【感想・ネタバレ】陰謀論と排外主義 分断社会を読み解く7つの視点のレビュー

あらすじ

日本社会において陰謀論と排外主義を内包する政治運動が急速に拡大している。
2020年の米大統領選前後に始まった反ワクチン系運動は、レイシズムや極端なナショナリズムを伴いながら国内で定着し、2024年には1万人規模のデモが複数回開催されるなど、その勢力は可視化された。それ以降も、それまでデモに縁がなかったような層が、「財務省反対デモ」など陰謀論ベースのデモを行っている。
その陰謀論界隈に、外国人差別を訴える排外主義が合流し始めて、急速にその勢力を強めている。
なぜこんなことになったのか? この現象はどうした結果を招くのか?
本書は、そうした陰謀論デモや排外主義の現場で取材を続けていた執筆陣を招聘。それぞれの視点から、この現象を「陰謀論ブーム」、「排外主義ブーム」として捉え、特定の政党に留まらない、より広範な現象として多角的に分析。地方議会を舞台にした極右系団体の本格参入、泡沫候補の演説に見る“共闘”や排外主張の流行、さらには「財務省解体」など反グローバリズムを掲げる新勢力の台頭に至るまで、現場取材を通じて浮かび上がった実態を明らかにする。

...続きを読む
\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

Posted by ブクログ

陰謀論が排外主義と結びつくことの恐ろしさを改めて感じた。サブカル界隈から飛び出した陰謀論が排外主義を帯びて政治化し、各種の「解体デモ」などの形で実社会に多大な影響を及ぼすようになった。

本書では複数の「陰謀論ウォッチャー」が寄稿しており、どれも興味深い。

とくに、陰謀論を推し活の観点から分析した山崎リュウキチ氏の論考は、とても鋭いものだった。陰謀論者にとってみれば、陰謀論は現実社会の二次創作だというのである。だとすれば、「それは間違っている」と指摘しても効果がないのは当然である。

また、藤倉喜郎氏によれば今の陰謀論は陰謀論ですらなく、単なるデマや差別であるという。「意見や立場の違い」ではないので、対話や寄り添いは成り立たない。社会全体でこれらの有害な言説を明確に否定すべきであり、許してはならないということだ。

0
2025年12月22日

Posted by ブクログ

暗澹たる気持ちになるが、「日本社会の現在地点」を知る上で、良書である。

「新しい戦前」とも言われる現在。
わたしが恐怖を感じているのは、無謀なアジア・太平洋戦争時において、国民の99.9%が、戦争に賛同、もしくは追随していたという事実だ。

戦争反対の声を上げた人々の記録は、限りなくゼロに近い。
彼ら、彼女らは、近隣から虐められ、職場から追放され、家族から見放されたであろう。
そして、警察にしょっ引かれ、女性にいたっては署内でレイプされたりしている。

冷静な判断で、正しい行動を行った、彼ら、彼女らこそ、現代のわたしたちが、感謝し尊敬すべき対象である。
そして、その「心の強さ」を学ばなければならない。

日本社会が、右傾化・全体主義化している現在。
高市発言以降、好戦的な反中言説が、マスメディアやSNS、井戸端会議に至るまで、驚くほど蔓延している。
その一般市民の姿勢が、どのような惨状を招くことになるのかを、歴史を振り返り、想像しているのか、甚だ疑問である。

いざ事が起きた時に、わたしは、本当に最後まで、自分の信念を守りきれるだろうか?
周囲に流されず、冷静に正しい反戦運動をする胆力があるだろうか?

正直に言って、自信がない。
自己保身と損得勘定により、社会の流れに身をまかせてしまうのではないか…、その事が不安であり、恐ろしいのだ。


第2章 認知科学的分析
山崎リュウキチ

⚫︎p.62 陰謀論は現実世界の出来事に対する「二次創作」であり、アブダクションの一つとみなすことができる。

アブダクション・プロジェクションといった、人間の言語獲得や創造性に関する話題で知った認知科学の用語が、「陰謀論」の話題で取り上げられるとは驚いた。
しかし考えてみれば、当たり前のことで、人間の思考形式が、人間社会のあり様を規定しているのだ。


第3章 近代化・科学的思考
古谷経衡

⚫︎p.82 排外主義は言ってみれば、究極の非科学的思考である。
⚫︎p.89 科学技術の発達と人々の科学的思考は比例しないのである。
⚫︎p.90 これに対する処方箋は、「それは信仰と名神だ」、と指摘し続けること以外にないに等しい。

陰謀論と排外主義への対策は、本書においても、明確には提示されない。
「対話」による解決も、不可能だとされる。
つまり、残念ながら、人間が人間である限り、「無い」のであろう……
しかし、本当に希望はないのだろうか?


第4章 カルトと陰謀論・排外主義の結節点
藤倉善郎

⚫︎2020年以降、陰謀論・排外主義の路上デモの中心にあったのは、サンクチュアリ教会・統一教会・幸福の科学という、カルト宗教だった。

⚫︎犬猿の仲であるはずだが、反中国という、胸中の差別感情を満足させるためになら、自然と同じデモを構成する。

⚫︎"インフルエンサー"的な、承認欲求を満たすたに、離合集散し続ける極右候補者たち。

⚫︎「三浦春馬の自殺」にさえ、「ニセ日本人の破壊工作」を結びつけて考える…まさに陰謀論者の思考形式。

カルト宗教と陰謀論者の親和性。
「宇宙人陰謀論」から「ワクチンへの忌避感」まで、グラデーションで繋がっており、離合集散を繰り返す。
その特徴を一言でいうと、残念だが、やはり「馬鹿」という他ない。
自分の違和感や、嫌いなものを、すべて関連づけて、ひとつの原因で語る。
「世界の複雑さ」に耐えられなくて、安易な「答え」に飛びつく。
その「答え」は、実は、心の底に澱んだ差別感情の発露である。


第5章 選挙の現場
選挙ウォッチャーちだい

⚫︎p.154 「普通の主婦の立場で、外国人が怖い」…理屈がなくても「女性や母親が恐怖を感じることに罪はないはずだ」というロジックを組み、平然と差別を繰り広げる。

これが、一般の日本社会に蔓延している排外主義の、もっとも根底にある率直な心情ではなかろうか?
この主張に対応するのは難しい。
特に、家族や恋人、友人などが、コレを口にした時、どう答えるべきなのかは、極めて難しい。
この"他者"への忌避感・想像力の欠如が、歴史的にどのような事態を招いてきたのか、頭で考えてほしいところである。


第6章 電車男とQアノン
清義明

⚫︎p.176 見ず知らずの者たちが、ある目的のために集まり、喜怒哀楽をいったん共にしながら、匿名掲示板の刹那を共有していくこと。それが「リアル」とされたのである。それはウソ(幻想)であったとしてもかまわない。

この記述に、もっとも本質的なものを感じる。
Qの"予言詩"を読み解くネット上の集まりは、高揚感に満たされていたのであろう。
それは、日本の陰謀論者の集会やデモにおいても、同様であろう。


第7章 なぜ日の丸を振るのか?
菅野完

非常に新鮮な論点であり、刺激的な論考であった。

坂口安吾が示したように、敗戦時の日本は、きっと、堕ちるところまで堕ちてしまえば、良かったのかもしれない。
地の底で、ニヒリズムを経由してからの、実存主義に至り、人権を最重要視する社会変革へ向かってアンガージェマンできたかもしれない。

構造的な問題に目を向けず、「心の持ちよう」という精神論で解決しようとするのは、日本社会において、戦前から現在まで続く悪癖ではないだろうか。
部活での体罰や、女性の家事労働負担、ブラック企業や、感動ポルノ……例を挙げればキリがない。

そのルーツを、「生長の家」だけで理解するのは、極端であるので、論旨を鵜呑みにはできないが、一般庶民に通底する倫理観に、戦後ずっと政権をとってきた自民党的な価値観が影響していることは、想像に難くない。

間違いなく新鮮な視点であった。
また、文章表現の巧みさにも、驚かされた。

0
2025年12月20日

Posted by ブクログ

界隈については全くといっていいほど何も知らない状態だったけど、ここ数年、たまに流れてくるXポストなど眺めながら「いったい何が起こってるんやろ?」とどんよりしていたこと、がこれ読んで整理できたかも。(や、この本情報量多いから全部はわかってないが。とりあえず1回通読したらだいぶスッキリした。
推し活を引き合いに出して論じてる2章は納得感あった。あと、第7章は現代日本人のメンタリティを見事に分析、書き表してると思ったな。なるほどそういうことかーと。

0
2025年12月08日

Posted by ブクログ

2025年流行となった「陰謀論と排外主義」の根底にある差別であり、その対処法について教えてくれる一冊。

0
2025年12月02日

Posted by ブクログ

「反ワクチン、外国人特権」などの陰謀論が政治にからみつき、ついに議席数や首長の座を取り始める現在を現場で取材する7人の記者がレポート

参政党の議席数躍進など何が起こっているのか戸惑う人の為の一冊

そもそも陰謀論というものの内容は何か、どういう経緯でそれは広まっていったのかを実例をあげて説明

場報告は目がチカチカしますが現代史の俯瞰から見た考察もあります

2025年現在の報告で事態が流動的である為この後未来がどう動くかわからないものの過去と現在が克明に報告されているので「今」どこの立ち位置に自分達がいるのかを示唆してくれる一冊かもしれないです

0
2025年12月13日

「社会・政治」ランキング