あらすじ
どんなに深い絶望からも人は立ちあがらざるを得ない。すでに半世紀も前に、海も空も大地も農薬と核に汚染され、それでも草木は根づき私たちは生きてきた。しかし、と著者はここで問う。再生の目標はどこにあるのか。再び世界の経済大国をめざす道はない。敗戦から見事に登頂を果たした今こそ、実り多き「下山」を思い描くべきではないか、と。「下山」とは諦めの行動でなく新たな山頂に登る前のプロセスだ、という鮮烈な世界観が展望なき現在に光を当てる。成長神話の呪縛を捨て、人間と国の新たな姿を示す画期的思想。
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Posted by ブクログ
五木寛之の本はたぶん何冊か読んだことがあるが、本書は成熟した日本社会がこれからは人口減少、少子高齢化によって「下山」の段階にあると説いていた。確かに、日本は高度経済成長期のような、世界第2位の経済大国の時代を過ぎ去ったように思える。教育やIT、企業経営、政治など様々な分野で遅れをきたしているというニュースも良く見る。これからは中国やインドなど途上国と呼ばれた国がどんどん経済成長を強めていくと思う。海外の大学生は本当に話していてすごい優秀と思うし、日本人よりも勉強していると思う。これから日本が下山していく時代でどのように社会を形作る必要があるのか考えていきたい。
Posted by ブクログ
人生をいろいろな時代に区分けすることがあります。青春、朱夏、白秋、玄冬もそのひとつですね。著者は登山と下山を人生になぞらえ、50乃至60までを登山(青春~朱夏)、それ以降を下山(白秋~玄冬)に例えてます。そして、一般的に登山に比べ、下山は軽視(無視)されがちだけど、下るということも、とても大事なプロセスと説いています。ゆっくり風景を楽しみながら歩きたいですね(^-^)
自殺者が13年連続して3万人超。そして、東日本の大災害と福島原発の事故。いま、この国は、登山ではなく下山の時に入ったと思う。(コロナ禍で、さらにその思いを強くしています) 五木寛之「下山の思想」、2011.10発行、再読。 ①この国は二度目の敗戦を迎えたのではないか。いま、明日が見えていない。きょう一日を精一杯生きるしかない。②郷愁世界に遊ぶ楽しみ。古い流行歌を聞き、一瞬のうちに若き日にタイムスリップする。古い本の頁をめくる。白黒の映画。郷愁のタネは、どこにでもある。過ぎし日の思い出は、甘美である。