あらすじ
緊縮財政と行政整理による〈金解禁〉。それは近代日本の歴史のなかでもっとも鮮明な経済政策といわれている。第一次世界大戦後の慢性的不況を脱するために、多くの困難を克服して、昭和五年一月に断行された金解禁を遂行した浜口雄幸と井上準之助。性格も境遇も正反対の二人の男が、いかにして一つの政策に生命を賭けたか、人間の生きがいとは何かを静かに問いかけた長編経済小説。
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Posted by ブクログ
浜口雄幸は名前を知っているぐらい。東京駅に遭難場所の目印があるのは知っていた。井上準之助に至っては名前すら知らなかった。
昭和初期は自分の中では空白時代。ほとんど知らない。政治家も何となく軍関係が強いイメージだった。
今回小説を読んで、こんな政治家がいたのかと素直に感動した。愚直で一筋。世の中を良くしようと本気で考えている。命をかけている。そして実際に二人とも凶弾に倒れる。
正しいと思ったことはやり通す。自分もそうならなければと改めて思う。井上が浜口の死を知り号泣するくだりは胸にグッとくるものがある。
男子の本懐。いいタイトルだ。
Posted by ブクログ
昭和の政治の熱いドラマ。教科書では、浜口雄幸内閣の時は金解禁で混乱を招いたようなあっさりとした書きぶりだったけど、色々と国を憂いた上で信念と覚悟をもって取り組んでいた難題だったのね。
昔の政治家の言葉って今と比べてすごく重みがあるように感じる。言葉通り、命懸けで政治やってたんだなと。
浜口、井上は仕事ではエリートならではの隙のなさでありながら、家庭では全く別の顔というのも好きなエピソード。もう少しこの二人が長く生きていたらどうなってただろう。とつい考えてしまう。
Posted by ブクログ
たらればなので、もし暗殺されていなかったらは、わからないですが、男の生き方としてかっこいいと思いました。
・すでに決死だから、中道で倒れても、もとより男子の本懐。
・早く帰って、日常業務から解放されて、個人の時間で大所高所に立つ勉強をせよ。一人一人の質を高めることが、銀行のため、国のためになる。
・人をリードするためには、読書をせねばならぬ。
・一度膨れ上生活を縮めるのは、人間には難しいのだろう。
・正しく明るき政治に機密費は不要
・柔則存 剛則折
Posted by ブクログ
濱口雄幸は第27代内閣総理大臣として、1929年から1931年という世界恐慌の真只中の激動の時代に宰相を務めた人物です。
本作では、その主要な経済政策である金解禁を実現するために、蔵相の井上準之助とともに信念を貫く濱口の姿勢が主題として描かれています。
実直謹厳な濱口と、日銀出身で海外経験も豊富な井上。二人のスタイルは正反対ですが、金解禁を実行するために抵抗勢力と徹底に対峙する信念の強靭さが強く印象に残ります。
濱口は1931年に東京駅にて凶弾に斃れ、題名の「男子の本懐だ」という言葉を発します。一時は回復を見たものの、死去。更にその翌年、盟友井上も血盟団の凶弾により命を落とします。
デフレ政策である金解禁についての歴史的な評価は様々ですが、政治家としての信条に対し、文字通り不惜身命であった二人についてあまり語られることが少ないのを悔やみました。