【感想・ネタバレ】星への旅のレビュー

あらすじ

平穏な日々の内に次第に瀰漫する倦怠と無力感。そこから脱け出ようとしながら、ふと呟かれた死という言葉の奇妙な熱っぽさの中で、集団自殺を企てる少年たち。その無動機の遊戯性に裏づけられた死を、冷徹かつ即物的手法で、詩的美に昇華した太宰賞受賞の表題作。他に『鉄橋』『少女架刑』など、しなやかなロマンティシズムとそれを突き破る堅固な現実との出会いに結実した佳品全6編。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

全編通して「死」が横たわっていて、それをいろんな角度から観察しているようなイメージの作品集
詩的な表現を限りなく抑えているように思えるのに、全体に蔓延する死のムードはどこかロマンチックで引力がある
特に表題作の「星への旅」がとても好き
退屈な日常から抜け出す手段として「死」に憧れる少年少女たちの熱に浮かされたような逃避行、実際はその逃避行すら日常の反復運動に回収されてしまっていて、結局全員がそこから抜け出せないまま、、

わたしは吉村さんの豊かな観察眼に裏打ちされた丁寧な表現がすごく好きだけど、状況を的確にあらわしたり、ある人物を詳細に描写したところで決して読者に「あるある」として消費させないような気概を感じる
だからどこか幻想的だったり、高潔に感じるのかなぁと思った(ノンフィクションは読んだことない)
時代性もあるとは思いますが…

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2016年06月30日

Posted by ブクログ

ネタバレ

・あらすじ
吉村昭先生の短編6篇が収録された短編集。
うっっすらと何となく繋がりがありそうでなさそうな作品たち。
単なる現実としての生と死と、超越した視点から描かれる生と死。

・感想
星3.8くらいかな。
鉄橋の轢死したプロボクサーは自殺なのか事件なのか、ミステリー風に周囲の人間の客観的視点を書いた後に本人視点での動機と背景。
周囲の人間はあーだこーだと己との関係性から彼の死に「理由」付けしてるけど、実際は今でいう迷惑系な動機だったんだ…。
己の限界を追い求めた結果ってことなのかな。

少女架刑は死んだ少女の自意識からの一人称視点の話。
解剖される様子、家族との関係。
死後の身体が単に「物体」として扱われることは不謹慎なのか?弄んで面白半分に損壊することは勿論問題外なんだけど、出てくる登場人物が研究者として、遺体を単なる「研究対象」として扱ってる。
今の倫理観だと中々受け入れられない言動も多々あるけど、今より死が身近なあの時代なら然もありなん、なのかな。
最後に火葬されてやっと死の静けさという安らぎの中でいれると思いきや、そこには無機物の奏でる音で満たされていた。
という何とも最後まで不幸な1人の少女の一生を書いた作品だった。

透明標本は少女架刑に出てきたあの老人とは名前が違うから別人だけど、人物像的には同じ。
限界の見えた老人男性が、最後に自分にしか作れない骨標本を作る話。
てっきり病気のお母さんがその餌食になるのかと思いきや…世の中って理不尽。

石の微笑はあらすじ紹介が難しい。結局お姉さんは執着心が消え去って死神である曽根とともに死への旅に出たのかしら。

星への旅。
人生に飽きた怠惰な若者たちの自殺の旅。
辿り着いた先の貧しい寒村の人々が欠乏から選ぶ死と全てが満たされた故の無気力さで選ぶ死の違いとかメンバーの中で醸成されていく「死ななければ」という逃げられない集団ヒステリーとかが怖かった。

白い道は戦時中、帰路にたまたま道程を共にすることになった男たちの話。
主人公の境遇とか妻子を見捨てて逃げた男とそんな男への絶望を通り越した奥さんの話とか、特段劇的なストーリー性があるとかじゃない。
解説にもある「徒労感」という言葉が適切な話。

0
2025年05月18日

Posted by ブクログ

ネタバレ

平穏な日々の内に次第に瀰漫する倦怠と無力感。そこから脱け出ようとしながら、ふと呟かれた死という言葉の奇妙な熱っぽさの中で、集団自殺を企てる少年たち。その無動機の遊戯性に裏づけられた死を、冷徹かつ即物的手法で、詩的美に昇華した太宰賞受賞の表題作。他に『鉄橋』『少女架刑』など、しなやかなロマンティシズムとそれを突き破る堅固な現実との出会いに結実した佳品全6編。(背表紙)。

いずれの短編も面白く、平易かつ奇麗な文章は読みやすい。
が、それからの作品を主に読んでいる身としては、やはり後年の歴史小説の方が好みに合っているようだ。

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2025年04月24日

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