あらすじ
ゲームシナリオの仕事が行き詰まり、逃げ場を求めるように応募した小説でデビューしたわたし。その反動で鬱になり苦しむ中で思い出したのは、子供の頃のこと。両親は折り合いが悪く、父は病と闘っていた。その中で生き延びるためにわたしは書き始めたのだった。自身の「夜明け」のため半生を正面から描き切った渾身の跳躍作。
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Posted by ブクログ
自分も父とは距離感があり、かつ母より父が先に他界したので妙な親近感を覚えながら読んだ。
文量はそこまで多くはないけれどそこに載っている感情が重いので読み進めるのは大変だったし真っ当にハッピーエンドという訳ではないけれど、不思議と足掻いてみよう周りの人を大切にしよう、とポジティブな気持ちになれた。
Posted by ブクログ
先日読んだ『ここはすべての夜明けまえ』に甚く感動し、すみやかに購入した本。前評判に触ることはなかったが、ただ「私小説」であることを何かで見た。私の中では田山花袋と西村賢太が想起されるのだが、そのためか露悪的・破滅的な印象を私小説という言葉から連想してしまう。この小説についてはそんなことはなかったが。
志賀直哉『和解』村上春樹『猫を棄てる』太宰治『故郷』など、父をめぐる話は多い。家族の構成員という固定的な視点から見た父親像が、フリーズドライの味噌汁に湯をかけるように溶けてゆく感じ。法事で初めて会った人から、故人の意外な側面を知るというアレ。
でも、この小説は、うまく溶けきらない感じが、ちょっと変わっている。というか、肉親であろうと結局他人で、その人をまるまる知ることがないままお別れの時を迎えるんだろうな、と感じた。そうでなければ、法事で意外な側面を知るなんてことはないわけで。
だから、父の死を目前に父と正面から向き合わなかったこの小説の主人公も、別に、まぁ、そんなもんだよなと思う。実は当たり前のことしか描いていない小説。でも、この小説を読まなかったら、私はそんな当たり前のことに気が付かなかったかも知れないな。
Posted by ブクログ
著者の前作『ここはすべての夜明け前』が好きで、こちらも期待して読んだ。
ありきたりではない家族のストーリー。
精神的に弱さを抱える織香が、父の死をきっかけに自分、父親、母親のことを見つめ直す。
そこで初めて知る、親のよその顔。もしくは本当の顔。だんだんと家族の輪郭が浮き上がってくる。
淡々と書かれる日常の苦しさに、読んでいてこちらも苦しくなる。しかし飾らない言葉で書かれたそれらは、深く心に響いてくる。
何か大きな盛り上がりがあるわけではない作品だけど、私には興味深い話でおもしろかった。
最後は希望をのぞかせる内容で、これが家族のリアルな姿かも知れないと思った。
Posted by ブクログ
亡くなってから知る父親のアンビバレンツな人物像に困惑しながらも、母親のことも許し、過去の自分ごと受け入れることでインナーチャイルドも消える。
私小説で自分を救済するような、そんなメタな構造が深い弔いでした。