あらすじ
放火・脱獄という前代未聞の大罪を犯した高野長英に、幕府は全国に人相書と手配書をくまなく送り大捜査網をしく。その中を門人や牢内で面倒をみた侠客らに助けられ、長英は陸奥水沢に住む母との再会を果たす。その後、念願であった兵書の翻訳をしながら、米沢・伊予宇和島・広島・名古屋と転々とし、硝石精で顔を焼いて江戸に潜伏中を逮捕されるまで、六年四か月を緊迫の筆に描く大作。
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Posted by ブクログ
再び江戸に戻った長英は妻子と共に生活を始めるが・・・。宇和島藩主の庇護を受け、伊予に入り、蘭書の翻訳、蘭学の教えに貢献する。漸く平和が来たかと思ったが、やはりそこも幕府の手が忍び寄る。極めて優秀な人材がこのような追われる身になることの惜しさ。そして本人の悔しさ。そして再び江戸で迎える最期の時。斉彬があと数か月早く薩摩藩主になっておれば、保護を受けられたのに・・・。運命の悪戯。長英亡き後の家族も悲惨である。吉村昭の詳細な調査により150年前の史実が忠実に再現されます。素晴らしいお奨め本です。
Posted by ブクログ
非業の死を遂げたのは嘉永三年。幕末志士の活動が活発化するのはその先。ペリーもまだ来航していない。それなりに法の秩序が保たれていたのだろう。もう少し混沌としていれば、、維新を生きていれば・・歴史のifを禁句とするのは学問の世界。空想に浸るのは自由。想像の補完がなければ、小説すらも成り立たない。薩摩、宇和島の雄藩に期待された能力。幕末・維新、列強に対抗するのにどれほど力になっただろう。生き残れなかった。そして日本が植民地化されることもなかった。それが歴史の事実。兵書の翻訳は読み継がれた。逃亡生活を生きた証として。