【感想・ネタバレ】アラスカ物語のレビュー

\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

このページにはネタバレを含むレビューが表示されています

ネタバレ

Posted by ブクログ 2020年08月27日


「ある町の高い煙突」を読んで以来
すっかり新田次郎ファンになってしまった

緻密な取材と、骨太な文体で
the昭和な感じが良い

数ある著作の中で、本書を選んだ理由は

日本では殆ど知られてないけど
アラスカでは、今でも超有名人である
日系1世 フランク安田の物語だというトコ

以前に読んだ
「M...続きを読むr.トルネード 藤田哲也 世界の空を救った男」もそうだけど
世界で活躍した日本人を知るのは
ワクワクする


フランク安田(日本名;安田恭輔)は
明治元年、宮城県石巻町の医師
安田静娯の三男として生まれる

代々、医業を営んでいた安田家は裕福で
三男の恭輔は、祖父に溺愛されて育った

乱暴者で、直情的な性格の恭輔は
祖父以外の家族からは持て余されていた

そんな祖父が、恭輔が小学校入学と共に他界し
大きな衝撃を受ける
祖父に溺愛されて育ったために
なかなか家族との折り合いが合わず

両親が相次いで他界した折
父の残した借金を理由に
田畑を売り、兄弟離散となった

恭輔は、人に勧められて
三菱汽船石巻支店に就職を決める

大失恋をした後
外国航路の見習い船員となり
アラスカ行きのペアー号に乗船する

ペアー号は、北極圏で濫獲されている
海獣保護のための警備船だった

密漁船を追い回している内に
突然襲ってきた寒波により
氷の中に閉じ込められて、身動きが出来なくなる

一冬を越せるだけの食糧を積んでいた筈が
実は2ヶ月分しかない事が判明

最後に荷揚げをした、ポイントバローでの
積荷横流し疑惑が、恭輔にかけられた


船長や事務長の信頼を得ていたにもかかわらず
当時は、有色人種であるというだけで
全てを否定しようとする偏見が根強かった

船員達から、リンチを受けるぐらいだったらと
ポイントバローまで、歩いて救助を求めにいく道を選んだ

持たされた食糧は10日分
北極海では、北極星が真上にあり過ぎて頼りにならない
磁石の示す北は地理上の北にはならない
吹雪になると、動く事ができない

食糧も尽き、燃料も底を尽き始め
吹雪のために、行く手を阻まれ
幻聴と幻覚と闘いながら16日間
たまたま通りかかったエスキモーに救助された

捕鯨会社が経営する交易所所長である
ブロワーに事情を説明し
救援物資を積んだ犬橇で
ペアー号に向かう


エスキモーは経験によって、走る距離を知り
方向は、星の動きで決め
時間は、腹時計で定める
彼らが、腹一杯肉を食べて
橇に乗った時から
彼らの腹時計は、音を立てて動き出す

彼らは地図や、磁石や、時計や速度計などを
使用しないでも、立派にナビゲーションできる

ペアー号に戻ったフランクは
自分が歓迎されていない事に傷つき
ポイントバローに残る事を決意する

エスキモー達と生活を共にし
良好な関係を築きながら
エスキモーの妻を貰う

因みに、エスキモーと言うのは
エスキモー語ではなく
インディアン語で
「生肉を食べる人間」と言う意味らしい



密漁による海獣の濫獲により
主食であり、生活の糧だった
鯨やアザラシが獲れなくなり
ポイントバローのエスキモー達は
食糧危機に苦しむ
と同時に、麻疹が流行し
多くの村民が病死していった

先細りするポイントバローに見切りをつけ
移住計画を思案していた
そんな折、砂金を掘りにやってきた鉱山師
カーターと出会う

カーターの補佐をしながら
移住先を探すフランク

ブルックス山脈を越えワインズマンから東に向かう
ポイントバローから、南に600㎞
ユーコン川沿に辿り着き
そこで砂金の鉱脈を発見する

その場所に、イヌイット達の村造りを決意するも
インデアンのテリトリーだった為
酋長と交渉を始め、了承を得る

ビーバーの毛皮を売り
村の名前をビーバー村として
砂金の収入と合わせ、村は繁栄していくが

やがて、戦争が始まり
日本人だったフランクは
日系人捕虜強制収容所へ連行されてしまう

フランク不在のビーバー村は
指導者を失い、一気に衰退してしまう

という話


あらすじだけで、だいぶ長くなってしまいましたが…(^-^;

どこも削れないぐらい、濃密なエピソード続きで
それもそのはず

新田氏が、一度は短編として書き上げた作品を
再度、1ヶ月間のアラスカ取材をして仕上げた
渾身の力作で

後のインタビューでも
自身の代表作と言って良いと豪語するほど

フランクの活躍振りを賞賛して
「ジャパニーズモーゼ」とか「アラスカのサンタクロース」
と呼ばれているのは
同じ日本人としても、誇らしい気持ちになる

明治生まれの、ヤンチャな少年が
家庭の事情とは言え
日本に収まりきれずに
人種差別が当たり前だった、世界に飛び出し
やっと受け入れて貰え
エスキモー達の指導者となって
多くの人々を救うという

フランク安田という人物
本書を読むまでは、全く存じ上げなかったですが
新田氏が、晩年
精力を注いで取材しただけのことはある
壮大な物語です




#アラスカ物語
#新田次郎
#フランク安田
#ジャパニーズモーゼ
#イヌイットの救世主
#読書好き








0
ネタバレ

Posted by ブクログ 2017年06月29日

自分がまだ知らない、そして知っておくべき日本人がまだまだいる。フランク安田は、まさにその1人だと思う。彼がいなければ、海岸エスキモーは飢餓または麻疹により全滅していたかもしれない。彼がいなければカーターのゴールドは見つかっていなかっただろう。彼がいなければ、ビーバーという街も生まれていなかっただろう...続きを読むし、インディアンとエスキモーの共存もなかったかもしれない。彼だけではない。ジョージもそうだし、ミナモもそうだ。
彼がベア―号から降りて以降、毎日が真剣勝負だったろう。ポイントバローへの奇跡的到着、密漁による食糧不足、麻疹による村存亡の危機、ゴールドの探索、エスキモーの移住、第二次大戦中の強制収容、ビーバーの町おこし。遠い日本から離れて、リーダーとしての役割を期待され、ただエスキモーのために人生を費やしたフランクは、どんな気持ちだったのだろう。
彼の人生は1冊という本のも収まりきらないものだった。自分もそのような生き方ができているか?

捕鯨やアザラシ、ムースやカリブーの捕獲も興味深い。エスキモーは代々彼らを狩猟し、その生肉を食すことによって生きてきた。動物の子供は殺さないなどのルールを守っていたため、動物が絶滅することはなかった。それが、白人の乱獲により状況が変わる。現在は、捕鯨やアザラシの捕獲は、野蛮な行為などと評価され、否定的に考えられている。しかし、「野蛮」とは何なのか?ある文化で「野蛮」と考えられていることが、ある文化では「伝統」である、というに過ぎない。しかし、「野蛮」と考える文化がprevailしたから、その考え方が主流になった。歴史はいつも勝者のものである。現在エスキモーは、その勝者たる国からパターナリスティックな保護を受けている。それは、本当にエスキモーにとって誇り高い生き方なんだろうか?自力では生きていけない、アメリカの援助なしでは存続できないという状況下で生きていることは、本当に生きたい生き方なんだろうか?

0
ネタバレ

Posted by ブクログ 2016年12月22日

フランク安田という日本人エスキモーがアラスカの地で妻を娶り、エスキモーの大酋長となって海岸エスキモーや内陸エスキモーを救う物語。
登山ものではないが、アラスカの極地でエスキモー達を救うために奔走するフランクは雪と戦うのではなく、自分の置かれた状況といつも戦い、何百人のエスキモーの運命を背負って生きた...続きを読む。ゴールドラッシュの時期であり、それにフランクも上手く乗ることができ、エスキモーを救ったのである。

0

「小説」ランキング