あらすじ
世界同時金融危機からユーロ危機に至る最近のマクロ経済の重要なトピックの解説を縦糸に、そして激変する金融業界の赤裸々な内幕――人事制度、報酬やリストラ、そこで働く人の人となりやキャリアなど――を横糸にして、これからの金融の行方を解説。身も蓋もなく、苦笑せずにはいられない人気ブロガーの筆致が冴えわたる。
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Posted by ブクログ
10年前に書かれた本なんだけど、ここで書かれたことは今もあまり変わっていない。本質が書かれているということ。著者特有の言い回しも含め、わかりやすい。
Posted by ブクログ
金融のことに関して全くの無知であったが、今回この本を読み、知識が深まった。
お金の流れを読むことができたと思う。
ただこの本は2012年に書かれたものであり、すこし時代的には遅いものであるが、ここまでの歴史ということで受け止めた。
やはり、人生においてどの分野を選択するかというのはとても重要なことであり、その選択を誤ると、コストパフォーマンスどころではないくらいの差がうまれてしまう。
慎重に吟味しようと思う。
Posted by ブクログ
身近で日ごろなんか変だな、つか、おかしーだろ、とか、ばくっと思ってたけど、あまり深くは理解してなかったことが、モデル化や置き換えなんかで非常にうまく説明されてて、痛快。ところで、これともう一冊も、すぐ読み終わるけど、同じような感じで、両方読むと面白さが増します。
Posted by ブクログ
どうしてそんなに高額の給与をもらえるのかな?と思っていた「外資系金融」の中で、何がおきていたのかがよくわかりました。
大きすぎてつぶせない、からつぶさない、のではなくて、それならつぶしていい大きさにするのが筋、というのはとてもよく分かります。
そして、世界最高の頭脳を、何に使ったら人類は進化するのだろう、という疑問(疑念?)を持たずにいられなくなります。
才能の無駄遣い、という言葉があります。
嫌なことに囲まれる毎日を過ごしていると、ゆうゆうと南の島で過ごすとか、働かないで過ごすゆとりある生活、そういうものに、どこか憧れてしまいます。
それをみんなが狙うのも一つの在り方です。でも、なんだか才能をうなるほどのお金に換えることだけが、才能の使い方なのかな、と感じずにいられなくなりました。
Posted by ブクログ
人気ブロガーが書いた外資系金融や金融業界の本。
想像もしなかったくらい羽振りのいい世界の話で、自分のしてる仕事はいったい何なんだ?と何度か思ったが、優秀な人が高待遇で働くのは自然な事なので、何となく納得した。
年収1500万の人を貧乏人と見下すなど、作者は人間性にやや問題を抱えているようだが、文章はとてもわかりやすくて面白かった。
途中で飽きたが、恋愛に関する部分が少しあって、そこが一番面白かった。
お金がなくても市井の幸せを噛みしめて暮らして行こう、と謙虚な気持ちになれる本でした。
Posted by ブクログ
むつかしい内容なのにとてもわかりやすい本です。
日本の銀行の簡単なお仕事について語られている内容(P88)、一方では当時の欧米の銀行では金融工学を駆使してマネーゲームにいそしんでいましたが、それに追いつこうとみずほ銀行が「投資銀行宣言」をして三顧の礼でカリヨンという証券会社からヘッドハンティングしたアレクサンダーとその仲間たちは、結局みずほに6720億円の損失を出して首になったというトホホな話も面白かった。(P93)
金融機関の最大のモラルハザードは、儲かった時には多額の報酬をとり、つぶれそうになると役員は既定の退職金をがっぽりもららって政府に救済される、それも何の恩恵も受けていない大部分の国民の金で。(P97)
日本の金融コングロマリットは、中央銀行と取引できる特権を享受しながら、証券機能という自ら持つ顧客と同じビジネスの土俵で競うという利益相反の温床となっている、(P101)
好調な米国のハイテク企業がいくらでかくなっても米国人の雇用に大きく貢献することはない。(アップルの全世界の従業員は6万人、グーグル3万人、フェイスブック2千人、ツイッター200人at2012)P175
金融商品はリスクの形を変えるだけで、それ自体から富が生み出されるわけではない。では金融工学の社会的意義とはなにか?それは、リスクを世界の投資家に最適配分することだ。(P183)あくまでもリスクの配分です!
こうした金融工学の分野が、高い報酬に目がくらんで世界の理数系の頭脳を浪費し続け、もしかしたら彼らが病気や宇宙の謎を解明できたかもしれないのに、いつのまにか世界を破滅のふちに追い込んでいく。(P186)
大きすぎるコングロマリット金融機関はその影響の大きさからつぶせない、これがモラルハザードの原因であるなら、問題をおこせばつぶせるように分割化すればいい。(P213)
その分割化には、インサイダー問題が起こりやすい同じ会社でのマーケット営業と投資部門などの分社化を優先的に行うべき。(P217)
結局は、ゼロサムでしかない金融工学はある意味カジノ経営のようなもの、そうした本質的な価値を生み出さない職種の人たちに現在の高報酬は異常ですよね。
Posted by ブクログ
これ恋愛工学の本の作者って後から知って結構衝撃だった。
私たちが知らない世界の裏でこんなことが繰り広げられてるんだなって話。規模が大きすぎて理解できないところも少しある。収入の話とか意外と面白かった
Posted by ブクログ
業界内部から見た絵をシンプルにまとめってあってわかりやすい。意見はずいぶん偏ってるけどうまくまとまっている分かりやすいこの業界の略図だと思う。
Posted by ブクログ
ストーリー
『世紀の空売り』も『ウォールストリート投資銀行残酷日記―サルになれなかった僕たち』も超える、
金融業界をテーマとした快作が日本人の手によって誕生!
身も蓋もなく、苦笑せずにはいられない人気ブロガーの筆致が冴えわたる。
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僕は海外の大学院で数理科学の分野で博士号を取得し、その後、東京で外資系投資銀行のひとつに勤めはじめた。
何度か転職しながら、いくつかの外資系投資銀行でクオンツやトレーダーなどの仕事をしてきた。
そして、会社に勤務しながら、会社には秘密で、ブログ「金融日記」をかれこれ8年以上も書き続けてきた。
ファイナンス、経済学、そしてエネルギー政策に関する本もそれぞれ出版した。
外資系投資銀行に勤めながらも、ジャーナリスト的な視点や経済学的な視点で、この激動の金融業界を内部から眺めることができる、
という世界のなかでも大変稀有なポジションに、いつの間にか僕は立っていた。
じつは、いま、世界の資本主義経済が大きな岐路に立たされている。
それはリーマン・ショック以降に左翼のおかしな連中が言い出した「強欲な市場原理主義が世界を滅ぼす」というような話とは違う。
いや、まったく反対なのだ。
このグローバル資本主義経済に欠かすことができない金融システムを担う世界の金融機関が、市場原理が働かない組織に成り果てようとしているのだ。
本書では、世界同時金融危機、リーマン・ショック、ギリシャ・ショック、そしてユーロ危機に至る最近のマクロ経済の重要なトピックの解説を縦糸に、
そして、こうした経済環境のなかで激変する金融業界の赤裸々な内幕を横糸にして、これからの世界経済、そして日本経済の未来を考えていく。
また、良くも悪くも、日本社会に入り込んだ外資系企業というものの生々しい実態をお見せしようと思う。
外資系金融機関や、外資系コンサルティング会社などに多くの日本の学生が就職し、
日本の伝統的大企業や日本の官公庁もこうした外資系企業とさかんにビジネスをしている。
外資系企業の実力、人事制度、報酬やリストラ、そこで働く人々の人となりやキャリアなど、僕の知っていることを包み隠さず書いた。
実際のところ、有名な外資系企業も、欧米のちょっといい学校を卒業しただけのふつうの外国人のサラリーマンが働いているのであり、
日本のオフィスでは多くのふつうの日本人が朝から晩まで働いているのである。
欧米の有名なファームだからといって何か特別な権威を感じる必要はまったくない。
それどころか、本書でくわしく論じるように、外資系企業の実際の業績は、日本のダメな大企業と同様にダメダメであり、
世界に多大なコストを押し付けて、世界中からひんしゅくを買っているトホホな会社なのだ。
だから気後れする必要はまったくないし、逆に日本から排除する必要ももちろんない。
それでは、世界経済を牛耳っていた外資系金融の終わりのはじまりを、本書でいっしょに見ていこう。
Posted by ブクログ
外資系金融機関で働く著者が金融業界について赤裸々に語っている.少々言葉遣いの悪い部分もある.
大きく内容は2点.1点目はリーマンショックやギリシャ財政破綻等に触れつつ,金融機関の抱える構造的問題について.2点目は金融機関の労働環境について.主にどこだったらどんな仕事ができてどんくらい稼げるかってところ.
初出の単語は解説しつつ分かりやすい表現で書いており,金融・経済ペーペーの自分にも読める内容であった.
金融業界に就職を考えている就活生には一読の価値がありそう.
個人的には,外資系投資銀行で働くのは金稼ぐにはもってこいだしそこまで労働環境もきつくはなさそうだけど,マネーゲームは一生やり続ける程にやりがいは感じられなさそうだなぁという印象.
Posted by ブクログ
藤沢さんらしい、とにかく分かりやすく過激な言い方を心がけている本。外資系金融での仕事内容や働き方について分かるので読んで損はないと思う。
私はこれを読んでも金融が羨ましいなとは思わなかったのだけど(評価経済社会のほうが好きだし)、銀行を小さくしていくってのはいい考えのように思えた。
やはり、Too big to fail.はおかしいのでどうにかして是正していかなくてはならないと強く感じるようになった。
Posted by ブクログ
タイトルがキャッチーに過ぎるものの、内容はマクロ経済に投資銀行の構造に人事にと、読み応えのある本だった。
現地スタッフと話す時に気をつけるべきバックグラウンドが少し分かったし、就職活動にも使える。
投資家からの金の流れが見え始めて来た近頃の業務と両輪を成して、腹落ちする本だった。
Posted by ブクログ
ちょっと言葉がきつく、金融の負の側面ばかりにスポットを当てているキライはあるけど、中身はその通りの事が多いです。
外資系投資銀行の一線で活躍するトレーダーの赤裸々な実態。同じ外資系バンカーの端くれとしてどれも非常に同意できる内容であった。特に斜陽の投資銀行業界は、人事面では同様の事が起きていると思うし、自分の周りも非常に似た状況である。リーマンショックを経て、投資銀行部門から人がたくさん溢れてきている。
著者の内容の通り、大半の外資系(日系も大して変わらないが)にとっては、顧客や経済への貢献とは無縁の世界で、カネや地位のために皆色々なものを犠牲にしており、外見とは裏腹に空しく儚い世界だと思う。それは、この業界に関わる政界や大企業とのもたれ合いによっても生じている。でも金融の意義や社会的使命にもうちょっとスポットが当たれば、世の中の見方や中に居る人も変わっている気はする。
著者は科学者からの転身であるからか、この業界を一段別次元から見ているところも面白い。特に、金融工学のエクスパートや最難関大学の最優秀の人材がこの様な空しい世界に集められている点については、警鐘も鳴らしている。「彼らが癌やエイズの研究を続けていれば世界の救世主になれたかも知れない。宇宙の謎を解き明かしたかも知れない。それが、世界恐慌を生むような負の金融システムを作ってしまった。」という点は、多くの人に知ってもらいたい点であるし、今の資本主義の限界を表しているような気もする。
そして現在、それ以上の問題として「金融保護主義」を上げ、巨大金融グループの「Too big too fail」の弊害を説いているが、これもご尤もである。人類の英知が引き続き試されており、金融界にはもっともっとメスを入れるべきと思う。実際、世界中の納税者に影響を与えているので他人事では無い。
Posted by ブクログ
10年以上前に書かれた本だが、ギリシャ政府破綻の件など知らないことを知ることができた。そして著者のいう、これからは大企業から個人の時代というのも今まさに進んできていて当たってる〜っ
Posted by ブクログ
金融ってよくわかんない、という人にもわかりやすい書き方になっていると思う。
スケールのでかいカネの話と、贅を尽くした例のショボさが外資系金融のトレーダーは総じてケチ、という話ときちんと整合してて良い。
大きすぎて潰せない、だから機能によって切り分けるべきという主張はスッキリ明確。
Posted by ブクログ
金融(というか主に証券会社)の構造についてわかりやすく書かれており、読みやすい。
マクロな金融の流れに関する説明もわかりやすいが、トピック自体に時事的な側面があるため、少し古さが目立つのは残念。
あまり他者に対するリスペクトはないのが気になるが、そこも含めて読みやすく、週刊SPAらしくて良いのかもしれない。
Posted by ブクログ
金融の話は全く知識がないので、すごいなーと読んでいた。
でも、年収いくらあればこの人はすごいと思うのだろう?あとこの人は女の人を純粋に好きになったことあるんだろうか?と感じてしまった。
Posted by ブクログ
世の中には二種類の人間がいる。
金融業界の人間と、それ以外の人間だ。
そう言っておかしくないほど、両者の考えは違う。
そして、違うといえば、大事なことですが、報酬も。
よくニュースで、平均賃金のことが話に出ますが、こういうのに金融業界の数字は含まれていないですよね。
まあ、公務員もですが。
なんでかなあ、と思うのですが、まあ、それは、平均からずれてしまうからなのではなかろうかな、と。
あと、公務員の場合は、無税で色々な手当てがあるので、賃金として計算するのが難しい、というか。
とまあ、そんな恵まれた状況にある金融業界ですが、藤沢氏が高給で買って満足したものが、Wiiとか言われると、高給とはいえ、時間を自由に使える身ではない以上、満足できる消費行動なんて、こんなものなんだな、なんていう気も。
以前、中学時代の同窓会があったとき、当時、我々の学年では群を抜いて優秀で、某一流私大の付属高に進み、そのままそこの大学を出た人間と話をしたが、彼が、
「金融って給料高いんでしょ。30で四桁とか」
と言い出して目が点になりそうになった。
彼の言う四桁というのは1000万のことなのだろうが、その後も、相槌を打つのに精一杯というか、まあ、話が噛み合わない。
彼は、その大学を出た後に、一部上場のビールメーカーに勤め、国内のMBAに通ったり、何度か転職をしたりなんかの人生。
もし、報酬のことだけを考えるなら、何か間違った努力をしているようにしか見えないが、そんなことは言っても詮無きこと。
エリートとして如何に世の中をよくするか、と言うことを発言するくらいなので、世界を破滅に追い込む金融商品を開発するような道に進まなかったのは、幸福だったのかもしれません。
無論、金融人の中にも、その中の世界で必死にカーストを駆け上がろうとする人、少し斜に構えながらも他の業界の平均よりははるかに高い報酬を敢えて手放すことはせず、それを享受する人、たくさんもらいすぎてもきりがないから、と十分な額を得た後、その世界から足を洗う人、と千差万別です。
そこで、今回は藤沢氏の本にマッチする切り口で分類を考えてみます。
同じ仕事に対する報酬が、金融業界が他の業界と比べて、ゼロが1つ2つ違うことについて、それを知っているかどうかが、まずひとつ。
そして、知っていたとして、それをおかしいと思うかどうか、が次のひとつ。
さらに、それをおかしいと思った上で、その恩恵にあずかる道に進もうとするのか、それともそのおかしさを正すためのデモとか革命とか批評とかの道に進むのか、が最後のひとつ。
藤沢氏は、金融業界に身を置き続けながらも、そこで感じる違和感をブログやメルマガ、著書で吐き出している。
つまり、最後の分岐においては、両方を選択していることになる。
自身では、それを「稀有なポジション」と言っているが、実は最後の分岐で後者を選択する人は、金融の世界にはほとんどいない。
金融は規制産業であるので、それぞれの会社の組織体系も、他の業界に比べると似通っている。であるからして、業界内の転職も多く、引き抜きが起こりやすく、そして年俸の高騰も起きやすい。
さらに言うなら、そうして業界内にちらばるかつての同僚たちと、集うことも結構ある、というわけだ。
他業界だと、転職したら、そこで付き合いは終わり、ということのほうが多いのだろうと思う。
無論、日本での話ですが。
というより、転職市場が活性化されるには、外から見ても、業務の中身がわかりやすく、かつ組織のどの部分の仕事を出来る人間なのかが、外側の人間からでもわかるようになっていないと難しい。
労働協定があったからだとしても、ソニーの社員がパナソニックに移り、給料が少しあがり、同様の職に就く、という図は、あまり考えられない。
金融業界の仕事を、バイサイドからセルサイドまで、原則論を踏まえた上で、年収付きで記載。
まあ、これだけで、金融業界志望、あるいは金融業界の人間は必携かもしれません。
金融業界にいれば、大体どういう仕事があるか、ということはわかりますが、さすがにそれぞれのポジションの年収の相場までは、聞けませんからね。
まあ、細部によっては、数字には少し怪しいところもありますが・・・。
日系のファンドマネージャーで、1000万いかない、というのはさすがにだいぶ昔の話じゃないかと。
確かに、運用会社が、銀行の子会社としての扱いでしかなかった時代には、出向組の人に対して、そのような扱いもあったのではないかと思われますが、プロパーで入った人に対してはそんなこともないような、、、。ですよね?違います?FMもしくは元FMの皆さん。
Posted by ブクログ
大きすぎてつぶせない、巨大金融コングロマリット。莫大な利益を得てきたのに、つぶれそうになると、利益とは無縁の国民の税金や中央銀行に救済されるのは間違っている。温存して社会主義的システムを構築するより、機能分割して民間企業としてつぶせるようにすべき。
若干過激だけれど具体的にわかりやすい表現で、実態や実状を知れて良かったです。
Posted by ブクログ
グリーンスパン議長のマクロ政策が成功し続けモラルハザードが起きた。リスクを過小に評価し過ぎた。
大きすぎて潰せない金融コングロマリットは隠れた補助金で低い金利で原材料を仕入れている。
Posted by ブクログ
週間金融日記などネット界隈の有名人である著者の本。やはりネットが主戦場の人の2年前の本は読んじゃいけないな。鮮度が無くなってる。フローでは面白いけど、ストックとして読むにはちと物足りない。でも、金融関係の本として初めて手に取ったならそれなりに面白かったのだとは思う。
Posted by ブクログ
アゴラやBLOGOSでおなじみの藤沢数希氏のもう2年前の本、軽い語り口と時々品のない方へ脱線するキャラ設定は好き嫌いが別れるかもしれないがサブプライムローンやリーマンショックなどをさくっとおさらいするにはお手頃だとおもう。この分野では「マネー・ボール」のマイケル・ルイスの「ライアーズ・ポーカー(投資銀行に入ったマイケルの自伝)」「世紀の空売り(サブプライムローの破綻にかけて大儲けした数組)」「ブーメラン(ヨーロッパの金融危機)」がお勧めなのでこの本で興味を持った人はそちらを読むのが良いと思う。
投資銀行のトレーダーの金銭感覚をよく表している文がいくつか出てくる。例えば「ジョン・ポールソンはアナリストが数人の小さなヘッジ・ファンドを運営しており、こうしてCDSで顧客のために1兆6000億円稼ぎ、自分のために4000億円も稼いだ。ドイツ銀行のトレーダーだったグレッグ・リップマンも負けじと数千億円稼いだ。ただしグレッグはサラリーマンだったので、ドイツ銀行からたったの50億円ぐらいしかボーナスをもらえずに、それが不服でドイツ銀行をすぐに辞めている。」
貧乏なセールスやバンカーほど気前がいいという話もある。「25歳のトレーダーが1日に1億円儲けたり損している間に、イタリア高級スーツに身を包み、スイスの高級時計をしている経験豊富な40歳のシニア・セールスやアナリストは、頭の悪いクソみたいな年金基金のファンドマネージャーに平身低頭で媚びへつらい、彼らをキャバクラに連れていき、毎日下らない「ここだけの」投資話を電話して、1年間で1億円の手数料を払ってもらえるかどうかというしょぼいビジネスをしていた。 当然だが、そんなセールスやアナリストの給料は極めて安く、総じて彼らは貧乏だ。給料はせいぜい2000万円とかそんなものだ。ぼくの知人のセールスは、入社3年目くらいのときに、しょぼいボーナス(たぶん1500万円とか)をもらって、威勢良く赤いフェラーリをローンで買っていた。」もっと稼いでいるトレーダーは金を使わないらしい。
儲けた会社が従業員や役員にいくら払おうが横から口出しする様なことではないのだがリーマンショックで問題になったのは破綻した金融機関への公的資金の投入で誰を救ったのかということ。サブプライムローンが破綻しない方にかけてリスクをとった人たちが破綻前には高額のボーナスを受け取り、リスクを積むだけ積んで上手く逃げ切った人もいる。単年度で見れば確かに会社を儲けさせたのだからボーナスをもらってもおかしくない。しかし破綻まで通算すると会社に大きな損失を与えているのだがそこは遡及されないので損をかぶったのは納税者ということになる。しかし、公的資金を投入しないとシステミックリスクで連鎖倒産が置きかねない。だから怒った人たちがウォール街を占拠したのは心情的には理解できる。
第5章はアメリカとEUの失われる10年+が予想されている。では2年経ってどうなったかというとEU経済は相変わらず低調なままだが危機はやや遠のいた。6月のユーロ圏の失業率は横ばい予想に反して前月から低下し過去最長の景気後退の後遺症から徐々に立ち直る状況が示された。それでも2013年の失業率で言うとギリシャ、スペインが約27%、ポルトガル16%、アイルランド13%、イタリア12%となお高い水準だ。アメリカは7.4%、ワールドカップの裏でデモが頻発したブラジルは5.4%だった。(世界経済のネタ帳より)直近のアメリカはというと労働市場が回復途上にあり、利上げのタイミングはまだもう少し先だ。失業率だけでなく流動性の低下が賃金の低下につながる懸念が指摘されているようだ。
ヨタは飛ばしつつも藤沢氏の主張は決済銀行が投資部門を持つことで巨大化しつぶせなくなったことのモラルハザードが挙げられている。確かにリスクマネーを運用するヘッジファンドならつぶれたところで影響は限定的だ。投資銀行部門を別会社にするというアイデアは理解できる。さらにリスクマネーに規制がかかる様になれば方向としてはリスクもリターンも小さくなる。それが外資系金融機関の終わりなら別に終わってもらっていいのだが。
Posted by ブクログ
外資系投資銀行に勤めた(ている?)経験のある筆者が、高給だがすぐ馘首されることで知られる投資銀行の内幕やその仕事の金融経済へ与える影響を述べている本である。
内幕といっても暴露ものではなく、業務内容の分類やそれぞれの実務の紹介である。リーマンショックやユーロ危機もどうして発生したかを説明し、世界経済に大きな影響を与える理由を解説する。そして、今後のこれらの大きすぎて潰せないといわれる投資銀行の今後について予想する。
読みやすい語り口で綴られているが、その内容は金融危機について書かれた多くの解説書やドキュメンタリーから窺える内容と違いはない。日本の外資系投資銀行のサラリーの話が何度となく出てきて、筆者はいくらもらっていたのだろうかなどと下世話な感想を抱かせるような三面記事的な視点で描かれてところが大きく違うところだ。