あらすじ
日本社会において陰謀論と排外主義を内包する政治運動が急速に拡大している。
2020年の米大統領選前後に始まった反ワクチン系運動は、レイシズムや極端なナショナリズムを伴いながら国内で定着し、2024年には1万人規模のデモが複数回開催されるなど、その勢力は可視化された。それ以降も、それまでデモに縁がなかったような層が、「財務省反対デモ」など陰謀論ベースのデモを行っている。
その陰謀論界隈に、外国人差別を訴える排外主義が合流し始めて、急速にその勢力を強めている。
なぜこんなことになったのか? この現象はどうした結果を招くのか?
本書は、そうした陰謀論デモや排外主義の現場で取材を続けていた執筆陣を招聘。それぞれの視点から、この現象を「陰謀論ブーム」、「排外主義ブーム」として捉え、特定の政党に留まらない、より広範な現象として多角的に分析。地方議会を舞台にした極右系団体の本格参入、泡沫候補の演説に見る“共闘”や排外主張の流行、さらには「財務省解体」など反グローバリズムを掲げる新勢力の台頭に至るまで、現場取材を通じて浮かび上がった実態を明らかにする。
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Posted by ブクログ
・「真実」への欲望とアイデンティティ
陰謀論は、複雑な世界を「善と悪」の単純な構図で説明しようとする。既存のメディアや権威を信じられない人々にとって、隠された真実を「発見」することは、知的優越感や承認欲求を満たす手段となっている。
・ネット空間とエコーチェンバー
アルゴリズムによる情報の偏りが、同質的なコミュニティを形成する。そこでは異論が排除され、極端な言説が再生産される。SNSは感情を増幅させ、排外的なナショナリズムと親和性を持つ。
・歴史修正主義と排外主義の接続
かつての差別意識が、歴史的文脈を書き換えることで正当化されている。「自分たちが不当に搾取されている」という被害者意識が、特定のマイノリティへの攻撃(排外主義)へと転嫁される構造がある。
・ポスト真実と権威の失墜
専門家や公的機関への不信が、根拠のない言説を台頭させている。客観的事実よりも「自分が信じたい物語」が優先されるポスト真実の状況が、陰謀論の温床となっている。
・経済的不安と「敵」の創出
新自由主義下での格差拡大や不安定雇用が、人々の間に「剥奪感」を生んでいる。その怒りの矛先が、社会構造の改革ではなく、より弱い立場にある他者や「裏で操る黒幕」に向かう。
・ポピュリズムと政治的動員
政治勢力が、陰謀論的な語り口を利用して支持を集める現状がある。既存の秩序を打破する「救世主」を求める大衆心理が、排外的な政策を後押しする。
・分断を乗り越えるための対話の難しさ
一度陰謀論に取り込まれた人々に対し、データや事実で論破しようとしても逆効果になることが多い。背景にある孤独や不安を理解しつつ、いかにして共通の基盤を取り戻すかが課題である。