【感想・ネタバレ】こころのレビュー

あらすじ

鎌倉の海岸で、学生だった私は一人の男性と出会った。不思議な魅力を持つその人は、“先生”と呼んで慕う私になかなか心を開いてくれず、謎のような言葉で惑わせる。やがてある日、私のもとに分厚い手紙が届いたとき、先生はもはやこの世の人ではなかった。遺された手紙から明らかになる先生の人生の悲劇――それは親友とともに一人の女性に恋をしたときから始まったのだった。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

読んだのは高校の授業以来で、全文通して読んだのは初めてだった。Kが最終的にどうなるかを知りながら読んでいたので、前半のKの死と先生の罪を匂わせるような文章は「あーKのことねなるほどね」と理解しながら読めて新しいおもしろさがあった。漱石の思想が言葉として深く反映されていて、ずっしりとこころに残る文章が多かった。個人的には「馴れれば馴れる程、親しみが増すだけで、恋の神経はだんだん麻痺してくるだけです。」という言葉が1番響いた。

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2025年10月20日

Posted by ブクログ

ネタバレ

この本を初めて読んだのは確か14〜15歳のころ。あまりの衝撃で寝ている父を起こし(今思えば迷惑そのものだけど)、朝までこの本について語り合ったのを覚えている。
多分あの時受けた衝撃を超える作品に出会うために、今でも本を読み続けているのだと思う。

当時私が抱いた疑問は「なぜKは死を選ぶ必要があったのか?恋とはそんなに恐ろしいものなのか?」だった。そして10数年前に読み返したときは、「そうだよね、恋情は人の命を奪う可能性を秘めたものだよね。」と思った。

そしてある程度歳を重ねた今、失恋だけがそうさせたのではなく、自分と同じく真面目に生きてきたはずの【私】がさも当然かのように裏切り、捌け口もない果てしない悲しみが引き金になったように思える。

【私】がした行為は誰のためにもならず、エゴでしかない。
でも人間ってそんなもの。自分の中で矛盾していることに気づいても、自分がいいように捉えて楽な方を選択してしまう。だから【私】を責めることなんてできない。【私】はいつぞやの私かも知れないんだから。

また10年ほど経ったら読み返すはずだけど、その頃どんな気持ちでこの本を読むだろう?何度読んでも美しいこの本と共に人生を歩める幸せを噛みしめる。

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2025年07月20日

Posted by ブクログ

ネタバレ

「恋は罪悪ですよ、よござんすか。そうして神聖なものですよ」

「自由と独立と己れとに充ちた現代に生れた我々は、その犠牲としてみんなにこの淋しみを味わわなくてはならないでしょう」



自由と独立の明治の時代、その裏で人々は孤独でもあった。私も先生もKも奥さんもお嬢さんも家族を失い孤独な身であった。
Kの自殺は、単なる失恋でもなく、といって現実と理想の衝突というだけでもなく、人間の孤独を感じたからではないだろうか。先生が叔父に謀られていたと気づいた時と同じように。
傷ついた本人が最もその寂しさを理解しているはずなのに、それでも先生はKを裏切ってしまった。そこで先生は「自分もあの叔父と同じ人間である」ということを悟った。利己心に任せると、人間は人間を簡単に裏切る。その人間の"こころ"こそが、個人を超えて、人間という生き物が持つ「罪」であると気づいた。そのことに先生は絶望したのだと思う。

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2025年09月28日

Posted by ブクログ

ネタバレ

美しい小説。圧巻である。
昔、教科書で読んだ時、その面白さに衝撃を覚えた。しかしなぜか全文は未だ読んだことがなかった。
兄が、最初の方はつまらないと言っていた。
たしかに、最初の方は長い。
しかし、最初の方の先生に対する俯瞰が、後半の内省と合わせて、先生という人物像を、あらわにしている。
エンタメ的にも面白い。
文章も美しい。
自意識も、繊細に書き上げられており、自分と重ね合わせながら読んだ。

264 つまり私は極めて高尚な愛の理論家だったのです。同時に尤も迂遠な愛の実際家だったのです。

281 精神的に向上心のないものは馬鹿だ

302 もう取り返しが付かないという黒い光が、私の未来を貫ぬいて、一瞬間に私の前に横わる全生涯を物凄く照らしました。

303 それでも私は私を忘れる事が出来ませんでした。

317然し腹の底では、世の中で自分が最も信愛しているたった一人の人間すら、自分を理解していないのかと思うと、悲しかったのです。理解させる手段があるのに、理解させる勇気が出せないのだと思うと益悲しかったのです。

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2025年10月18日

Posted by ブクログ

ネタバレ

はじめて夏目漱石の作品を読みました(教科書で読んだことはある気がするが記憶がない…)
自分自身、卑怯者だなと思うことも多く生きてきたので、先生と遺書編はグサグサ刺さりました。
どうすればこの罪を償うことができたんだろうと考えたり、償えると思うこと自体がまた卑怯であるという地獄の無限ループに陥り、めちゃくちゃ暗い気持ちになった。
遺書を書いて私に打ち明けることで、少しでも楽になりたかったのかな。
罪を告白しても、誰かに謝っても、心の陰は消えないんだろうなー、と共感したり、辛くなったり、どうにもできない気持ちでしんどかった!

あと遺書ながっ!

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2025年09月24日

Posted by ブクログ

ネタバレ

こころー人間とは罪深い生き物である。

「私」が「先生」と出会うところから物語は始まり、父の容体の急変、先生から届いた手紙が遺書だと知る私、Kの自殺と先生の自殺の関係。。とても深い作品なんだと途中で気が付きました。
Kは失恋や先生の裏切り、喪失による寂しさなんかで自殺したのではなく、自らの「道」を極める上で「恋」が妨げであった。
「道」の為には全てを犠牲にしなければならなかったのに、たった1人の女性に狂わされてしまった。Kは「断罪」の為に自殺したのだと思います。人間の意思では変えようのない本性と罪深さがこの作品には集約されていると思いました。

印象に残った文
「私はその新しい墓と、新しい私の妻と、それから地面の下に埋められたKの新しい白骨とを思い比べて、運命の冷罵を感ぜずにはいられなかったのです。」

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2025年07月19日

Posted by ブクログ

ネタバレ

1ヶ月ほど読むのにかかった。昔の小説は読むのに時間がかかる。表現の仕方、古語を理解するのに時間がかかるし、一つ表現するのに十かかるくらい丁寧に書かれているからだろうか。こころは特に先生の手紙に重点を置いていた。夏目漱石自身、その先生に心を通わせたのだろうと思う。愛情と友情、金銭欲、人間の心の部分に深く迫る作品だった。金の為に自分を利用しようとした経験を持つ先生が愛情の為に友を自殺にまで追い込んでしまう。心優しい先生は、自分のせいだと自分を戒めた。その罪悪感を誰にも伝えられず、私という新たな人物との繋がりから先生を見せる事により、読者に想像を膨らませる書き方は素晴らしい。芥川もそうだが、昔の偉大な小説家は感受性が豊かで優しい。そして自分を限りなく客観的に見ることができる人たちだと感じた。その為、自分のフィクションの世界のキャラにも自分を重ね、深く入り込んでしまう。優しい人ほど辛い。そんな彼らが書いてきたものこそが人生そのものだと消化して今に繋げ自分を支える一部になっているのだから美しい。私は先生の弱い部分も強い部分の気持ちもよく分かるし、人間の善と悪の頭と体の矛盾は誰しもが経験しているから想像に容易い。しかし、重すぎた。友人の死により、手に入れた妻だからこそ打ち明けられずに1人抱え込んで生きながらえる辛さは計り知れない。死は償いでもあり逃げでもあるし、妻にとっての苦しみでもある。逃げ場のない先生の葛藤を手紙で知った私はどうするのだろう。そこまでで書くのを辞めた夏目漱石の意図はなんだったのだろう。私には生きていて欲しいと願う。妻には伝わらないで欲しいとも。

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2025年10月05日

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