【感想・ネタバレ】飢餓海峡(下)のレビュー

あらすじ

波濤荒れ狂う荒涼とした海峡で発生した殺人事件を執拗に追い続けた、函館署の弓坂吉太郎。そして十年の後、杉戸八重殺人犯の捜索にあたることになった舞鶴東署の味村時雄。両刑事の執念が実を結んだ時、謎の人物、犬飼多吉こと樽見京一郎の実像が浮かび上がる……。青函連絡洞爺丸沈没の海難事故に想を得て、雄大な構想で人間の宿命を描き切った長編ミステリー小説。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

 東舞鶴の海岸で東京都亀戸の娼婦 杉戸八重と、地元の名士 樽見京一郎宅の書生 竹中誠一が遺体で見つかる。樽見の証言もあり当初は心中と思われたが、舞鶴東署の味村時雄警部補は状況の不自然さから他殺を疑う。さらに杉戸八重の身元照会を機に、彼女が10年前の未解決事件--北海道岩幌町の大火を引き起こした質店強盗殺人放火と、青函連絡船「層雲丸」転覆事故現場での乗客ではない男2人の変死体発見--の容疑者 犬飼多吉の関係者と判明。関西訛りの大男という犯人の特徴から味村は樽見が犬飼であると推理、元・函館警察署警部補の弓坂吉太郎と共に事件の謎及び樽見の正体を追う……。

 戦後間も無くの、誰であろうと多少は手を汚さねば生き残れなかった混乱期に犯された罪悪。その罪悪が長らく秘匿され、また時を経て曝露されるまでのドラマの描写に圧倒される。犯罪者・刑余者・貧困者・女性に対する捜査陣の予断と偏見は強めだが、クライマックスにはやや軟化しているので読後感は悪くなかった。上巻中盤に登場した、東京都神田末広町の葛城時子宅に杉戸八重の消息を尋ねに現れた男の正体が判らず終いな点だけが惜しい。

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2024年07月26日

Posted by ブクログ

ネタバレ

宮本輝氏のエッセイ集「本をつんだ小舟」で紹介されている。
下巻は停年退職した弓坂刑事が捜査に加わり、樽見京一郎の想像を絶する苛酷な生い立ちが明らかになっていく。
戦後まもなくの時代背景もあるのだろうが、貧しさの中で苛酷な宿命を背負った人たちの物語にどっぷりと浸かり読みごたえがあった。上巻511ページ、下巻も本編は400ページを超える大作だが、土日の2日で1冊ずつ一気に読み終えた。

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2021年12月21日

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