを取るか。
アリストテレスにとって正義とは、人々に値するものを与えること、与えられるべきことを与えること。
最高のフルートが与えられるのは、最高のフルート奏者。その理由はそれがフルートの目的だから。目標や目的のことをテロスという。物事のテロスを決めてそれが叶う分配が正義にかなった分配。
目的論とも呼ばれる。
PGAはカートの使用を認めるべきか。
サンデル教授の最終目的はコミュニタリアニズム。
Posted by ブクログ
191112
政治哲学の勉強なのだが、ちょっと小難しい。
最近すっと入ってこないのは、Youtubeでかんたんに学べるようになったからかな。
集中面白く読めるように、読書習慣を戻さないと。
Posted by ブクログ
-「私は誰かの息子か,娘であり,どこかの都市の市民であり,この一族,あの民族,この国民に属している」「したがって,私にとって善いことは,このような役割を生きるものにとって善いことであるはずだ。私は自分の家族,都市,民族,国民の過去から,様々な夫妻や遺産,期待や義務を受け継いでいる」
-「本当に有徳な人は、最も遠い他人を助けるためにも、友人に対するのと同様に迅速に駆けつける」「完全に有徳な人に、友人はいないだろう」
-すべての正義は差別を内包する
本全体があんまり一つの主張をしないのでちょっと強い感想を持ちにくいんだけど、個人的に残ったのはここら辺かな。人類皆に公平というか正義を持つなんてのは難しく。個人はそれぞれに絶対に偏っている。そんな小さな自分の正義の中で生きているだけで、所謂「正義」というのはそれをどうにか最小公約数としてまとめているだけなので、結局は脆いし個人の単位では簡単に壊せる。
Posted by ブクログ
屋上屋を架して明らかになったのはアメリカ的結婚の定義だけか、と思ったら、永遠に解決できない問題を提起するのが目的、か。
確かに、折に触れてそういう根源的なことを考えると、自分の中の意識の変化がわかって面白いな。
Posted by ブクログ
≪目次≫
第7回 嘘をつかない教訓
第8回 能力主義に正義はない?
第9回 入学資格を議論する
第10回 アリストテレスは死んでいない
第11回 愛国心と正義 どちらが大切?
第12回 善き生を追求する
東京大学特別授業(後半)
特別付録 「それをお金で買いますか」より
≪内容≫
ハーバード大の講義録の下巻。私には相変わらずついていけない部分がある。これを読むと、難しい世の中になったと自覚。いろいろと考えないと生きていけないのだが、あまりに日本人は”能天気”だと思う。
Posted by ブクログ
入学審査の回は盛り上がりました。志願者の存在そのものが入学前から入学に値すると判断することは出来なくて、志願者はハーバードの審査により、ふるいにかけられていくことが納得できる説明でした。優秀な私が落とされて、優秀でないがマイノリティに属する誰かが合格したことがオカシイとは、志願者はいえないのだと思いました。