あらすじ
京の都が、天災や飢饉でさびれすさんでいた頃。荒れはてた羅生門に運びこまれた死人の髪の毛を、一本一本とひき抜いている老婆を目撃した男が、生きのびる道をみつける『羅生門』。あごの下までぶらさがる、見苦しいほど立派な鼻をもつ僧侶が、何とか短くしようと悪戦苦闘する姿をユーモラスに描いて夏目漱石に絶賛された『鼻』。ほかに『芋粥』『好色』など“王朝もの”全8編を収録する。
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Posted by ブクログ
羅生門感想
時代背景的に京の街自体が衰退し、寂寥感があるような情景描写が多かった。情景的に今の平和な時代とは真逆の物々しい感じもあった。
この本を読んで、人間の悪の部分について考えさせられた。老婆や最後の下人のように、人間は何かと理由をつけて、悪を正当化する部分がある醜い生き物なのだと。だが、悪を正当化しつつも、その悪を潔しとしない正義感が悪を食い止めようとして、天使と悪魔のささやきのように二項対立してしまうこともあるのも非常に共感できた。ニキビを触る様子を引き合いに出して、悩む様子を描いたのはとても興味深かった。自分で言うのも烏滸がましいが、私は正義感が強いので、このような場面に遭遇したことが何度もある。
だが、下人のように悪が勝ってしまい、背徳的な行為をしてしまうのもいかにも人間らしいではないか。私もそういう経験があるので、人間のことを憎めない点でもある。人生万事塞翁が馬という言葉が脳裏を少しよぎった。人間は達観して将来を見通して行動するのではなく、その時時の感情で善悪を顧みず、行動することもあるのだと。
老婆や下人が悪いことした人には悪いことをしてもいいと言う正当化は、因果応報や身から出た錆という言葉を思い出させてくれた。この人には悪いことをしてもいいと思われないように、悪事などはせず、真っ当に生きようと改めて心に決めるのだった。
最後になるが、この話はすごく短いながらもメッセージ性を感じた。これほどまでに短い話に、ここまで人間の醜さをつめることができた芥川の才能に脱帽する。下人の行方を想像してみるのも面白そうだ
鼻の感想
人間は誰しも多かれ少なかれコンプレックスを持っている。そのコンプレックスに対する考えをメインに書いた本のようであった。私もこの僧のように、周りにはコンプレックスがないかのような強がりを見せ、心の内奥から沸々と泉のように湧き上がるコンプレックスにどう対処していいか困りあぐねるので、この僧には同情の念を抱いた。模範的な人物像というイメージがある僧でもこれなのだから、人間は多かれ少なかれ自分に対して完璧を求めているところがあるのかもしれない。
私はコンプレックスを解消した経験に乏しい。なので、自分の不幸が消えた後で笑われたが故の、僧の昔のコンプレックスへの懐古の念には新たな発見があった。人はないものねだりなんだろうにと改めて痛感したのと同時に、人は他人の不幸を切に願う忌み嫌われるべき生き物なのだと思った。いくら人に笑われたからといっても、コンプレックスを懐かしむなんてなんと贅沢なことだという私の反感を買ったが、それと同時に自分もその境地に至ってみたいとその僧に対して羨望の念を抱くのであった。また人の不幸をつい探してしまう私もこの笑った人たちと同罪なのだと深く内省するのであった。
枝葉末節さがある感想だが、僧が鼻を整形する際に、自分の鼻を踏んだ僧に対して、利己的だと評していたが、僧の自分の鼻というコンプレックスを解消したいという思いも利己的なものではないか?と疑問を呈してみたりもした。人は自分が利己的な考えに至っているのに気づかないものなのかとふとその考えが頭に浮かんだ。自分も気づかぬうちに利己的になってるんだろうなとふと自省した。
最後になるが、この本にもいろいろ学びや感想があって面白かった。文体や文の難易度的にも、非常に読みやすく、芥川を代表する作品の一つでもあろう。自分のコンプレックスを解消した後、また読んてみたい作品でもあった。
芋粥感想
全体を通しての感想は、人間は欲深く強欲な生き物であると同時に、自分がいろんな人に愚弄され、たとえそれが欲望を叶えてくれるための厚意であろうと種々の不安を感じてしまう疑い深い生き物であると感じた。いざ欲望が叶えることができると、お腹いっぱいになって、これ以上その欲望を叶えるのを拒む面もあるのかなと思った。
ネタバレ含む感想になるが、主人公である五位の義侠心(ぎきょうしん)には感銘を受けた。弱き者を守ってあげるのは人間の鑑であると称賛の声を上げるのと同時に、彼の欲深さには私も貪欲な面はあるよなと人の振り見て我が振りなおせといった感じに、自分の煩悩の多さを振り返るばかりであった。このような人間性の面で内省を促してくれる作品を書いてくれた芥川には、感謝してもしきれないところもある。
最後になるが、私たち人間は恒久に欲深く、こればかりは治らないと思う。自分の貪欲さが鏡のように写っている作品だと思うので、自分は強欲だなと言う考えに至ったときはまたこの本を読んで、反省すべきであると思った。
Posted by ブクログ
ま~それにしても芥川龍之介の短編技術の見事なこと!羅生門を上り、夜の闇に現れる不気味な気配。そこに何がいるのかと大人になっても変わらず夢中になって読んでしまいます。まるで映画的な手法と言いますか、臨場感がとてつもないです。
この作品である一人の男が悪の道へと踏み出すその瞬間を決定的に捉えた芥川。その微妙な心理状態を絶妙にえぐり出したラストは絶品です。
『羅生門』は厳しい。厳しい厳しい世の有り様をこれでもかと見せつけます。悪の道へ踏み出すというのはどういうことなのか、まさにそこへと通じていきます。実に素晴らしい作品です。
Posted by ブクログ
「羅生門」
主人公が、死人の髪を抜いている老婆を見つけた時は、自分の正義のもとに怒りを露わにしながら老婆を捕らえるが、その死人は罪人であり、こうなるのも仕方がないと老婆が説明すると、主人公は老婆の服を剥がして盗み逃げてしまう。正義の揺らぎがすごくわかりやすく描かれている作品だと思いました。
「鼻」
大きな鼻がコンプレックスの主人公がなんとかして鼻を小さくするも、依然として周囲から笑われる。そしてある日突然鼻がまた大きくなると主人公は安堵感を覚える。
人にはコンプレックスが大なり小なりあり、たとえそれが解消されてもコンプレックスは尽きない。と言うことを言いたかったのかなと思いました。
Posted by ブクログ
羅生門と鼻をそれぞれ青空文庫のPDFをダウンロードして、分からない単語をメモしながら読んだ。
羅生門
高校の頃授業で読んだ時、「右頬のニキビ」を繰り返し書いてある意味がよく分からなかったのを思い出した。思い出したタイミングでどういう意味なのか検索して「ニキビは若さの象徴」であることや、「最後にニキビから手を離す事で盗みをはたらく躊躇いを払拭した暗喩」という解釈を読み、これは自分で自分なりに見つけたかったなぁと検索した事を後悔した。まだまだ読書初心者なので、今後自分なりの解釈が持てるようにしていきたいと思わされる作品だった。個人的には遭遇した男もニキビ面とあったので、不衛生な環境を表現したのかなと感じた。
老婆はあの後、死体から着物を剥ぎ取って着るのかもなぁと想像。
鼻
読んだことがあるか覚えていなかったが、何となく覚えのある話だった。これも授業でやったのだろう。
内供が健気で愛おしい。
鼻が短くなって何故笑うのか?と疑問だったが、人の心の矛盾には私も常々感じていたので納得した。他人の容姿を噂話や笑いのネタにする様が、SNSなどで好き勝手他者に干渉する現代を思い浮かべ、やはりあまり他人と関わらないのが平穏への道なのではと思った。しかし内供も可哀想ではあるが、あそこで不機嫌になるのは僧侶として修行が足りないのではとも思った。
それにしても、鼻って長すぎると痛覚無くなるもんなのか?毛抜きで抜くシーンを肉まんを食べながら読んでいたので少し気持ち悪くなった。
Posted by ブクログ
教養がもう少しあれば理解できたかも。
注解がなければもっと分からなかったかも。
正直、「羅生門」と「鼻」はだから?って感じでた。
「芋粥」はいや、食べれるんだから嬉しくない?と思ったんですが、よくよく考えると芋粥くれるって言った人馬鹿にしてるのか?と思いました。このあたりも文章ちゃんと理解できてないから心情が伝わってこないんだなと思いました。
「邪宗門」はあっちこっち話飛ぶな、摩利信乃法師腹立つなと思ってやっと若様懲らしめてくれるのかと思った未完って…。解説読んでずっこけました。
「好色」はお昼休憩に読んではいけない。
唯一、「俊寛」だけは面白かったです。多分すでに知ってた話だったからかなと、理解がしやすかった。
ただ、わたしどこで俊寛知ったのか覚えてないんですよね…。鎌倉殿の13人か以前読んだ平家物語か??なんか映像浮かぶから鎌倉~の方かと思ったんですが、調べてもそれらしいのが出て来ない…
こっちの俊寛の方が私は好きです。というか、知った当時も普通現地の人と交流持ったりしないか?思った記憶…
Posted by ブクログ
芥川龍之介の鼻を読んだ感想です。
短編集なので終始読みやすかったです。
内供が自分の長い鼻についての想いの移り変わりが描かれたコメディの作品で楽しく読めました。
Posted by ブクログ
「羅生門」
恐らく2回読んでいます
感想としてはこの下人と老婆の二人しか登場人物っていなかったっけ?と思いました
一応再読なんですけど全く前回読んだ時の感想を覚えていません
ですが恐らくは似たような感想ではないと思います
確か去年?に読んで今日読みましたが去年の間に色々な本を読んだので違うと思います
感想ではなくなりましたが話を戻して感想は当時は戦いというものがなく多分時代は平安時代なんですけど震災が多かった時代だったので亡くなる方々が多かったと思いますが、
羅生門の中で髪を取っている老婆…
少し不気味だなと最初は思いましたが当時震災で餓死寸前なので生きるためには死者の髪の毛を引き千切って売ったりして生きていかなければ行けないので髪を取っている老婆でしたが…
ちょっとした事ですけど下人は侍ですかね?二本差しとは感じませんでしたが刀は持っていたので老婆を切り捨てることも出来ましたしですが老婆の言い分も正しいので切り捨てませんでした
少し理解できないところもありましたが奥が深いなと思いました
「鼻」
主人公の内供は鼻がとても長く恐らくこの本の表紙が内供ですかね?まあこの表紙ほどの長さで弟子たちから馬鹿にされていたので無理矢理鼻を短くしましたが逆効果で、哂われたので最終的に元の長い鼻に戻りました
感想としては最初の場面で内供が鏡を見て鼻を見てとても気にしている様子が書かれているのですがまあ気にしているのは間違いなさそうですよね
そして鼻を短くしますが哂われる
そして翌日ですかね?起きたら鼻が長くなっている
これで思ったのは元々の自分が一番だということですかね
嘘の自分で生きていくのは辛いだろうな〜と思いました
「芋粥」
感想を率直に言うと主人公の五位ってとても冷静だと思うんですよね
途中で芋粥にありつきたいと言ってたので芋粥好き?になったのかと思いました
少し昔の言い方のところが多かったので感想という感想はないのでそんな感じです
「運」