【感想・ネタバレ】叫びのレビュー

あらすじ

聞いて欲しい人が一人おるんです。政と聖を描く芥川賞候補作。早野ひかるは「先生」に打ちのめされ、銅鐸と土地の来歴を学び始める。ここではかつて罌粟栽培と阿片製造が盛んで、満州に渡って「陛下への花束」を編み、紀元2600年記念万博を楽しみにしていた青年がいた。いつしか昭和と令和はつながり、封印されていた声が溢れ出す。大阪と大陸で響き合う夢とロマン、恋愛政治小説。

...続きを読む
\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

このページにはネタバレを含むレビューが表示されています

Posted by ブクログ

ネタバレ


面白かったです。この物語を軽妙に感じられるのは関西弁のトーンによるところが大きいかも。
主人公には同情というかなんとなく親身になってしまうところがあって、切なかった。
空気も読めるし、行動力もあって、いろいろ解ってるのに不器用なんだよなぁ、、。ちょっと異常な感じで独りで話す人、私はわりと好きです。
先生に出会ってしまったのが運の尽きだったか。銅鐸の音に引きつけられて出会う場面はすごく面白かったけど。いややっぱり本人の性質による展開か。

茨木童子は聞いたことがあったけど、銅鐸やオニくる、二反長音蔵によるケシ栽培などは初めて知ったので興味深かったです。
関係ないけど、漫画『満州アヘンスクワッド』読もかな、と思いました。

0
2026年05月09日

Posted by ブクログ

ネタバレ

芥川賞受賞作品ということで読んでみた。

主人公の早野の不器用な姿と
関西弁が面白くて引き込まれる。

過去と現在が重なりあって、
不思議な読後感である。
全体的に短くて読みやすいが
難しい漢字が多かった。

0
2026年04月19日

Posted by ブクログ

ネタバレ

第174回(2025年下期)芥川賞受賞作。
純文学的なものがこれといって好きなわけではないけれど、だからこそその方面のテイストの物語を読もうかなとなるとやっぱりなんらかの受賞作を、という選定基準になってしまう。

小難しそうなイメージがつきまとう芥川賞受賞作、実際本作も出だしから?で意味が頭に入ってこない文が続くのだが、この調子でずっといくのかと思いきや急に会話主体になり安易な展開に。

主人公早野は、意中の彼女と結婚前提の同棲生活を送るため、2人の中間地点ということだけで馴染みなき土地茨木にに2DKの家を借り越してきた。
だが、その彼女とは連絡がぱたりと途絶える。
自暴自棄になり、酒を浴び、キャバクラ、風俗通いをするうちに蓄えも底を突き、いよいよ首が回らなくなってきた中で川沿いの道をふらふら散歩していると聞こえてくる鐘の音。
音に誘われ畑の中にぽっかり空いた穴を進んでいった先で出会った銅鐸をつくる男。
生活保護を受けながらも、聖の必要性という謎の理屈を盾に働きもせず銅鐸づくりに明け暮れている模様。
この男を先生として師事し、何やら危うき熱中に浮かされながらバランスを取り戻していく早野の行く末、という物語。

読みやすい物語と、その中に時折現れる憑依され独白が始まったかのような小難しい理屈が織りなすうねり。
その物語も、銅鐸づくりに入れ込む男というなんとも突飛だがはっきり言ってどうでもいい話なのに何故か読んでしまう。
早野の精神的な危うさと、アヴァンギャルドでありながら妙な芯を感じる先生の魅力に、何このバランス!となり駆け抜けるように読むことになった。

だが、結局何の話だったんだろうという空虚さの残る結末。
この何とも言えなさ加減を上手く言語化する能力と根気が今の自分にはない。

0
2026年05月30日

Posted by ブクログ

ネタバレ

「せやし僕の育てた罌粟畑を陛下に一回だけでも見てもろて、よう頑張ったな、て言うてもらいたいねん」と川又青年は言った。もう走り出していた。「せやなくても、陛下のために花畑が、今も向こうで咲き誇ってますって、せめてそれだけでもお伝えせんことには」(p130)

ここの一文だけが、今、自分の置かれている状況と重なって、心に刺さってしまった。戦時中に、国のため、植民地を回って罌粟畑作りをした川又青年は、戦後、自分のやってきた仕事を全否定されることになる。一度だけでも見てもらいたい。「よう頑張ったな」と言ってもらいたいという言葉には、切実な思いがあるように思う。
人のやってきた仕事などというものは、大なり小なり、よかったこともあり、悪かったこともあるようなものである。救いようのない悪党でさえ、その人生そのものを全否定することは、たぶん難しく、その存在に、感謝している人もいたりする。
ただ、人の承認欲求というのは、そんな事実があるだけでは不十分で、それを何か権威あるものに認めてもらいたい、というときがある。その最後の行き着く先の一つが、天皇陛下なのだろう。

この物語は、早野ひかるという男が、天皇・皇后両陛下の行幸啓を妨害しようとしたとして逮捕されるまでの成り行きを語った物語である。それは、男が、川又青年という歴史上の人物に、自分を重ね合わせすぎたがために起きた悲劇だったように読める。タイトルの「叫び」というのは、最初に引用した川又の声なのであり、その声は、銅鐸の音となって、早野の体に身体化されていくことになる。
早野が奇行に至るまでには、いくつもの不穏な気配がある。それは、「オニクル」のコーディネーターを辞めさせられる経緯であり、しおりさんをレイプしかけてしまうところであり、最後に、幻の肇国記念館の中に入り込んでしまうところだと思う。取り憑かれたように、歴史の語りの中に、早野は飲み込まれてしまう。そうした不穏な空気の終着点として、天皇陛下へと向かう行動がある。
こうした事件が、大阪万博に重ね合わせられるところが、いやな気持ち悪さを感じさせる。自分も大阪万博に行ってきたが、一つのイベントとして、楽しんで来た身としては、それが、天皇に象徴される、一つの国策イベントなのだということを、思い出させられるところが、嫌な感じだった。天皇が会場にやってきたこと、そして、国家に認められなかった川又青年に重ね合わされた男が、天皇を刺殺しようとしたかと勘違いをされるような事件を引き起こすことで、純粋に楽しんで来たイベントが、一つの国策への傾倒に与していることを、否応なく思い出させる。あの2025年の大阪万博というイベントに対する、一つの批判として、この小説は読むことができる。

と、それっぽいことを言ってはけれども、正直、読み方がよく分からなかった。「叫び」というタイトルの意味も読み取れていないし、銅鐸の意味や最後に天皇が出てきた意味も、伏線として拾えてない。表紙も、それっぽいなと思っていたが、ムンクの「叫び」がイメージとしてあるみたいである。そこも、どう拾えるのか。
電子で読んだことも、内容の読めなさにつながっているのだろうか。あんまり関係ない気がする。先生いわく、作中の色々なモチーフに、それなりの物語的な意味があるらしいので、読み直す機会があれば、そのあたりをしっかりと読めるようにしたいものである。

0
2026年05月07日

「小説」ランキング